Re: 第十一回SS大会 お題「無」 投稿期間 1/1まで!  ( No.503 )
日時: 2013/12/15 22:34
名前: 梓守 白◆0Nfe7TF90M (ID: jSb.oWvA)

こんばんは。
初めて投稿させていただきます。
SSの意味もろくに理解していないようなにわかですが、宜しくお願いします。

タイトル「なんにもないんだよ」

*****

「ねぇ、空ってどんな色?」
「えっ!?」

 唐突に声をかけられ、フェンスに寄りかかっていた少女、ツバサは勢い良く振り向いた。ツバサの背後には、中学生位と思しき少女が空を見上げて立っていた。平日の昼間だというのに、彼女の服装は黒いジーンズと紺色のTシャツ、赤系のチェック柄パーカー。このあたりには私服で通える中学校は存在しないし、あったとしても給食前のこんな時間に外を出歩いていい訳がない。
 やがて少女がツバサの方を向くと、2人の視線がぶつかって、ツバサは無意識に目を逸らした。

「中学生が昼間から、私服で何やってんだ。って顔だね」

 心を読まれたみたいで、ツバサは驚き再び少女を見た。少女は真っ直ぐにツバサを見つめている。

「とりあえず、こっちに来なよ。落ちちゃうよ?」

 ツバサと少女を隔てるフェンス。ツバサはその外側に立っており、少女と足下を交互に見ている。足下はコンクリート。それも、1歩踏み出せば遥か下の地面に落下しかねない。落ちれば助かるかはわからないが、ツバサはそんなこと分かりきった上でフェンスの外側に立っている。

「……そうだな」

 ツバサは少女と話してみたくなり、外側に出るときに通った隙間から内側へと戻った。隙間を通る際に飛び出した針金に右腕を引っ掻かれ、引っ掻いた所が白くなると共に痛みが現れる。
 少女の前に立つと、彼女の身長の低さを実感してしまった。頭1つ分は違うだろうか。目線はかなり下に向いている。

「そのセーラー服、東高の制服だよね。学校は?」
「サボり。あんたこそ学校は? 私服でこの時間に出歩いてるってことは、中学サボってるか北高かだろ」

 ツバサは素っ気なく答えて少女に問い返す。少女はなんとなく困ったような素振りを見せてから答えた。

「一応、先週で16歳。高校は通ってないの。通ってもどうせ、皆とは違うから」

 皆とは違うから、と言う言葉がツバサの中に響いた。見た目は少し低身長なだけで、普通の少女と変わらない。何か学校に馴染めない理由があるのか。

「なあ、お前の名前は? あたしはツバサ」
「そら」

 少女が――そらが答えたのを聞いて、ツバサは質問を投げかけた。

「そら、最初にあたしに言ったあれ、どういう意味なんだ?」

 空ってどんな色? という言葉についてだ。普通に青と答えれば良かったのか、それとも何か捻った答えをすれば良かったのか。どちらにせよ、ツバサはその質問に答えられなかった。

「そのままの意味」

 そらは言葉を続けた。まるで普段から同じことを繰り返し言っているかのような、滑らかな口調と淀みのない声で。

「私の“そら”って名前は、私が生まれた日の空の綺麗さが由来になったんだって。でも私は全色盲ってやつで、生まれた時から色がわからない。お母さんが“今日の空は、あなたが生まれた日と同じくらい綺麗よ”なんて言っても、それがどんな色の空なのかはわからない。だから私は尋ねるの。空ってどんな色? って」

 そらの透き通った声に誘われて、ツバサは何気なく、ポツリポツリと話始めた。それは、ずっと隠していた気持ち。親のこと、学校のこと、自分のこと。
 ツバサの両親は、ツバサに興味を持たなかった。何をしても相手にされず、居ないも同然に扱われてきた。それが育児放棄というやつだと気付いたのは、中学校に上がる少し前のこと。振り向いてもらいたくて、相手にしてほしくて、ツバサは部活にも入らずに必死で勉強をした。けれど両親は、ツバサを見てくれなかった。学校にも仲のいい友達がおらず、ずっと1人だった。そのうちに自分の存在価値を見いだせなくなったツバサは、死を考えるようになって、よく学校をサボっては高い建物を探し歩いた。
 でも、結局そこから飛ぶ勇気はなくて。

「あたしにはツバサなんて名前があるけどさ、翼はないんだよね、どこにも」

 いつの間にか太陽は先程よりも高いところから2人を照らしていた。主婦たちがチラホラと見える程度のすいた屋上駐車場。隅で膝を抱えた2人の少女は、同じ空を見上げた。

「あなたの翼はきっと、まだ見つかっていないだけ。死の先には、何もないよ」

 そらは小さな声で呟いた。

「死んだ後のことって考えたことある? 私は1度だけ、見たことがあるの」
「へえ、どんなもんなのさ」

 突然の話に驚きつつも、ツバサはなるべく落ち着いた声で返答した。そんなものは本で読んだくらいだ。生きている人間には知る余地もない。

「無いんだよ、なんにも。なんにもないんだよ」

 白でも黒でもない無色の、けれど死者には見えるその世界。そこには何も無いとそらは言う。元々色が見えないそらが見たものだから、というものではない。確かに、死の先は“無”なのだ。

「ねえ、ツバサ。ツバサには色が見えているんでしょ? だったら、その色に満ちた世界を捨てないで。私に見えない、綺麗な色の空を見て」

 そらはそう言って立ち上がった。数歩前に歩み出てからツバサの方を振り返り、もう1度、ほんの少し空を見上げる。そしてツバサの目を見たそらは、微かに笑った。
 最後に、呟くように、風に乗せるように言葉を発した彼女は、自分に翼が無いと知りながら、フェンスの外側へと消えていった。

「死の先には、なんにもないんだよ」

 あなたはどうして、なにもない“無”の世界へと飛んだのですか――?

*****

駄作で申し訳ないです。
無というテーマから思い浮かぶものが少なく、無って何だろうと考えた結果がこれです。
最終的にそらが飛んだ理由も、自分で書いたくせにちゃんと理解できてません。
ただ何となく、書き始めたところから「この子は飛んでしまうんだろうな」なんて。
兎にも角にも、最後までお読みくださりありがとうございました。