雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 死(元猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第四回SS大会 結果発表 ( No.240 )
日時: 2012/04/27 12:44
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

今回も楽しかったです^^

猫のこの企画のおかげで(絶対 おかげ)で、描写が以前よりも少しうまく書けるようになれたような気がします。
お題から、イメージして書くことは、トレーニングになります。(と、思う……)

毎回、賞取れるように頑張っているのですが…… やっぱり みなさんとても上手で……参考になります。めっちゃ。

これからも よろしくおねがいします ネ♪

Re: 第四回SS大会 結果発表 ( No.241 )
日時: 2012/04/27 21:32
名前: 月牙(元:狒牙◆nadZQ.XKhM

すいません、今回書いたのは良いんですけどちょっと間に合わなくて……
次回こそは参加します、はい。

Re: 第五回SS大会 お題発表 ( No.242 )
日時: 2012/04/27 22:19
名前: 猫(元: ◆GaDW7qeIec
参照: キリ「と、言う夢を見た」シノン「ブハッ!」クラ「笑いすぎだろ?」シノ「だってアンタがリア……充?とかありえない」クラ「あ?」

では、少し早急だけど第五回SS大会を開始しますね♪
お題は「夢」です!

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.243 )
日時: 2012/04/28 14:36
名前: ピアニッシモpp◆8NBuQ4l6uQ
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=26932

>>237
ありがとうございます!
嬉しいです!

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.244 )
日時: 2012/04/28 14:40
名前: 九条ネギ◆kaIJiHXrg2
参照: 納豆にネギを混ぜているんじゃない、ネギに納豆を混ぜているんだ。

トレモロさんはやっぱり凄い……
皆さんおめでとうございます^^

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.245 )
日時: 2012/04/28 15:40
名前: Lithics◆19eH5K.uE6
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=12586

猫さん、集計お疲れ様でした!

三位入賞、恐縮ですが凄く嬉しいです。
第五回の御題も素敵なので、余裕があれば参加させて貰いたいと思っています。

ありがとうございました!

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.247 )
日時: 2012/04/28 20:35
名前: 水色水色◆/et336JgcM
参照: http://www.youtube.com/watch?v=DsJjsGlSTeo&feature=related←神曲!!


 『ユートピア』 弌



 少女は、空を仰いだ。
 秋の澄み切った高い空は、少女の憂いた心を包み込むようだ。
 ため息を一つこぼし、雑多な街に視線を戻す。
 空は高いが、空気は濁りきっている。そんな空間でまた過ごすのか。

 ――私の人生は何度繰り返しても、街の景は変わり映えしないだろう。

 そんな現実を受け止めることすらできす、少女歩き出す。
 願った事すら叶ってもこの程度か。この世界に生きていく意味が何処にも無い。

 「…名前を取り戻さなきゃ。そうしないと【夢】から抜け出せない」

 どうして願ったりしたのだろう。普通に生きていても同じ世界じゃないか。
 記憶も遠のき、ただ残っているのは自分と言う存在が確かに此処にあると言う事だけ。
 まさか名前を消されるなんて思いもしなかった。
 あの赤いフードを被った人物に出会っていなければ。
 ずっと夢見てた世界を願わずにいれば。
 そう思っても幾度後悔を巡らせても、少女は何度も願うだろう。

 誰もが望む、ユートピアを。 

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.248 )
日時: 2012/05/12 19:38
名前: 水色水色◆/et336JgcM
参照: http://www.youtube.com/watch?v=DsJjsGlSTeo&feature=related←神曲!!

 
  『ユートピア』 弍




 私のお母さんは知的障害者だ。
 何を言っても全て伝わっている試しが無い。
 昨日はメールで

 <お母さんヤめる。もうはなしかけこないで、たにだから>

 という意味不明な文が送られてきた。母は親権を取り下げたいと言っているのだろう。
 そういうに、漢字変換もままならず、自分の感情をむき出しにして、ただ一人の娘に中傷を浴びせる。
 いや、母は中傷を浴びせているという事も、解っていないだろう。だからここで

 <嫌だ、お母さんと離れたくない、一回ちゃんと話し合おう>

 と返信したとしても、同じ似たようなメールが返ってくるだけだ。
 それに、私もこんな母を【お母さん】とは呼びたくない。メールだって無視だ。
 母は忘れる。自分がこんなメールをした事を。私がムキになって怒鳴っても、意味などないのだ。
 
 
 □■□■□■□

 中学を卒業し、高校生になった。
 思春期も来て、益々このことを誰にも言えずにいた。
 中学は苦い思い出しかない。母は給食費も払わず、朝早くに家を出て夜遅くに帰ってくる。友達のママさんの所で飲みに行っているのだ。
 そんなお金があるのなら給食費も学校費も払ってくれればいいものを。
 何時も相談相手は担任だった。
 家庭内事情で学校を休む日々。友達にも言えず、誰かに助けを求めるなんて以ての外。
 このことは担任に話そう。私を唯一親身に考えてくれる、経った一人の信頼できる他人。
 先生はこの事を考慮して、私に高校は定時制に行けと提案した。
 朝は働いて、夜は学校で勉強。
 それはもう、私に一人立ちしろと言っているのだろう。
 私もそれしかないと考えて、定時制の高校を志願した。
 母とは会いたくない。どうせできるなら一日でも家に居たくないのだ。 
 高校には合格したが、やはり定時制。学校に来る生徒は中々居なく、友達になってくれそうな人は探すだけで骨が折れそうな環境。
 それでもたった一人だけ、私には友達がいた。
 同じ市役所免除『生活保護世帯』で生活している、那珂川 湊。
 彼女は私の家庭内事情を『知らない』。
 言う必要も無い。言ったらどうなるか、目に見えて悲しいからだ。


 「また…メールが来た」
 授業中。ケータイが震えた。
 こっそり先生の目を盗み、メールを開く。
 
 <どしてアーちゃんを孵らしたの! あのこおこて癒えにかえたじゃない! もいいです。ほとうにあかあさんやめるから。はなしかけてこないでね>

 …。
 ため息さえも出て来ない。なんで私はこう言われなきゃいけないのだろう。ストレスで胃が悲鳴をあげている。
 意味が解らないので翻訳すると、

 <どうしてあーちゃんを帰らせたの! あの子怒って家に帰ったじゃない! もういいです。 本当にお母さん辞めるから。話しかけて来ないでね>

 というもの。
 あーちゃんとは、住み込んでる中学からの友達で、本名は砂川 愛子。なんでも私の家からバイト先が近いという事らしい。
 高校でも担任に家庭内事情を相談したところ、真っ先に「その子は家に返しなさい」と言われた。愛子にも家族というものがあり、親が心配しているから駄目だ。
 愛子はそれを言う前に帰ってしまったのだ。それなのに母は私が無理矢理帰らせたのだと思い込んでいる。
 …何も感じないわけがない。一人の肉親だ。それでも私は嫌なのだ。こんな人を【お母さん】と認めるのが。だから遠ざける。言われなくとも、最初から母と話などしていない。
 忘れているから。
 話しても無駄。
 …どうして、私のお母さんは障害者なのだろう。普通に真っ当な母なら、生きている事が苦にならなかったのに。誰かに何かを言われる、後ろ指を差される恐怖を味わわずに済んだのに。友達にだって…距離を置かずに仲良くなれるのに。
 なんで私の人生って…こうなんだろう。
 もっと違う、華やかな人生を歩みたかった。



 「願うか? この世界からの脱獄を」

 視界が移ろい、目の前に赤いフードを被った背の高い誰かが嗤っていた。
 此処は…何処だろう。
 見覚えのない景色。空が近く、建物が小さい。
 此処は、屋上だ。
 何処の学校の屋上かは知らないが、八回ぐらいの高さと下に続く階段は、紛う事無き屋上。
 それに空は蒼く、私は昼の太陽に目が眩んだ。
 確か、夜だったはずだ。授業をしていたのだから。
 「あんたは…誰」
 私が問うと、彼(彼女?)は口角をさらに上げ、笑みを模る。 
 「オレはネリネ。陰葉植物の名だ。…多分」
 何だ、コイツは。萎縮しかけたが、最後の一言に弛緩してしまった。馬鹿である。
 取り敢えず此処が何処なのか、今は何時で年月日は何時なのか、訊こうとしてはっ、となった。
 「さっき…世界の脱獄って…」
 世界…それは私が住む、暗く陰鬱な人生の事。脱獄…それはその世界からの逃避。
 「そうだよ。キミは世界の脱獄を願った。もしそれが今も変わらないと言うなら、それはオレが叶えてやる」
 叶える…。
 ネリネの言葉はまるで禁断の果実のようで、私を誘惑した。
 叶えてくれるの? この、生きている意味もわからずに身を隠していく堕落した人生からの、逃避を。
 ああ…ダメだって解っている。頷いたらもう戻れないって。
 それでも。
 それでも私は頷いた。
 「叶えて。幸せな人生を」
 赤いフードは嗤って近づき、
 「いいぜ。その代り、キミの名前を消す。名前は個体を位置づける唯一の存在だ。今から半月、名前を思い出すために抗え。存在自体消えたくないならばな」
 そう言って、私にキスをした。

 これが、ネリネと初めて出会い、終焉へと歯車を回してしまった、私の始まりだった。

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.249 )
日時: 2012/04/28 22:00
名前: 水色水色◆/et336JgcM
参照: http://www.youtube.com/watch?v=DsJjsGlSTeo&feature=related←神曲!!

 あ、あの!
 一身の都合により、ここで一旦中断させて頂きます…。すいません。
 良ければ一日、悪ければ一週間待ってください…。
 おこがましく図々しいですが、お願いします。

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.250 )
日時: 2012/04/29 19:02
名前: さくら

猫さん、集計有難う御座います。
そして、二位入賞本当に有難う御座いました!
良くもまあ、こんな駄文が二位なんてry
と想いましたが、すっごく嬉しかったです。

次、また「夢」で投稿しようと思っています。
短いですが有難う御座いました!

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.251 )
日時: 2012/04/30 15:21
名前: トレモロ

ぬおおおおおっ!
投票できなかったぁぁあああああああああああっ!!(黙
夕凪君とLithicsさんに投票しようと思っていたのにorz
書くだけ書いて、投票しないとか最低でした。すいません(泣
つ、次こそは投票しますよ!! 絶対しますよ!!

つーか。一位ありがとうございます! 投票してくれた方感謝です!
そして、姉さん集計お疲れさまでした&ありがとうございます!
次のお題では投票はするつもりですが、小説は投稿できるかちょっとわからないですw
なるだけがんばりまっす!ではでは!

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.252 )
日時: 2012/05/02 21:37
名前: 猫(元: ◆GaDW7qeIec
参照: キリ「と、言う夢を見た」シノン「ブハッ!」クラ「笑いすぎだろ?」シノ「だってアンタがリア……充?とかありえない」クラ「あ?」

上げさせて貰います。
コメント下さった皆様有難うございました!

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.254 )
日時: 2012/05/05 02:00
名前: 暁壱◆BY08ly9K1s
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel5/index.cgi?mode=view&no=13322

 夏はもう終わっちゃったのか…残念だww

『夢』か…あんまり良いの浮かばないけど書こう。

__________________________________
 『夢でした』

 「いい加減にしろ!!」
その言葉と同時に放たれたグーパンチは思ったほど強烈で俺の体を吹き飛ばした。

気を失って何分経ったころだろうか? アハハと誰かの笑い声が聞こえた。

俺は重たい瞼を開け体を起こす。

そこにはさっきまで倒れていたはずの台所ではなく教室…?だった。

 その教室には中学生が2~3人いてどちらも楽しそうに笑っている。
ぁ…あれは俺の友達の…。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!???????????

何あれ?!!!!!

 頭になんかついちゃってるぞ?!! 耳なのか?!!!

俺、殴られて頭までおかしくなっちゃったのかwwww
 そうかそうか。 あのパンチは強力だったもんな。仕方ない。

そう自分に言い聞かせて友達(?)のほうに寄って行った。
 
 「あ。 龍?」
俺の姿を感知したその友達らしきものが俺に声をかけてきた。
 名前…。俺の名前知ってるってことはやっぱ友達…?

「何でそんなん付けてんの?」
俺は奴らの耳を指差しながら言う。


「そんなんって何? この耳のこと?」

「そうだよ。この耳!! 何でこんなものをつけてんの?」

「何でって…お前にもついてるじゃん。耳。」
俺の頭上を指差しながら言われた。 俺はバッと頭を、耳を隠すように手を乗せる。 そこには…耳が…!!

「ついでに言うと尻尾もあるぞww」
尻のほうを指差される。
 
 何で尻尾までついてんの?!! おかしいやろ!!!!!



「何でしっぽ生えてんの~~~~~~~?!!!!???!」

俺はその瞬間ベットから飛び起きる。
 
ハッと我に返った俺は耳としっぽがないかを確認する。

「ゆ…夢か…ww 吃驚した……!!」


________________________________
 「夢」 そっちの夢かよwwと思われている方。しょうがないんですよ思いつかなかったのだからwww

 しかもベタな夢オチでしたww

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.255 )
日時: 2012/05/06 22:25
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6
参照: http://start.cubequery.jp/ans-0039928e

『機械仕掛けの人形は羊の夢をみるのだろうか』

 必死になって、私は訴えていた。
 周りの皆と一緒に、いろんな道を歩き回って、訴えていた。
 そうすれば、世界が変わると思っていた。
 多くの声が、世界を変える力だと、思っていた。

 幼稚な考えだったと気づいたのは、その1ヵ月後。
 結局、世界は変わらなかった。
 何一つ、変わらなかった。
 訴えた、あの時間は……白昼夢のように、消え去った。
 そう、幻のように、すうっと。

 目が覚めた。
 ここはどこだろう?
 確か、私は休眠していたはずだった。
 なんだろう、さっきの意識は?
 私でない私が、そこにいた。
 とてつもない、後悔を感じた。
 悲しい気持ちだった。
 悲しい、気持ち?

 雨が降っていた。
 ずっとずっと降っていた。
 今日は外に出かけるはずだったのに、ダメになってしまった。
 雨でなければ、そとに駆け回れたのに。
 大好きな人と、一緒に公園を駆け回っていたはずだったのに。
 雨が、恨めしい。
 恨めしい気持ちで、灰色の空を見上げた。
 恨めしい、気持ち?

 ここはどこだろう?
 私は1人で勉強していた。
 世界を変えるには、受身ではダメだ。
 変えるには、自分も『変わらなくては』ダメなのだ。
 そして、先頭になって突き進まなくては、変わらない。
 私はそう、学んだ。

 天気だった。
 気持ちの良い、澄んだ青空。
 なんて、気持ちがいいんだろう。
 草の香りが、なんて、心地いいんだろう。
 隣をみれば、大切なあなた。
 嬉しくなって、思わず声をかけた。
 あなたは、微笑んで、私の頭を撫でてくれた。
 幸せだった。
 とても、とても……幸せだった。
 幸せ?

「このプロジェクトは凍結します」
 悲痛な声だった。
 突き進めていたプロジェクトは、中止で終わった。
 けれど、ネットで多くの声を、声援を貰った。
 だから、私はたった一人で、進めていこうと思う。
 どんなに小さな一歩でも。
 その一歩に無限の力があるのなら。

 そこは屋上だった。
「君が、好きなんだ」
 私は気持ちを伝えた。
 ずっとずっと秘めた想いを、言葉にした。
 あなたに、伝えたかったから。
 そして、結ばれたいと願った。
「私も……」
 それだけで、充分だった。
 彼女の凛とした声が、に乗って響いた。
 優しく耳を撫でる。
 私は君を抱きしめて。
 その瞬間、閃光が煌いた。

 どのくらいの時が経ったのだろう。
 夕方5時34分。
 あれから、12時間、休眠していたことになる。
「あら、起きたの?」
 目の前に現れたのは、マイマスター。
 私を作ってくれた創造主。
 いつものしゃがれ声で、けれど、凛として優しい響きのあるその声が、私を現実へと引き戻す。
「こんなに眠ってしまったのは、初めてです」
 素直な気持ちを伝えた。
「そうね、いつもは充電終了後にすぐ起きていたもの」
 どうかしたのと尋ねるマスターに、私は言葉を選んだ。
「不可解なものを……様々なヴィジョンを見ました」
「様々な、ヴィジョン?」
「最初は女性、犬、そして、女性……私は私でない私になっていました」
「……あら、まあ」
 マスターの驚きに、思わず首を傾げた。
「あなた、夢をみたのね。こんなこと、初めてだわ」
 楽しそうにマスターは夢みるように続ける。
「あなた、オートマータで初めて、夢を見たのよ」
「夢とは、未来の希望のことではないのですか?」
「まあ、それもあるけど、もう一つあるわ」
 悪戯な笑みを浮かべて、マスターは。
「夜、寝ている間に見る夢もあるのよ。その殆どが意味の無いもの。あなたのいう、不可解なヴィジョンの連なり、それが、夢よ」
 そして、私の前に向き直る。
「初めて見た、夢の感想を聞きたいわ」
 言葉を選んで、私は告げた。
「よくわからないです。楽しい夢も幸せな夢も全てあって……よくわかりません」
 それでいいのよと、マスターはまた微笑んだ。
「夢ってそういうものよ」
 そうそう、もう一つ教えてあげるわと、口もとに人差し指を置いて、マスターは話し始めた。
「人偏に夢と書いて『儚い』とも言うのよ、面白いわよね」
「よく、わかりません……」
 でもと、私は続けた。
「今度見る夢は、できれば、マスターのいる夢を見たいです」
 その言葉にマスターは嬉しそうに声を上げて笑った。

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.256 )
日時: 2012/05/06 12:31
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6
参照: http://start.cubequery.jp/ans-0039928e

あとがきのようなもの

というわけで、夢という薄ぼんやりしたものを形にしてみました。
ちょっとした最近思ったことを、入れ込んで、わけわかめな話になっちゃいましたが、それはそれで、いいかなーと。
よければ、どうぞ、よろしくですよー☆

これを書く前は、あかちゃんの微妙な夢にしよーと思っていました。

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.257 )
日時: 2012/05/12 19:27
名前: 水色水色◆/et336JgcM
参照: http://www.youtube.com/watch?v=Un44YMjAmvg&feature=results_video&playnext=1&list←神曲!パートⅡ

 『二つと一人』





 気づけば彼女の心は僕に向いていなかった。

 背中合わせに寝る、彼女と僕。
 「お呂に入る」
 彼女が独り言のようにベッドから下り、その足を脱衣所に向けた。
 僕は起き上がり、スタンドのわきに置いてあった煙草を吹かし、ため息をつく。
 
 余りにも冷めた関係に、これ以上は長続きしないだろう、そう思った。

 きっかけは、なんだっただろう。
 思い出せない。
 でも、彼女は僕の何かに絶望し、その心を離していく。
 多分…関係の小競り合いは僕の所為だ。それだけは確実に確信が持てた。
 理由やきっかけは思い出せないけれど、彼女は僕に見向きもしないのだから。





 +α






 彼女が出かけると言うので、僕は意味も無く付いて行こうと思った。
 先を行く小さな背中を無言で見つめる。
 付き合いだした頃は、並んで歩いていたな。その手も、僕は強く握っていた。
 でも今はどうだろう。
 彼女は手を繋がないのかとも訊いて来ないし、それが当たり前だという空気を醸し出している。
 何処に行くのかと訊きたくなる、オシャレな格好。
 久しぶりに見るめかし込んだ格好に、僕は胸の中に黒い何かを投下されたようだった。
 「…何処に行く気なの、芽衣」
 名前を呼んでみても、彼女は振り向こうともしない。
 耳にはイヤフォンがあるのだから聞こえないのも当たり前か。
 そうやって何度も絶望する。
 解り切ってはいるものの、声を掛けずにはいられないのは、もしかしたら振り向いてくれるんじゃないかと期待しているからだろう。
 心さえも遠ざかっているのに。

 付いた先は何処かのファミレスだった。
 …嘘。
 此処は初めてデート先に選んだ、思い入れのあるファミレスだ。
 彼女は何がしたいのだろう。
 初心に戻りたいのだろうか。
 僕と同じ気持ちなのだろうか、あの頃に戻りたい。
 「カプチーノを、二つ」
 彼女は席に座るなり店員にそう頼んだ。
 カプチーノ。僕が恥ずかしながらも気に入られたいがために頼んだやつだ。
 憶えててくれたのか…感傷に浸るも心は冷めていくばかりだ。

 あの頃に戻りたいというのなら、何故君の心はこんなにも遠い。
 
 僕が目の前に座っているのに、君はどうして僕を見ない。そんな淋しそうな瞳をする?
 カプチーノを一口飲んだ彼女は、それを両手に持ち、机上に置いた。
 「思い出すな…2人で飲んだ日を。あの時、私たちバカ丸出しで笑ってたよね」
 コップの中を見つめながら、僕に語りかける。言われて、僕もその情景を思い浮かべていた。
 …初めてのデートは、甘酸っぱい時間だった。ずっと居たいのに時間は限られていて、だから初めてのキスもその日にあげた。
 「芽衣はさ…僕とどうなりたいの? やっぱり…別れたい?」
 苦しくなってそう問いかける。
 答えは覚悟の上。でも聞いたら絶対泣くだろうという可能性も捨てきれない。
 僕は小心だから。それなのに、君を守るヒ―ロだと気取っていた。
 彼女はほほ笑む。
 「私はね、彼方と過ごした日々は一生の宝物だと思ってるの。だから…本当に、悲しい」
 …そんなに婉曲に言わなくても。余計に苦しくなるじゃないか。別れたいなら、そう言えば良いのに。
 「そっか。僕も君と過ごした日は忘れないよ。一生の宝物だ。…ありがとう」
 言った途端、彼女が勢いよく顔をあげた。
 その瞳は涙に濡れていて、僕の事を信じられないものでも見るように見開いていた。
 少し面食らう。
 変な事を云ったつもりはないのだけれど、彼女にとっては心外だったらしい。
 頭を掻いた。
 そんなとき。

 「ごめん、遅れた」

 絶望の時が来たのだろう。死神が余命を言うのなら、多分今だ。
 僕の後ろから知らない声が近づいてくる。
 彼女はそいつを視認すると、涙を拭いて立ち上がった。
 「ううん。大丈夫だよ。それより何処行っか。まだ時間あるし」
 そう言って僕の横をすり抜ける。

 とても簡単な完結だった。
 
 此処に来たのは初心に戻りたかったわけじゃなく、あまつさえ、感傷に浸りたかったわけでもない。
 ただ、新しい彼氏との待ち合わせだったのだ。
 遠ざかる二つの足音。軽い鐘が鳴り、店員の謝辞が飛ぶ。
 僕は、目の前に置かれているカプチーノを見遣り、諦観に捕らわれた。
 彼女にとって、僕と言う存在はどういうものだったのだろう。
 何も答えが出ないのに、その疑問ばかりが頭を占め尽くす。
 カプチーノを飲んでから店を出よう。
 そう思ってカップの取っ手に触れようとした。
 「…あれ?」
 不思議な事。
 何故か、どういうわけか、僕の右手は取っ手をすり抜けた。
 目を見開く。
 歯車が音を立てて僕に襲いかかった。

 サイレン。赤く点滅する器械。夜の情景。
 あれは…救急車だ。そしてこの記憶は、僕に真実を語ってくれた。

 あの日、直ぐに帰ろうと思った。
 彼女の誕生日だから。バイト代も溜まって、プレゼントを買ってたら遅くなって…。
 突然のクラクション、僕の視界はライトで埋まった。
 交差点で、赤信号になりかけてたから急いで渡ろうとした。
 その矢先だ。
 多分僕は、交通事故に遭ったのだろう。ライトの高さから、あれはトラックだ。
 …なんて在り来りな事故…。
 僕は不注意で人生を無碍にした。
 僕は死んだのだろう。彼女を置き去りにして。
 
 二つのカプチーノが目に入り、僕は安堵を感じた。

 彼女は僕を遠ざけた訳じゃない。僕の死から決別したのだ。こういう形で。
 だから、僕はこんなにも安心しているのだろう。僕の死が、彼女の重荷になっていないことに。
 


  僕はこんなにも彼女が好きだから。僕の所為で彼女の未来を固定づけさせたくない。




 これは、僕の夢だ。
 まだ未練たらしい僕が、見た夢だ。
 そしてこれからは見る事も無いだろう。
 彼女が未来を歩きだしたのだから。

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.258 )
日時: 2012/05/12 19:44
名前: 水色水色◆/et336JgcM
参照: http://www.youtube.com/watch?v=Un44YMjAmvg&feature=results_video&playnext=1&list←神曲!パートⅡ

   ・後記・

 卒読ありがとうございました。
 在り来りな話でちょっと「あれ?」って思ったかもしれませんが、スルーして下し。
 稚拙な文で顔も上げられない…。
 

 PS‣スレ主様 前回の小説は無視して下さい。カウントしないで欲しいです。
   ご了承お願いします。

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.259 )
日時: 2012/05/09 06:17
名前: Lithics◆19eH5K.uE6
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=28051

こんにちは。
前回に引き続き、恐縮ですが参加させて頂きたく。


『夢の置き場所』

 ――此処は何処だ?

 それは酷く在り来たりで、意味の無い疑問だったと思う。気が付いたら『俺』が存在した、この霞みのようにモヤモヤと曖昧な世界は……一寸考えただけで、『夢』を視ているのだと分かるはずだったから。その中で寝起きのようにというのも笑えるが、ズキズキと痛む頭を抱えつつ、ゆっくりと起き上がった。

「夢……か。我ながら、地味な配色だな」

 其処は真っ白で、光だけの世界。真夏の朝、カーテンを思い切り開いたように清々しく……だけど不安になるくらいの無色。こうなると、自分には色があるのかどうか確認してみたが。もっと地味とも言える、モノクロのスーツ姿に辟易する結果に終わった。こうも個性に欠ける俺の夢なら、無色なのも当たり前の事かも知れない。

(…………)

 嗚呼、それにしても無為だ。夢くらいは色の在る、瑞々しくて鮮やかな世界を感じてみたいと思ったのに。此処は現実と似て、上を仰いでも下を覗いても単調で……飽き飽きするほど何も無い。俺は此処に、何をしに来たのだろう……?

 ――ああ、いや、その前に。『現実』って、なんだっけ? 俺は……何者だ?

「ふふ……思い出せませんか?」

「ッ…… !?」

 突然の鳴りのような声が、無色の世界に響いた。息を呑むようなタイミングで、それはするりと俺の心に落ちて。不思議だ、驚いたけれど恐れはない。これは『そういうもの』だと、本能じみた部分で理解出来てしまう。姿は見えないけれど、『彼女』はここに居るのだと。

(この声を……知っている? くそ、思い出せない……)
 
 ――『夢』は閉じた世界、自らを映す鏡面。その中で会話するなんて、自分と喋るようなもので馬鹿らしいけれど。気付けば、何故か親しみのある声に応えてしまっていた。『現実』で縁のある人の声なのだろうが……その現実が思い出せない、もどかしさに駆られながら。

「……一応訊くけど。あんた誰だ?」

「私は……貴方を良く知っていますよ」

 くすくすと笑い、はにかむような声。空間に意味のない夢世界で、耳元で囁かれる感覚に身震いした。この感じを、やはり俺は知っている……それも心から願った、幸せのカタチの一つであったはずではなかったか? この顔も分からぬ誰かと、俺は一緒に居たいと望んだ――

「そ、それでは答えになってない! あんたは……」

 いや待て、俺は何を。じわりと身体に沁み渡る幸福感に、意味もなく不安になった。『現実』を都合よく忘れているとは言え、流石に分かる。これは、俺には不相応な幸せだ。いつだったか、若い頃かも知れないし最近かも知れないが……強く強く願いながらも、自分のために捨ててきた『ユメ』の面影を感じてしまったのだ。

「ふふ、何を恐れているのです? 『現実』を思い出せないのなら、それでも良いんです」

「ッ……」

「その代わり……貴方の望みを、思い出してください」

 ああ、これはマズイ。もっと聴いていたい、傍に感じたいと願ってしまう。確かに、これは『夢』だ。かつて叶えられなかった『願い』を返り見る、この幸せと苦しみが夢ならば、こんなものは要らない。だって辛すぎる……この世界から帰る先は、あまりにリアルで色褪せた『現実』。この白い世界に在ったのは言葉と光、それらは全ての始まりを内包しているのだと……今更に思った。

(ああ……俺の望み、俺の夢は)

 ――そして、仰ぐ上には星のような輝きが生まれ、地面には草の薫りが漂い出した頃。目の前に低く聳える緑の丘、その曖昧な色に中てられて、今にも泣きそうな感傷に耐えて眼を閉じ……俺は、自らの望みを思い出す。

(続く)

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.260 )
日時: 2012/05/10 12:25
名前: Lithics◆19eH5K.uE6
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=28051

『夢の置き場所』-2



「俺の、望みは……」

「ええ、望みは?」

 柔らかな微笑みから生まれた優しい声は、かつて俺の良く知っていた人の声に良く似ている。その、忘れようとして本当に忘れてしまった『ユメ』を、今になって見せられるなんて。もはや一回転して苦笑いしか出来ない心境で、ゆっくりと眼を開けた。

「俺の願いは、『君と生きる』事……これで合っているだろう? 由愛(ゆめ)?」

「ふふ、それは私には分かりませんよ。ですが……私の願いも、『貴方と生きる』事でした」

 ――かつて、愛した人が居た。その彼女が今、目の前に居て微笑むのは如何なる奇跡だろうか。いずれにせよ、随分と都合のいい話だ……見れば俺も彼女も、出会った頃の姿のままなのだから。夏の薫りがするワンピースは、彼女のお気に入りで。垢抜けないジーパンとTシャツ姿になった俺は、モノクロのスーツよりもずっと輝いていた。

(信じられないな……合わせる顔なんて無いのに、こうして夢に見るなんて)

 この世界は、もう俺の知っている現実よりも鮮やかに彩られ、群青の空には星が溢れて流れていく。彼女の長い髪をが涼しげに揺らし、幻想的なくらいに綺麗で怖いと思った。やはり、それは分不相応だと。

「はは……やはり、此処は『夢』なのかな」

 世界の美しさ、懐かしい由愛の薫りに泣きそうになる前。そのどうしようもない不安を、思わず口にした。嗚呼、帰りたくないと真摯に祈ろう……それがベツレヘムの神子でも、ギリシアの夢神であったとしても。夢と現を反転させる力があるのなら誰でも良い、俺を此処に繋ぎ留めてくれ、と。その情けなく歪んでいるだろう顔を見て彼女は尚、女神の如き柔らかい微笑を浮かべて言った。

「いいえ、此処は夢でありません……私たちの『夢の置き場所』ですよ」

「夢の……置き場所?」

 そうです、と。こちらを誘うように背を向けて歩きだした彼女の後を、オウムのように尋ねながら追う。無言のまま、後ろの小高い丘を登っていく彼女の足取りは軽く。対する俺は、今だに思い出せもしない『現実』に縛られて、十字架を背負ったような重い足を引き摺っていた。『夢』では無いと、彼女は言ったが。それは俺が夢みる理想であって、目が醒めればまた、彼女の事すら忘れて日常に塗れるだけでは無いのかと。ああ、この丘を越えれば、其処で終わりでは無いのか――

「さあ、見てください。此処は破れた夢の集う場所――もう一つの『現実』です」

「え……?」

 由愛の声に誘われて、伏せた目が自然に上がる。気分的にはゴルゴダにも似た悲壮な丘の頂から、見下ろした景は。遠く荘厳に連なる山々と平野、丘に隠れていた目を瞠らんばかりに玲瓏な満月、そして――

「あれは……街? なんて、なんて綺麗な……」

 ――それは溢れる星空を、静かな湖面に映したような街の煌めき。灯りの一つ一つが揺らめき、命が燃えているのが伝わってくる。電飾や蛍光灯の白い輝きよりも、ずっと幸せそうな光。ああそうか、この街、この世界は……

「人々が捨て、諦めてしまった『夢』は……此処にやって来て、その形を為すことが出来ます。今の私たちは、『私たちの夢』そのものなんですよ」

「は、はは……それこそ、『夢』みたいだな……」

 だから、怖がる必要はないと。そう言って、彼女は俺の手を握った。この震えが伝わらなければ良いが。俺には分不相応な幸せも、この夢の街においては霞んで見えるのだから不思議で。眼下に広がる街は、一秒ごとにその輝きを増したり減らしたり……まるで人々の夢見る願いによって形を変えていくようだった。

「まだ信じられませんか? 貴方は、あの人の『夢』……私を望んでくれた形そのものなのに?」

「いや……信じるさ。この際、やっぱり夢でした、なんてオチでも構わないしね」

 やっと拗ねるような、かつての彼女らしい表情をみせてくれた由愛の手を握り返す。そう、ちくりとした罪悪感は、きっと自分自身に対するものだろう……『現実』の俺はきっと、永い時間に流されて彼女を忘れてしまったのだ。それを責める事はしないが、哀れではある。しかし、だからこそ……例え目覚めたとしても、何も覚えていない俺は平気でやっていけるだろう。それが、少しは救いになると。なんだかんだ言っても零れた夢を振り切って、きっと俺は新しい目標に向かって走っている最中なはずだから。そうでなければ、『俺』は此処に居る道理が無い。

「それじゃあ……生きましょう。私達のような『夢』には、夢らしく幸せになる義務があります。産んでくれた持ち主が、捨てた事を悔いる事のないように……また、新しい素敵な夢を抱けるように」

「なるほどな……ああ、それじゃ。俺も生きようか、由愛と共に」


 ――手を繋いで丘を下りる足取りは、二人ともに軽く。降るような星空には、朝の蒼みが差していた。出来る事なら現で眠る『自分』にも見せてやりたいと、そう思う。君の願う世界は、こんなにも美しい……それは誇るべき、叶わなくとも大切な夢なのだと。いつか叶えた時には、同じ世界が見られるのだと教えたい。


 さあ、今日も目を覚まして。退屈な日々を回し、いつか此処まで……俺と彼女の居る、この街まで辿り着く事をこそ、夢に見よう。

(了)



後記:お目汚し、失礼しました。夢というテーマに沿えているかどうか怪しいですが、読んで下さった方には最大限の感謝を。他に投稿される作品も楽しみにしています!

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.261 )
日時: 2012/05/13 18:50
名前: 瑚雲◆6leuycUnLw

あれ?あと期日2日?(((((
ギリギリみたいな感じですが…今回も投稿させて頂きます。
今回は投票もやってみようかなと思ってます^^


 【夢を、叶える子】 Part1


 私は最近、夢を見る。
 それはそれは普通の夢で、起きたら消えていく幻のもの。
 でも普通の夢であって普通の夢でなく、そう。


 「あ…まただ」


 今日の夢の中で、私は商店街の福引で2等を当てる夢を見た。
 恐る恐る商店街に向かい、福引券を指し出す。
 ガラリ、と回してみると、出たのは“2等”。

 あぁ、まただ。

 

 最近、“正夢”を見るようになっていた。




 テストで良い点とる夢を見れば、その日のテストは高得点。
 小学校の給食でメニューが変更する夢を見ると、その日のメニューは自分の好きなものになっていたり。
 おかしいくらい、自分の思い通りになっていく毎日。
 少々気味が悪いけど、気分は最高。
 何だか王女様にでもなった気分だった。


 「早く寝なさい叶子ー、明日はデパート行くんでしょうー?」
 「分かってまぁーす」

 “叶子”。
 夢を“叶える子”で、“叶子”だ。
 もしかしたら、その名前の由来のせいで今みたいな状況になっているのかも。
 ラッキーなんだなぁ、自分。


 なんて調子に乗ったりしたから。

 だから最低な悪夢を見るんだ。
 だから最悪な未来を見るんだ。


 
 「――――――ッ!!?」


 
 嫌な夢を見た。
 それも最低最悪な夢を。

 「い、まの……」

 手と喉の震えが止まらない。 
 自分の体がガチガチになっている事に気付く。


 
 ――――――――今日のデパートで、家族が死ぬ夢を見た。



 
 テロだ。知らない黒ずくめの男達がいきなり銃声を上げる。
 近くにいた私達5人家族は、真っ先に目をつけられた。
 まず人質に、お母さんが捕まった。
 それを助けようと隙を見たお父さんが動き出し、気付いた男達の仲間の独りがお父さんを射殺。
 そのせいでお母さんが喉もはちきれる程の大きな声で叫び、頭を射抜かれる。
 続いて弟は、血塗れになった両親を見て泣き出し射殺。
 私は声も出ずに唯震えて佇んでいたけれど、警察に連絡しようとして、殺される。


 最悪な夢だ。


 もしこのままデパートに行けば、一族郎党皆殺し。
 今はリビングで笑っているあの声が、一瞬にして無くなる。

 嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だッ!!!


 「お、母さん…?」
 「ははは…って、あら?叶子じゃない。さっさと準備して、デパート行くんだから」
 「その…デパート…私、行きたくないの…!!」

 お母さんはきょとんとする。向かい側のソファーで座っていたお父さんも。
 後ろからは目尻を擦りながら弟の実が出てきた。

 「何を言ってるのよ叶子。あなたが服を欲しいっていうから、家族皆で行くんじゃない」
 「そうだぞ叶子。何か行きたくない理由があるのか?」
 
 そうだ、だって皆殺される。
 幸せだったこの生活が、たったの一瞬で終わる。

 …とは言えなくて。

 私はそれでも一生懸命抗議したけれど、やっぱりダメだった。
 正夢は、絶対叶うから?
 今まで、一度だって夢は裏切らなかった。
 
 そうして私は今、お父さんの車の中にいる。

 いつもより気合の入った服装。
 お父さんもお母さんも、綺麗な服を着ている。

 優しそうなお母さんの顔。滅多に怒らない本当に優しい母。
 元気旺盛なお父さんの顔。何でもできちゃう自慢の父。
 未だ眠そうな幼い実の顔。周りに優しく友達の多い弟。

 そんな顔一つ一つが、赤に染まる瞬間って。

 想像しただけで胃の中から何かが込み上げてくる。
 ダメだ。やっぱり無理やりにでもやめるべきだったんだ。

 そうして私達一家はデパートの入り口をくぐる。
 足が重たい。息が詰まりそう。


 最悪最低な一日の、始まりの予感だった。

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.262 )
日時: 2012/05/12 11:19
名前: 瑚雲◆6leuycUnLw

 【夢を、叶える子】 Part2

 洋服屋を転々と回る。
 可愛い色の服を私に当てる母。
 私は今でも苦笑い。

 どうにかしないと。どうにかしないと。

 今日見た夢がもし正夢なら、本当に拙い。
 だってそう、家族皆殺されてしまうから。

 「叶子叶子っ! これなんてどう……って、叶子?」
 「えっ? あ、な、何かな?」
 「さっきから上の空ね、楽しくないの? 叶子?」

 楽しい訳、ないじゃん。
 なんて言えないのだからしょうがない。
 これから家族が殺されてしまうのに、楽しい訳ない。

 私のせいだ…本当に、酷いものを背負ってしまった。

 「叶子…あんたコーディネーターになるんでしょ? なのに今から暗い顔してどうすんの? 今日だって可愛いのにっ」

 むすっとした表情で、子供みたいな言い方をするお母さん。
 そうだ、服をコーディネートする人になりたいんだ。

 「夢を叶える子…でしょ? 分かってるよ、お母さん」
 「ふふっ、もし叶ったら、私の服もコーディネートしてね!」

 明るくて可愛い母。
 私は今小五で10歳で、母は20で私を産んでいるから今30歳。
 周りからすればかなり若い年齢なんだ。
 
 もし…できればね。
 私だってお母さんの服を選んでみたいよ。

 今日、自分の人生が終わるかもしれないと分かっていても。




 「あ、こっちこっちーっ!」


 お母さんは手を振ってお父さん達を呼ぶ。
 お父さんは実の手を引いてもう片方の手を軽く上げた。

 ここだ。

 もし夢が本当なら、ここで私達が死ぬ。

 止まらない心臓の激しい音に、私はぎゅっと胸を辺りを掴む。 
 お願い、お願い。

 私の大事な家族を、どうか奪わな――――――――ッ!!



 ――――――――――――――パァンッ!!


 
 「「「「「――――――――――ッ!!?」」」」」




 
 乾いた、銃声の音。





 「死にたくなきゃそっから動くな――――!!!」


 ぞろぞろと現れる、黒ずくめの男達。

 私の頬には、一筋の涙が流れた。

 
 
 「そっから一歩でも動いてみろ…この女を殺すぞッ!!!」


 男の近くにいたお母さんは矢張り男に腕を掴まれる。
 そうして近くに寄せ、お母さんの頭に銃を突きつける。
 ひぃ、と小さな声を上げる母は、カタカタと震えていた。


 まずい。お父さんが動く。


 
 「おっと…動くなよ旦那さん、あんたの大事な女房が目の前で吹き飛ぶぜ?」

 
 どうしよう…本当にどうしよう。
 お母さんが怖がってる。それを助けようと意を決してお父さんも汗を流してチャンスを待ってる。
 弟は必死に涙を堪えて、泣いて大声をあげないように我慢してる。


 今後の結末を知っているのは、自分だ。


 この場で一番有利なのは自分のはずなんだ。
 なのに…私が一番苦労してない。



 変えるんだ。
 変えるんだ、自分の手で。

 正夢なんて――――――そんな幻!!


 
 男がふいっと別方向に目を向ける。
 今だ、とお父さんが足を浮かせる。


 「ってめ――――――死にてぇのかッ!!!!」


 銃口を向ける男。
 体勢を保てずその的になる父。

 
 動け、動け…――――動いてッ!!



 
 …バサ…ッ



 私は、咄嗟にお父さんを押し倒していた。


 「な…ッ」

 
 私の真上を駆け抜けた弾。
 それに驚いた男達は、間も無く私に銃口を向けた。

 
 「邪魔するとてめぇも殺すぞ…子供だからって容赦しねぇ」


 お母さんが叫ぼうとする。
 でもそうすると隣の男に殺される。

 生き延びるんだ、絶対、皆で家に帰るんだ。


 
 「もう…やめて…」


 
 こんなに小さな声しか出ない。
 これだけ思いはでかいのに。



 「あぁ?」

 「もう二度と…正夢なんか叶わなくて良い…テストで良い点とれなくたって…給食も、好き嫌いしない…」

 「おいてめぇ、それ以上喋ると殺すぞ」

 
 
 もう良いよ。

 正夢なんて、所詮つかの間の幻だったんだ。

 夢なんて叶わなくて良い、――――だから。



 「もう…皆の事を傷つけないで――――――!!!」



 男は銃に指をかける。
 それを意味するのは、私の“死”。


 「叶子――――――!!!」


 でも、お母さんは私の名前を叫んだ。
 そして男の腕を振り解いて駆け寄ってきた。

 まずい。このままだとお母さんが――――ッ!!

 
 銃声が鳴り響く。
 またも咄嗟に動いた私の体。

 目の前に広がったのは、赤の世界だった。

Re: 第五回SS大会 「夢」 投稿期間 4/27~5/14まで ( No.263 )
日時: 2012/05/13 18:57
名前: 瑚雲◆6leuycUnLw

【夢を、叶える子】 Part3

 
 響いたのは銃声と、お母さんの悲鳴だった。
 どくどくどく…と赤い血に濡れていく自分。


 「か、なこ…」

 
 ふと自分の脇腹を見る。見事に綺麗な白が赤に染まっているのが分かる。
 撃たれたのは私だ。お母さんを抱き締めて、咄嗟に庇って、気が付けば自分の体が悲鳴をあげていた。

 でも…本当に良かった。
 大事な家族が無事で、本当に。


 「おい、無駄に発砲するな」
 「このガキがむかつくんだよ!!」
 「俺達の目的はあくまで金だ。そのガキはその後で殺すなり何なりしろ」
 
 銃を下ろした男は舌打ちする。
 そして不機嫌の眼差しで私を見ていた。

 誰一人殺させない。
 絶対、失わせない。

 
 「…わりいな」

 「…!?、お前何を――――」


 ガチャリ、と弾を入れ替えるような音が鳴る。
 そして、私に銃口を向けた。

 
 「このガキは殺す。今絶対に殺す」


 私はお母さんの前に立つ。
 よろめいた体で立ち上がる。
 
 後ろには弟の実を抱き締めた母と、動けなくなっている父。

 大事な大事な私の家族。
 夢なんかのせいで失いたくない私の宝物なんだ。

 
 「…――――――死ねッ!!!」

 「――――――――!!?」


 お母さんが悲鳴を上げて顔を伏せた。
 お父さんまでもが声を張り上げて、
 小さい実は声も出ず、


 唯私は願う。



 「夢なんかじゃなくて…――――――私には今、本当に叶えたいものがあるの!!!!」



 発砲するような銃の音。
 それは何かに当たって弾き、カラン、と音と立てて転がった。

 でもそれは、私の体に当たった音じゃなかった。




 「……え」




 「集団テロの包囲を確認!! 直ちに拘束せよ!!!!」




 ずらずらと、“POLICE”と書かれた盾みたいなものを持って現れた人達。
 さっきの音は、拳銃でテロの男の持っていた銃を弾き飛ばした音。
 私達を救ってくれた音だった。


 

 その後、拘束されたテロ集団は警察に連れて行かれ、
 ぽかんとしたまま立っていた私の許に、警察の一人が駆けて来た。

 「君…良く頑張ったね。何でも聞いた話じゃあ、2回くらい撃たれたんだって?」
 「え…あ…まぁ、はい……」
 「怖かっただろうに…君のおかげで一人も犠牲者が出なかったんだ。ホント、凄い子だ」

 警察の人の大きな手が私の頭をぽんと撫でる。
 そしてにこりと笑って集団の中に紛れて消えた。

 「たす、かった……?」

 はっとして周りを見ると、近くにいた人達全員が喜んでいた。
 特にお母さんやお父さんは、泣きながら抱き締めてくれた。
 
 「よか…っ、本当に良かった、ね……叶子…ッ!!」

 ありがとうって、何度も言われて、
 私は照れくさくて、それでも凄く嬉しくって、
 自分さえも泣いてしまったんだ。

 「ありがとう…お母さん……私ね」
 「…?」
 「“夢を叶える子”で……良かった」

 今、心からそう思う。
 自分にこんな名前をつけてくれて、本当に嬉しい。
 
 「叶子……私もよ。願った通りに育ってくれて良かった…」
 「うん……、あ…でも」

 一つ、気になる点があるんだった。
 そうだ…。
 
 「警察に連絡したのって……誰か分かる?」
 「…それがね…実が…警察に連絡したんだって……」
 「実が…?」

 実は私のケータイを握り締めて泣いていた。
 いつ落としたんだろう。いや、そんな事より、どうして実が…?

 「おね、ちゃんが……ッ、がんば、って、るからぁ……っ」

 喉を躍らせながらも、実は頑張って答えてくれた。
 そっか。そっか…。実は、私に力を貸してくれたんだ。

 「へへ…頑張ったじゃん、実」
 「…うんっ」

 私達姉弟は、お互いに顔を見合わせて笑った。





 次の日、昨日の事がニュースになってテレビに映っていた。
 インタビューでの自分のガチガチ具合は…本当に恥ずかしくて。
 見てても恥ずかしいくらい、緊張してる。

 今日の朝は、夢を見なかった。
 もしかしたら夢を見ても、正夢はなくなったのかもしれない。


 昨日の一件で、今は病院にいる。
 致命傷は逃れたものの、脇腹からの出血が止まらない為即入院。 
 良く生きてるな、自分。って本当に思う。


 多分あの時願った夢を、叶えたからだ。


 「叶子ー? りんご食べる?」
 「食べるーっ」


 私が望んだのは、そう。


 「叶子ーっ! お父さん叶子の好きな漫画持って来たぞー!」
 「お姉ちゃんお姉ちゃんっ! 学校で褒められたんだっ!」
 


 ――――――“家族の皆が、幸せに笑っている未来”だ。




 
 *あとがき*

 今回はいつも以上に長かったです;;
 もうSSではないような…そんな気さえしますね。
 でも書いてて楽しかったですーっ。

 「夏」での入賞者様…おめでとうございますっ!

Re: 第五回SS大会「夢」 投稿期間 4/27~5/18(延長) ( No.264 )
日時: 2012/05/13 22:02
名前: 遮犬◆ZdfFLHq5Yk

【夢のモーニングコール】>>264-269


昔、どこかで見たことがあった。
それはどこで見たかは覚えていない。しかし、頭の中で確かに覚えていた。
ただ、思い出せないだけ。ただそれだけのことで、記憶というものは記憶と呼べない。心の奥底、記憶の中に眠る大切な人は――

いないことになっている。

――――――――――

小さい頃から記憶にあるのは、子供の頃はよく外で遊んだということだった。
ブランコが特に好きで、いつも一人だけでも漕いでいた。友達と漕ぐのが本当は楽しいんだけど、ブランコ自体が楽しいから一人でも漕げた。
特に友達がいなかった、というわけでもない。どちらかといえば、友達は多かった方だろう。人気者、と言われるのかといえばそうだとは言い切れない。

ブランコを漕いでいる時、何だか空を飛んでいるような気分になる。それがどことなく気持ちがよかった。
その気持ちよさが心の中を洗い流し、何も考えずに高く、高くと何も無い虚空へと目掛けて足を折ったり伸ばしたりを繰り返すのだ。
不思議に感じた。こうして力を出して踏ん張れば、空にこんなにも近づけるんだ、という気がした。
ただ、実際は空の中でも少しの虚空でしか行けずに、必死で空へと上がろうとしてもがく、飛べない鳥のようだと今なら思えた。


「はぁ」

ため息が混じる。そんな昔のことを思い出したところで、どうにもならない。
あの頃はよかったなァ。あの頃は楽しかったなァ。思い返せば返すほど、カフェに漂う甘い香りの混じったこの虚空は変わらなかった。

「お待たせしました」

気付くと、定員さんが僕の隣にいて、アイスコーヒーを乗せた黒い御盆を持っていた。
僕が気付いたのとほとんど同時に、定員さんはアイスコーヒーを僕の目の前に乗せた。その時、ふわりと漂う綺麗な香りで女性の人だと思った。

「ごゆっくりどうぞ」

まるでそう言え、と決められたかのような口調で営業スマイルに顔を変化させ、言った。勿論、お辞儀も忘れずに。
僕はその定員が去っていく様子を見ていた。背中姿がまっすぐに伸びていて、礼儀正しいと誰が見ても思える。そんなに思っていた――その時、目の前にそれを遮った。
何だと思い、見てみると、それは白いワンピースのお腹の部分辺りだった。ボタンが見える、そして上へと顔をあげていくと、見事な凹凸が見え、そして――

「来て、くれたんですね……あの、待ち……ましたか?」
「……いや、特に」

僕は素っ気無く答えたつもりだったが、目の前にいた少女は笑顔で「よかった」と笑顔で返してきた。
この少女は、特に知り合いでもなかった。いや、知り合いではないと僕の中では認識していた。勿論、これからもそうだと思っている。"今の時点"では。

目の前の椅子に座ると、ふわりといい香りがした。少女は見たところ、普通の女の子よりも可愛く、清楚な感じがした。魅力的だ、というのは嘘ではなくなる。スタイルもそうだし、この少女はどこかモデルかアイドルかをしているんじゃないかとも思えるほどだった。

「いらっしゃいませ」

すると、僕が気付かない内に先ほどの女性定員がやってきていた。さすがに慣れているのだろうか。笑顔はピタリとも崩さない。純粋に凄いな、と僕は思った。

少女はチラリと僕の目の前においてあるアイスコーヒーを見ると、少し緊張した感じでアイスコーヒーを注文した。
手を重ねて、少し遠慮気味にしている。長い黒髪が艶やかに光り、とても綺麗に思えた。
こじんまりとしたカフェではあったが、無論僕達の他にも客はいる。その客達が目の前にいる少女に視線を投げかけたりしている為からだろうか。

「あの……」

少女が突然呟いた。それは僕に向けて言ったものだろうが、視線は下に向いていてよく表情は分からない。どうせ、気まずいような表情をしているのだろう、と主観的に察したつもりでいることにした。

「何?」
「えっと……覚えてません……よね?」

今度は顔を上げて言った。その表情は、僕が予想していた気まずいような表情ではなく、とても強気な眼というか、決意を示したような眼だった。

「……あぁ、覚えてないな」
「……そう、ですか」

しかし、僕の言葉でその表情も冷めさせることとなった。
仕方が無いだろう。本当に覚えていなかった。脳内のどこかに少女の記憶があったとしても、それを思い出さなければ記憶にはなりえない。そして今の僕の状態を簡単に言い換えると――

忘れてしまっているのだ。

「あの……」
「何?」

再び、少女が呟いたことに対して今度は早くに返事を返すことが出来た。少女は、両手を握り締めるかのように肩を強張らせた。そして、言い放った。

「私、優衣(ゆい)って言いますっ。あの……よろしくお願いします、何て、何かおかしいですよね……」
「……おかしいかもしれないけど……僕は上林 湊(かんばやし みなと)。よろしく」
「あ、ありがとうございます……」

僕が言ったことに対して、優衣は頭を下げる。何だ、この違和感のあるやり取りは。僕は知らないのに、向こうは僕のことを知っている。この状況のおかしさがどうにも僕には違和感にしかならない。

「お待たせいたしました」

と、ここで定員がアイスコーヒーを持って来た。僕のアイスコーヒーよりも少し早くに持って来たような気がした。
優衣の目の前へとアイスコーヒーを置いた。そしていつものように「ごゆっくり」と言い残して店の奥へと去っていく。
どうにもこうにも、何故僕が知らない相手とこうしているのか。

それはとある非通知の電話からだった。

Re: 第五回SS大会「夢」 投稿期間 4/27~5/18(延長) ( No.265 )
日時: 2012/05/13 21:46
名前: 遮犬◆ZdfFLHq5Yk

非通知はいつもとらない主義だった。しかし、携帯にかかってくる非通知は初めてのことで、特にこれといって違和感もなく、僕はとってしまった。
かけてきたのは向こうからで、こちらからもしもし、と言いたくない気分だったので、少しの間、無言で黙っていた。
そうしていると、ゆっくりとした口調で声が聞こえてきた。

「もしもし……?」

それが優衣の声だったのだ。
何故僕の番号を知っているのか。そんな質問を投げかけていたと思う。
すると、優衣はこう言ったのだ。

「私は、貴方を知っています。上林 湊さん……ですよね?」

怖気がした。どうして僕のことを知っているのか。ストーカーなのだろうか、もしかすると。
問い詰める気もなく、僕はだんだんと恐くなってきて、通話を切ろうとしたその時――

「貴方は、私のことを覚えていませんか? 私は、覚えています。湊さん、昔に私と一緒に遊んでいました。そして、私は――」
「いい加減にしてくれ。君はストーカーか何かか?」

言い放った言葉はこうだった。僕は少々気を強く言ったつもりであったが、どういうわけか、少しの間黙りこんで、それから口を開いた。

「そう思うのは……当たり前、だと思います。でも、私はストーカーじゃありません。私は、その……貴方の過去を知っているんです」
「過去を知っている?」
「はい。貴方は、気づいていないのかもしれないけど……記憶がなくなっているんです」
「どういうことだ? そんなことはない。昔のことだって思い出せる。ブランコが好きで、ずっと乗っていた」
「……そうです。断片的な部分は、思い出せるはずです。けど、思い出せない部分もあるんです。それは、脳が勝手に忘れていることにしているからです。……けど、私は貴方に知って欲しいことがあるんです」
「……それは、何だ?」
「会ってお話します。……昼の1時過ぎ、○○のカフェで待ち合わせをしましょう。……時間がありませんので」
「時間がない……? どういう意味だ?」

しかし、俺の質問を遮って通話は切れてしまった。
謎の非通知の電話。携帯で初めてかかってきた非通知の電話は、思いもよらないものだった。


そういえば、そうだった。
僕は事故にあっていたらしかった。気付いた時には真っ白な部屋の中で、そこが病院だと気付く頃には何か色々なことを思い出せそうで思い出せない感じがした。
記憶喪失だ、とは思わなかった。だから医者から状態を聞かれた時にも普通に答えられたし、本当に何にもなかった。
ただ、思い出せないような感覚がそこに少々あるだけで、身の上のこととか、自分の名前とか、思い出せる。親とか、僕に兄弟がいたこととかは医者からも言われなかったからいるのかいないのかよく分からなかった。
だけど、自分の家は分かっていた。アパートだ。大学生なのだろう。大学はここだ。自分は何が好きな食べ物だった。ハンバーグだ。

そんなことを思い返すことは普通に出来る。何だか不思議な感じだな、とも思わなかった。それが普通。それが普通の生活。これが、僕なんだ。


―――――――――

少しの沈黙の後、初めて僕の方から口を開いた。

「それで……僕の記憶って?」

そう言った僕は、アイスコーヒーにミルクを入れた。次にシロップを。どちらかと言えば甘党な僕は、シロップを大目に入れた。
カラカラ、とアイスコーヒーに入ってある氷が鳴った。それを境にして、優衣は口を開いた。

「……あの、すぐに思い出せるっていうわけじゃないと思うんです。そして、私は明日にはもう帰らないと行けない、というか……その……」

なんだかハッキリしない物言いに、僕は少し片方の眉を上げて、

「ハッキリ言ってくれよ」

と言った。
その言葉に後押しされるかのように、優衣は言いずらそうな口を解いた。

「あの……今日一日、私と……私と――デートしてもらえませんか?」
「……は?」

Re: 第五回SS大会「夢」 投稿期間 4/27~5/18(延長) ( No.266 )
日時: 2012/05/13 21:49
名前: 遮犬◆ZdfFLHq5Yk

騒々しい雑踏の中、僕と優衣はとある場所に来ていた。
そこには様々な乗り物があり、家族連れやカップル連れ等でごちゃごちゃに騒々しい。

「見てください! 湊さん!」
「え? あ、あぁ……」

詰まる所、僕と優衣は遊園地に来ていた。優衣本人たっての希望だったからだ。僕がわざわざこんなところに行こうなんていうはずがない。
優衣は無邪気な子供のようにはしゃいだ様子で乗り物を指差していた。僕はその様子をただ頷くぐらいだというのに、優衣はその笑顔を失くしはしなかった。

「あれに乗りましょう!」
「あれって……メリーゴーランド?」
「……っていう、名前なんですか?」
「え、知らないの?」

優衣が遊園地と提案した時も、なんだかあまり言い慣れた様子ではなかった為、まさかとは思ったが……

「すみません……これが、初めてなんです。その……遊園地に来たのが」

元気な笑顔はその時ばかりは失くし、しょんぼりとした表情を見せた。何故か、ずっと笑顔なせいか、優衣が笑顔でない表情をしたら何か嫌な感じがした。

「全然悪いことじゃないよ。ただ、珍しいなって思ったから」

僕がそう言うと、優衣は少し呆けたような顔をした。こんな表情は今日初めてのことだったが、すぐに返事をして笑った。けれど、それはどことなく作り笑いのような気がしてならなかった。

何故遊園地に来たことになってしまっているのか。一日デートをしてくれ、と言われた僕は勿論戸惑った。一体どうして僕がデートをしないといけないのか。それに今日が初対面だというのに、何故そんなことをしなくちゃいけないんだ。
カップルとか以前に、まだほとんどお互いのことを――まあ、向こうは僕のことを知っているみたいだけど、僕は知らない。言えば、今知り合ったばかりでデートを強行されてることになる。さすがにそれは強引だろう、とは思ったが、僕自身も考えることがあった。

それは勿論、自分の記憶のことだった。
忘れているだけ、といっても、それが重要なのかそうでないのかがわからない以上はどうすることも出来ない。大切な人を忘れているかもしれないし、そうでないかもしれない。単なる気のせいで終わる可能性だってある。
しかし、この少女は、優衣は少なくとも僕のことを知っていた。そこまで詳しく、というわけではなく、単にストーカーとかである可能性も十分ある。
しかし、だ。ストーカーならば、記憶云々の事情は知らないだろう。僕だって曖昧な事実で、記憶が失ってるなんてことは思い出せるはずもない。

ただ、ただしかし。

僕の中で、何か"濁り"があった。
前々から出てきていたこと。それは、夢だった。
虚ろに見える何かが夢で実在している。それがもし僕の中に眠る記憶だというのならば、なんだろうか。思い出さないといけない気がした。
誰も僕にコンタクトをとって来なかった中、優衣だけがコンタクトをとってきた。僕の過去を知っていると。それがいくら僕が覚えていなくとも、彼女は覚えているのだ。それは事実として、今ここにある。

「でも、だからどうしてデートなんだ?」

それをカフェ尋ねると、簡単に返された。

「デートをしていただければ、思い出せるかもしれないからです」
「……君と?」
「はい」
「……僕が?」
「そうです」

こうして、僕と優衣の奇妙な一日デートが始まったのである。

――――――――――

「まもなく、発車いたします」

アナウンスが聞こえる。ピロピロピロと、音が鳴り響いた。
僕と優衣はジェットコースターに乗っていた。この遊園地で一番の人気のものだそうだ。僕自身もこの遊園地に行ったことは初めてだと記憶しているので、あまりよく分からないが。

「なんだか、緊張しますね……」

優衣が隣でそう呟いた。その表情は、確かに緊張しているような顔だった。

(顔によく出るな……感情が)

僕はそう思い、クスッと笑い声を出してしまった。

「湊さん? どうしたんですか?」
「いや、何でもないよ」
「そ、そうですか……」
「ふふっ」
「え?」
「いや、何でも」

こんな会話を続けていたら、ジェットコースターが動き始めた。ゆっくりと、ゆっくりと、上へ上へと上がって行く。
この無重力の中に浮いているような、上に上る感覚……どこかで覚えていた。そう、ブランコだ。僕は、幼少の頃ブランコに乗っていたんだ。

ジェットコースターは止まらず、ゆっくりと上へと上がって行く。目の前の線路が見えなくなるまで、ゆっくりと。
虚空の中に、無数の景色が見えた。どれも綺麗に見えて、不思議に思えた。僕はこの虚空の中にいるんだ、と。

幼少の頃の思い出。それはブランコに乗っていただけじゃなかった。
確かに友達でも何でも困らなかったはずだが――そう、"あの子"。僕は、誰かを忘れているような気がする。

「――思い出せましたか?」

その時、ジェットコースターは勢い良く下降した。僕が、優衣の呟いた言葉に眼と耳を向かせようとした、その最中のことだった。

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