雑談掲示板

第十一回SS大会 お題「無」 結果発表
日時: 2014/02/27 20:57
名前: 死(元猫 ◆GaDW7qeIec
参照: http://www.kakiko.info/bbs/index.cgi?mode=view&no=16247

第十一回SS大会 お題「無」
>>523に第十一回大会結果紹介

始めましての方は、初めまして! お久し振りの方達はお久しぶり♪
何番煎じだよとか主が一番分っているので言わないで(汗
余りに批判が強ければ、削除依頼しますので!

題名の通りSSを掲載しあう感じです。
一大会毎にお題を主(猫)が決めますので皆様は御題にそったSSを投稿して下さい♪
基本的に文字数制限などはなしで小説の投稿の期間は、お題発表から大体一ヶ月とさせて貰います♪
そして、それからニ週間位投票期間を設けたいと思います。
なお、SSには夫々、題名を付けて下さい。題名は、他の人のと被らないように注意ください。
 

投票について変更させて貰います。
気に入った作品を三つ選んで題名でも作者名でも良いので書いて下さい♪
それだけでOKです^^

では、沢山の作品待ってます!
宜しくお願いします。

意味がわからないという方は、私にお聞き願います♪
尚、主も時々、投稿すると思います。
最後に、他者の評価に、波を立てたりしないように!



~今迄の質問に対する答え~

・文字数は特に決まっていません。 
三百文字とかの短い文章でも物語の体をなしていればOKです。 
また、二万とか三万位とかの長さの文章でもOKですよ^^
・評価のときは、自分の小説には原則投票しないで下さい。
・一大会で一人がエントリーできるのは一作品だけです。書き直しとか物語を完全に書き直すとかはOKですよ?

――――連絡欄――――

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_____報告
第四回大会より投票の仕方を変えました。改めて宜しくお願いします。

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Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.189 )
日時: 2012/04/07 10:09
名前: 刹那◆V48onzVAa6

初めまして、もしくはこんにちは。
今回初めてSS大会に投稿させて頂きます。

タイトル:狂愛毒ニヨリ苦シ

「僕と、付き合ってくれない?」
 そう幼馴染みの優人に告白された高一の夏から、二年が過ぎた。
(もう付き合い始めてから二年かぁ……)
 と感慨に浸りつつ、ギシギシ軋む廊下に体重増えたかな、と佐和子は不安を覚えながら旧校舎の廊下を歩いていた。
 窓の外では、蝉が必死に求愛行動に励んでいた。それが夏の気だるさを余計に増す。今にも空気が蒸発して水蒸気になりそうな猛暑日真っ只中の今日、佐和子は優人を呼び出したのだ。自分でも何でこんな猛暑日に呼び出したのだろう、と後悔しているがもう腹を括るしかない。
『話があるから、大鏡の前に来て』
 そんなメールを、朝佐和子は優人に送った。旧校舎は一応封鎖されているが、封鎖しているのがすっかり錆び付いた南京錠の為、左右に捻るだけで簡単に取れてしまうのだ。勿論佐和子も、南京錠が簡単に外れることは知っていた。生徒は、教師の目を盗んでは大鏡のジンクスを試しているのだ。
 その大鏡のジンクスとは、旧校舎の二階にある大鏡の前で告白すると付き合える、というものだ。
 二年前の夏、佐和子はその大鏡の前で告白された。幼馴染みの優人と恋人という関係に変わり、最初の一年はとても楽しかったのだがだんだんと優人に会うのが億劫になってきた。所謂、倦怠期というものだろうか。最近は会ったら挨拶を交わす程度までになり、別れたのかと誤解されることもしょっちゅうだ。
 大鏡の前に辿り着き、佐和子は外を眺める。
 夏という季節は不思議なものだ。暑いと思いつつ、その日射しに微睡み、溶けていきたくなる。
(もう戻れないのかな……)
 今日、佐和子はこの機会に別れようと決意していた。
 今の二人を締め付けているのは、恋人という鎖だ。もう会うことすら面倒なのに、恋人だからということが二人の願いを邪魔している。そう思ったからだ。
 恋人には戻れなくとも、せめて幼馴染みに。そんな淡い期待もしたが、恐らくそれは無理だろうという結論が出ていた。
「……お待たせ」
 階段の方から、優人が現れた。急いで来たらしく、息を切らせていた。
「久し振り、優人」
「久し振り」
 眩しい向日葵のようにはにかむ優人に佐和子の胸に切なさが滲んだ。
(そう、私は優人のこの笑みが大好きだった―――――)
 でも、それはあくまで幼馴染みとしてだった。
 今になると、そう思える。
 優人は、愁いを帯びた瞳で無人のグランドを眺めて、
「……二年前、僕はここで佐和子に告白したよね。好きだよ、付き合ってって」
 ―――――佐和子は、それで察した。
 優人も、別れようと思っているのだと。
 だが、呼び出したのは自分だ。佐和子は、
「―――――別れよう?」
 と呟くように告げた。
「……え?」
 優人の間の抜けた声が響く。佐和子は無理に作り笑いをして、
「ほら、優人も私も。お互い疲れちゃったじゃない?だから、別れよう?」
「……」
 優人が黙りになる。
 佐和子は、溢れる気持ちを飲み込んだ。
 本当は楽しかった時もあった。だが、それを告げたら両方の為にも別れた方がいい、という決意が揺らいでしまう。もどかしい。そんな感情が佐和子の中を占めていた。
「優人も、それを言おうと思ったんでしょう?」
 長い、気まずい沈黙が流れた。
「……それが、佐和子の気持ち?」
 そして、その沈黙を破るように優人が俯きながら尋ねてきた。
「……うん」
 だが、佐和子は偽らなかった。
「そっか」
 優人は俯いたままで、そう言った。
「ごめんね、呼び出して」
「ううん。こっちも待たせちゃって悪ィ。飲み物買ってきたから、飲む?」
「あ、うん。ありがと」
 佐和子は優人からペットボトルを受け取り、開けた。
 簡単に開いたな、という印象があった。
 そして、ペットボトルの中の緑茶を一口。
「―――――ッ!!」
 途端、形容しえない吐き気のようなものが佐和子を襲った。
 体の全ての細胞が激しく警鐘を鳴らす。
 喉が、胃が、細胞が。体全体が熱い。それは夏のせいではない。恐らく、先程の緑茶のせい―――――。
 佐和子の体が、ぐらりと横に倒れる。体中の力が抜け、立つことすらできない。
「ガハ……ッな、何が……」
 次第に、喋ることもままならなくなる。
 何が起こったのか、佐和子には理解できなかった。
「ゴメンね、佐和子。だって別れようとした佐和子が悪いんだ。佐和子は僕だけのものなのに―――――」
 佐和子の口から激しい咳と共に零れたのは、鮮血。
「ちなみに、それは理科室から盗み出した薬品。毒になるのかな。嫌な予感がして、持ってきて正解だったよ」
(―――――毒?)
 佐和子は察した。
 自分は、優人に毒を盛られ、死ぬのだと―――――。
(なん、で……)
 そこで佐和子の意識はブラックアウトした。

「佐和子、ゴメンね。苦しかった?」
 優人は人形のように動かなくなった佐和子にキスをする。
「あのね、佐和子。僕は君と別れようなんて、これっぽっちも思ってないよ。僕は君を愛してる。君は、これで一生僕のものだよ―――――」
 全ては、ある夏の刹那的な幻。
優人は満ち足りた笑みを浮かべ、佐和子の頬を自分の頬に擦り寄せた。
 その表情は恍惚とした―――――罪悪感など微塵も感じていないというようだった。
「ねぇ、佐和子、僕だけを見てくれるよね?僕の傍を離れるなんて言わずに、ずっと、僕だけを見て―――――」

 ―――――ねえ、知ってる?旧校舎の大鏡の噂。
 ―――――告白すると成功するっていうジンクス?
 ―――――違う違う。昔ね、そこで告白された女生徒が数年してから別れ話を切り出したんだって。そうしたら、彼女を狂愛していた彼氏に毒殺されたんだって。自分だけを見るように、って。それで、それからその大鏡には、その女生徒が口から血を流した様が映るんだって―――――。


.。*゚+.*.。   ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。   ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。  

猫様

素晴らしい大会を開いて下さり、有り難う御座いました。
大会の存在を知り、ネタから執筆まで一日で実行したのは初めてです。
文才の欠片もない拙作ですが、ここに載せることをご容赦ください。
お礼が遅くなり、申し訳ありませんでした。

.。*゚+.*.。   ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。   ゚+..。*゚+.。*゚+.*.。  

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.190 )
日時: 2012/03/23 11:18
名前: ピアニッシモpp◆8NBuQ4l6uQ
参照: http://www2.x-feeder.info/aosilove/

『怪談』

「なぁ、怪談しようぜ!」

この一言が始まりだった

今日は8月13日、夏休みの宿題がようやく終わって遊ぼうとしていた
そうしたら、快たちが来て、俺の家で遊ぶことになった
あ、俺は如月優衣。一応男

未来「ねえ、ゲームとか置いてないの?」
優衣「捨てた」
秋「暇なんだけど」
優衣「知らん」

とまぁ、全員暇していたらあの言葉だ

優衣「ハァ?怪談?」
陸「いいな!涼しくなりそう!」
快「じゃあやるぞ!」

なぜか怪談をすることに
この後俺はカーテンを閉め、ろうそくを用意させられた

快「じゃあまずは俺からな」

と話を切り出したのは案を出した快

快「昔、この近くの神社で殺人事件があったんだ。それで狙われていたのは小学校高学年ぐらいの子達。まぁ俺たちぐらいの子だ。その犯人は捕まったのになぜかまだ事件は起きていた。これは何故か?そう思い高校生の男女が神社に行ったんだと。そうしたら神社の奥に祠があった。前までは無かった祠が。その男女は悪戯で祠を空けた。でも何も怒らなかったから男女は自分達の家に帰った、…はずだったんだけど。その二人は帰る途中に行方不明になった…。専門の人によるとそれは幽霊の仕業なんだってさ」
未来「快の話、怖い…」
陸「俺、寒気してきた」

この話は俺も聞いたことがある
なんたってその神社はここから一キロ以内にあるからな…って近くじゃないか…

未来「じゃあ次は優衣ね」
優衣「は!?」
陸「作り話でいいし」
優衣「ハァ…」

結局俺は話すことに

優衣「話す前にこれだけ言っておく。この話をしてから何かが起きても責任はとらない。本当の話だからな」
秋「え?」
陸「ちょっ!」
優衣「ついこないだのことだ。大学生5人が廃病院に行ったらしい。それで面白半分にビデオを取り始めたんだと。んで、ここはこんな部屋です。見たいなことを言いながら歩いてた。そうしたら3回に繋がる階段の途中で懐中電灯が切れた。電池はまだあるのに何故か切れたんだ。不思議に思った一人が後ろの子に聞こうと振り返ったら、血まみれの男がこっちを見ていた。そして振り返った少年は階段を下りて逃げたら他のメンバーも一緒になって逃げた。だけどその男は追って来なかった。安心して5人は家に帰った。が、次の日一人の女性が原因不明の高熱にかかり、振り返った少年は行方不明になった。撮っていたビデオを見ると、たくさんの人が映っていた。そしてこの話を聞いた人の前にそいつは…現れる」

俺が言い終わった瞬間急に棚の上の花瓶が落ちた
陸「――!?」
秋「やっぱりやめない?」
快「そそそそそうだな」

怖がりだな…
まあ俺は体験したからなれてるけど…
…ん?
何か窓に一瞬何かが見えた様な…

未来「優衣?どうかした?」
優衣「…逃げるぞ」
陸「は?」

陸がそう呟いた瞬間

ドンドンドン
とドアがなった

優衣「お~来たぞ~」
快「なななんで!」
優衣「最初に言ったぞ、俺は何が起きても責任は取らないと」

ガチャ
とドアが開いた

未来「いやあああ!」
??「――?」
陸「…幽霊!?」
??「違うよ~」
優衣「ドッキリ大成功~」
??「涼しくなっただろ?」
快「は、はははははは」
秋「もう!遊びに行くよ!」
優衣「あいよ」

とまあこんな感じの一日だった
え?何も起きてない?何言ってんの?来たじゃないか。
名前を顔も知らない謎の人が。え?ドッキリだって?
違うよ、みんな気付いてなかったけどあの人、足が無いよ
怪談、楽しかったなぁ。
ああ、夏だなあ。
あ、もしかしたら幽霊がそちらに向かうかもしれませんが、こちらは責任を取りません

         ~END~



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

お題の「夏」から離れて行っちゃったけど…怪談といえば夏ですよね?
ついでにこの話は私オリジナルですので。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.191 )
日時: 2012/03/25 14:08
名前: さくら
参照:     涙の匂いがした海に、ふわり。人魚姫の泣き顔が映る 


「海が、綺麗ですね」


無造作に伸ばした金髪を振り乱しながら、彼は振り向いた。
この海の蒼にも負けない、清い瞳がとても眩しかった、




              。゚
               o
              ○
                 o
                o ○
              O。゚
             o
              。




家族と旅行で来た沖縄。綺麗な海、大嫌いだ。蒼い海、大嫌いだ。
空のブルーが反射してる。日光を浴びてキラキラキラ。人魚姫はこんな綺麗な海で泡になったのだろうか。
ところで此処の海は本当に綺麗だ。海は嫌いだけども、「綺麗」そう感じる感覚という物はちゃんと持ち合わせていた。本当に、綺麗で、憎い。

夏。白いワンピースが浜辺に咲いた。
さらさらと柔らかい砂は、裸足で歩いても全然痛くない。白、青、赤、緑、桃…数々の色が映えて見えた。凄く良い経験だ。


「海は何で蒼色なのか知ってます?何やら、太陽光の影響なんだそうですよ。海中に太陽光線が入ると、青以外の色は吸収されてしまい、青い光だけが海中に浮遊する微粒子に当たって跳ね返るため、青く見えるのです。本当、神秘的な話ですよね。」

「…変な奴、」


浜辺に一人佇む一人の少年。高校生で同い年位だろう。
ただじっと海を見つめていただけの彼に興味本心で、少し語ってみた。が、逆に集中を煽っただけだったらしく眉間に皺を寄せて睨まれては、また海に視線を泳がせた。

ふぅ、長い髪を靡かせ近寄ってみる。


「こっち来んなよ」

「私の身体なんですから、私が何処に動こうが私の勝手です。其処にたまたま貴方が居ただけ」

「…ったく、」


何か、無愛想な人だなあ。口調や見た目は何処かの不良の様だが、内面は凄く冷めている男子だと思った。否、ギャップと言えば良いのだろうか。だがしかし、こうしてまでヤンキー外見の癖にこれじゃあまるで勉強しかしない、世の中全て金、だと信じ込む男の様にしか見えない。

私は病気で、普段は吐き気がする程真っ白な病室から出られない。勿論暇というものが出てくる訳で、何時も本を読んでいた。ほら、TVをずっと視ていても、視たい番組ばかりでは無いし、お金も掛かるから。
本を読むだけあって、それが凄く熱中してしまい、本から得た知識が頭の中で疼いている。

外に出るのを許されていない訳ではない。外には散歩がてら出る場合もある。時間制限はされているし、何時も看護師や付き人の人が着いているが。
だから、自由に遊ぶ学生や仕事に走るサラリーマン、家族で外食しに行く親子達を見ると激しい嫉妬に見舞われる。私は出たくても出られないのに。もし仮に出れたとしても、制限された自由。だから、海も嫌いだった。空も、無限大に広がるもの全て。自由なもの全て。

ふざけた話だって思ってる。こんなの、只の醜い嫉妬だって。
でも、妬かずにはいられなかった。すんなりと自分の死を受け入れて、病室に閉じ篭り外を見ようとしないのは何か、私が私で居られなくなるみたいで、嫌だったから。


「海は、特に嫌いなんです。」


海は、怖い。あの大海原を越えたら何があるのか。深海の底には何があるのか。人魚姫が泡になった海は、どんな味をしているのか。どんな色をしていたのか。知りたい。
何故過去系なのかは、この際深く問わないで頂きたい。

だが、海に吸い込まれそうで。私の少ない命が吸い込まれそうで、とても怖いのだ。
人魚姫が泡になった様に、この深くて綺麗な海に融けて無くなってしまいそうで、怖い。

だから、海が嫌い。


「お前なぁ、怖いのは、知らないから怖いだけなんだよ。知ってしまえば全然怖くねぇ。」

「知るって、でも、海の事なら知ってます。本で読んだ事あるから」

「それは、自分でちゃんと確かめた事なのか?自分で身を持って確かめ無いと、その情報が嘘って事もあるからな。」


それは、確かに。
今の、発達した科学でも突き止められない事がある。宇宙だって、数え切れない星がある中、発見されているのはごく一部の星だ。
この様に、幾等本に書いてあったとしても、自分で調べない限りその情報が偽りだと言う事もある。

だから、身を持って調べる事が大事。怖いのは、知らないから怖いだけ。怖いなら、知れば良い。本当に怖いものなのかは、知ると分かってくる。
勿論、身体で調べられる事に限るが。


「お前、泳いだ事ねえだろ。海の事を知ろうとしていないから、当然だけどな」

「…、」

「海がどんな味なのかも、知らないだろ」


―――怖いのは、知らないから怖いだけ。怖いなら、知れば良い。

海の味は、しょっぱい。
彼はそう言って、自らの指を海につけた。そして私の前に着き立てた。は、舐めろ、と?


「はむ、」

「ちょっ、噛むなよ?」


しょっぱい。一つ目に思う。涙の味がした。



 ×



海は、人魚姫の流した涙だ。幻想的な思考が頭を駆け巡る。
人魚姫は、王子様を殺す事が出来なくて悲しくて悲しくて悲しくて。

最初から、海が塩辛いとは知っていたけど、涙の味がするなんて知らなかった。
涙なんて、悲しくて嫌だ。


「何で、海は甘くないのでしょうか。」

「は?海は塩辛くてナンボだろ」

「ですけれど、海が涙の味なんて、悲し過ぎます」


海は嫌いだ。涙の味がするし、私の少ない命が吸い込まれそうで、とても怖いのだ。
大嫌いな海、この浜辺で見た海は、とても綺麗で、とても涙色で蒼かった。

そんな海の奥で、一匹の海豚が空を跳ねた気がした。


「それにしても、海が、綺麗ですね」





(( 涙の匂いがした海に、ふわり。人魚姫の泣き顔が映る ))


240324
素敵な小説大会を有難う御座います。
とても楽しめました。「夏」というテーマに合っているかは分かりませんが、私なりに「夏→海」という感覚で書きました。
上記の何か変な○が沢山並んでいるのは、泡をイメージしました。見えるといいですが。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.192 )
日時: 2012/03/26 23:57
名前: 瑚雲◆6leuycUnLw

まさかの題名で賞を取るとは…。
投票してくださった皆様、有難う御座いますっ!



【Our summer】 1/2


 「夏だぁーっ! 海行こうぜ、海!!」
 「やだー! 絶対虫取りっ!!」
 「夏と言ったら祭りじゃないかなぁ~?」
 「…あ、あのー……っ」

 僕等4人は、教室の中で騒ぐ。
 僕と、加奈と、純也と、藍子。
 小さい頃からの幼馴染で、今は同じ学校で。
 終業式が終わった途端、教室で何をするか討論を始めた。

 「だーかーらー…海は男の“ろまん”ってやつなんだよっ!!」
 「はぁーっ!? あたしと藍子は男じゃないしっ」
 「まぁまぁ…順番に行けば?」
 「え、えと…」
 「おい悠人はどこ行きたいんだよっ」
 「僕は…皆に合わせようかなぁ…なんて」
 「……何それー…これだからヘタレは嫌なのよっ」

 純也と加奈は結構スポーツタイプの元気系で、僕等のムードメーカー。
 それと対するように、僕と藍子はそれを見守る係り。
 これは昔から変わらない。

 小学4年生、10歳の僕等はまだ何も気付かない。
 大事な事に気付かない、淡い年頃だった。

 

 「…んじゃ、明日は海で明後日は虫取り。それからお祭りプール山登り街探険…てな感じだけど、おけーっ?」
 「賛成ーっ! 明日からもう遊べるのねっ!!」
 「藍子はそれでいい?」
 「あ……う、うん」 
 「浮かない顔するのね。あ、行きたい所あるとかっ!」
 「藍子、遠慮すんなよー?」

 1人俯きながら、藍子は口を閉じる。
 僕等は幼馴染で、間に遠慮ないてない。
 だから言って大丈夫なのに。

 「…、したいな」
 「え?」
 「み、皆で…天体観測が……したいな…」

 ぽかん、とする僕等一同は、1度互いに顔を見せ合わせて後に頷く。
 可愛いところあるじゃん、ってそう思った。

 「良いじゃねぇか!! こうなったら新しい星を見つけっぞーっ!」
 「あぁーっ! あたしだって負けないし!!」
 「はは…新しい星って……」
 「……楽しいね」
 「え?」
 「皆…そう言ってくれて嬉しい…」
 
 藍子はいつもの優しい顔で微笑んだ。
 僕はそんな藍子を見て、張り切るあの2人を見る。
 あぁ、やっぱ僕等は“4人で1つ”なんだ。

 



 ※続く

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.193 )
日時: 2012/03/26 23:50
名前: 瑚雲◆6leuycUnLw

 【Our summer】 2/2


 海水浴、虫取り合戦、夏祭り、区民プール、山登り、街探険…と。
 僕等は宿題も忘れて夏休みに没頭していた。
 漸く、1週間が経とうとした頃だ。
 街探険を終えた僕等は公園でアイスを食べながら楽しく会話をしていた。

 「にしてもお前、虫取りうめーんだなぁーっ」
 「甘く見ないでよねーっ! こちとら虫オタクなんでっ」
 「でも純也だって夏祭りの金魚すくい、異常に上手かったような…」
 「あれはな悠人! コツってもんがあってーっ」

 楽しい4人の時間。
 の筈…だったんだ。
 
 藍子は静かに、それも途端に立ち上がった。


 「ごめんね…皆」


 いつもの優しい声と入り混じった、
 怯えるような震えた声。

 我慢しきれなくて、掠れながらにも絞り出したような、声。

 「ど、どうしたの…、藍子」
 「具合でも悪いのかぁー?」

 藍子は小さく首を横に振る。
 藍子に一体何があったんだと思うと…彼女は言葉を紡いだ。


 「私…都会に引っ越す事になった、の……」


 田舎育ちの僕等にとっては、一度は行ってみたい世界。
 都会。藍子の口からはそんな単語が生まれた。

 「な、何で…」
 「今までそんな事、一言も…!!」
 「藍子…?」

 藍子の声が震えていた。
 藍子の体が、震えていた。

 藍子は走り出した。

 夕日を背に、掠れた声を出して僕等に背を向けたんだ。


 藍子が引っ越す。
 藍子がいなくなる。

 
 僕等はそれだけで、夏の色を失った。








 僕の耳には何の音も響かない。
 やかましいセミの声。暖かいで揺らぐ草の音。
 僅かに聞こえる自転車のベルの音も、水の音も。

 音じゃない、なくなったのは僕等の夏だ。


 「…藍子の家、行ってみたけど返事がなかったよ」
 「俺もそう。つか、『泣いてる顔を見せたくない』って、藍子のかーちゃんから伝えられた」
 
 あの元気な2人が、こんなにも気を落としていた。
 当たり前だ。大事な幼馴染がもうすぐこの街からいなくなる。

 「…藍子、いつ引っ越すって?」
 「確か…明日の朝にはもう発つって…」

 僕はそんな会話に混ざる事もできず、公園から歩き出した。

 「ち、ちょ…っ、悠人!?」

 加奈の声が響く。でも何故だか僕の耳には残らなかった。


 『私…都会に引っ越す事になった、の……』


 こだまする藍子の声。
 僕等に残された時間はもうないんだ。



 「藍子?…ごめんね、本当に会いたくないって…」
 「じゃあ、伝えておいて貰えますか?」
 「…?」
 「僕のマンションの屋上に、夜7時集合だ、って」



 もうこれしかないと思った。
 最後はやっぱり笑ってほしいから。
 あの優しくて柔らかな笑顔を、もう1度見たいから。




 「何するのよー、悠人?」
 「…僕等の夏は、こんなんで終わりにしたりしないよ」
 「はぁ? それどういう意……」

 満天の夜空の下で、僕は思った。
 絶対来てくれるって。
 これだけで終わりにするなんて嫌だったから。
 
 「お前、まさか…」

 がちゃり、と屋上の扉の開く音がした。
 申し訳なさげに入ってくるのは、あの優しい僕等の幼馴染。
 僕等にとって、かけがえのない存在。


 「藍子…」
 「……悠人君、ここで何をする…つもりなの?」


 未だ不安げな藍子は、扉から半分身を乗り出す。
 僕はにこっと笑って、ゆっくりと腕を上げた。
 そして、指でそれを指し示す。




 「やろうよ…“天体観測”を。……――――僕等の夏は涙なんかで終わらせないよ」

 

 
 藍子は、夜空に散りばめられた宝石を見つめる。 
 点々とするその宝石を人は、“星”と呼んだ。
 満天の空の下、僕等はもう1度離れない絆を創り上げるんだ。



 「あれ見ろよ! めっちゃ赤い!!」
 「ちょっとちょっと!! 大きい星見つけちゃったぁーっ!」
 「藍子は全部知ってるの? この星達」
 「……うん、星は好きなの…」


 火星を見つけるんだとか新しい星を発見するんだとか、尽きない話題で盛り上がる僕等。
 やっぱりこうでなくっちゃ、僕達の夏は。

 
 「あの…皆…っ!」


 藍子の力強い声に反応する。
 こんな声も出るんだと、そう思った時だった。

 
 「私…こんなに楽しい時間を過ごすのは初めてで、それも皆で、この4人で過ごせて…本当に、本当に…っ!」

 「藍子…俺達だって楽しかった」

 「また皆で、この4人で集まろうよっ!」

 僕もうんと頷く。
 藍子は溢れる涙を止められずに、それでも綺麗に、



 「ありがとう…本当に嬉しい…―――っ!」



 暖かくも優しい笑顔を、いつもの笑顔を、僕等に向けてくれたんだ。






 僕等4人の夏は終わってしまったけれど、決して消える訳じゃない。
 もう1度、もう2度だって。
 きっと巡り合い、笑い合う。

 それがどれだけ先の事でも、どれだけ偶然な事であれ。


 ――――――"Our summer isn't to vanish eternal"


 *end*

 なんか仲良し系の青春系の爽やか系を書きたかった…みたいです←
 前回はちょっとコメディで思う存分ふざけたので、今回はわりと真剣に書きました(((
 と言ってもこれで真剣かよというレベル。
 もっと精進したいと改めて思いました。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.194 )
日時: 2012/03/27 15:45
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

1>

――――僕の名は高樹純平。
    純平の純は“純粋”の『純』。
    女の子に全く興味が湧かない……なんてコトはないけれど、生まれてからいままで一度も“恋”というものをしたことがない。
    やっぱりみんなにいつも言われてるように理想が高すぎるのかな…………


 僕の両親は下着会社を夫婦で経営していて、海外に出かける事が頻繁にあってめったに家にいることがない。 家政婦のおばさんを一人雇ってはいるが、住み込みではないので、夕ご飯の支度を済ませると帰っていってしまう。 広い家に僕ひとり。 小さかった頃は淋しかったけれども、もう慣れた。
 先日父さんが久しぶりに家に戻ってきた。 父さんの横にもうひとり……僕がたぶん初めて会う男の人がいた。 父さんいわく彼は幼馴染で占い師らしい。 見た目は色黒で、土木作業員のような貌。 とても暗い部屋で毎日水晶玉に手をかざしている、というイメージはわかないけれども、彼の占いはとてもよく当たる、と言っていた。 主に“事業経営”や“景気の流れ”を占う人だった。 おそらく父さんのかたわら、お世辞を言ったのだと思うけれども、僕の手相を見た彼に、“将来、父をも超えるほどの人間になる”と言われた。
 僕は“ついで”に彼にお願いをしてみた。


「恋愛面も占ってください」
                ――――と。


 一瞬曇った彼の表情を僕は見逃さなかった。
 “恋愛占いはしたことがない”と彼は言っていたが、絶対ウソだと思った。 彼には“僕の恋愛の良くない結果”が見えたんだ。 「自身はないが……」 彼は父さんのとなりで言いにくそうに答えた。


タイトル『一晩かぎりの月下美人(シンデレラ)』


(今夜七時から花火大会……か……)
 僕には“健”という幼少時代からの“くされ縁”の同級生の友達がいる。 見た目だけではなく中身までも、今はやり(?)の“チャラい”男だ。 彼には“由季ちゃん”という、誰がどう見ても釣り合いがとれないくらいの美人の彼女がいる。 小学生時代に(もちろん)健のほうから“ダメモト”で告白したら奇跡的にOKをもらえた事がきっかけで付き合いだした。 小さな事でちょこちょこケンカは絶えないけれども、なんだかんだいっても続いている仲良しカップルだ。
 健と由季ちゃん……。 あいつらのことだからきっと今夜、花火と一緒に“フィーバー”でもするのだろう。
「高っちに彼女ができたらダブルデートしような!」
 余裕な顔で健のやつはエラそうに言う。 そんな事言って僕の彼女も一緒に“ダブルフィーバー”でもする気……
――――って、友達の事をこんなに悪く言っちゃイケナイ……
 なんかひがんでるみたいでカッコ悪いな 僕…………
 最近熱帯夜が続くからなのだろうか。 身体が熱い……
 部屋の窓を開けて夜を浴びた。 暖かいの味を感じながら目をつむる――――


 今年の夜もひとり寂しく花火の音をBGMに“未来の僕の恋人とのラブラブデート”を想像しながらくつろぐとするか…………
 僕はキングサイズのベッドの上にゴロンと横になり、枕元に置いてあるファッション雑誌を手に取り、パラパラとめくった。
(ん? そういえば健のやつ、最近やけに浮かれてたな……)
 彼いわく、由季ちゃんとデートなんて……“お泊りデート”まで何回もこなしているはずなのに……。
 あの健のテンションはまるで“初めてデートをする”ような感じ――――


 “彼女にバレない浮気の方法”


 偶然にも読んでいる雑誌のなかのこんなコーナーに目が止まった。
 もしかして健のやつ…………
(――――なーんて ね……)
 だから友達の事、こんなに悪く言っちゃイケナイって。 やっぱりひがんでるのかな 僕……


「 !! 」
 外から女の子の泣く声が聞こえる。 しかもその声は“僕のよく知っている女の子”の声にとてもよく似ていた。
 窓からそっと顔を出してのぞくと、やっぱりそうだった。――――由季ちゃん だった。
 浴衣姿の由季ちゃん……。 彼女はずっと泣きながら僕の部屋を見上げていたのだろうか。 呼び鈴も押さずに……
 僕の姿を見た彼女はあわてて走り去った。
 彼女は僕に助けを求めている――――そんな気がして僕は部屋を飛び出した。
――――放っておけない!!
 玄関を飛び出し、彼女のもとへ向かった。


>2に続きます。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.195 )
日時: 2012/03/27 16:21
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

2>

 僕の部屋のベッドの上に腰をかけて……僕の淹れたジャスミンティーの入ったカップに口をつける由季ちゃん。
「――――やっぱり“合わんかった”んだぁ…… わたしたち……」
 震えた声で大粒の涙をこぼしながらジャスミンティーをすする。
(もう何も話さなくて いい……)
 ベッドの上のちょうど“彼女にバレない浮気の方法”のページで開かれっぱなしになっている雑誌をあわてて閉じて、僕は彼女の小さな肩に手を乗せ……ようとして止めた。
(由 季 ちゃん……)
 信じられない……。 由季ちゃんがひとりで……“健の付いていない”由季ちゃんが僕の部屋のベッドの上に――――
 普段は細いウエストと長い脚を強調したスリムジーンズでクールにビシッとキメている彼女がしっとりと女の子らしいブルーの浴衣姿で……。
 普段は下ろしているつややかな腰まであるロングヘアーを今夜は一つにまとめておだんごにして……。
 僕は視線でゆっくりと彼女の首すじを撫でた。 少し着崩れた浴衣の後ろ衿の中からセクシーにのぞく彼女の背中。 その奥はいったいどうなっているんだろう……
 健が宝物を見せびらかすように僕に話していた“由季ちゃんの裏の顔”が僕の頭のなかにぼんやりと浮かぶ。
(何 思い出してんだ!僕っ!!)
 健のせいでよけいに由季ちゃんの顔を見ることができなくなってしまった。
 カタカタと由季ちゃんが手に持っているカップが震えている。
 僕はおそるおそる彼女の手から視線をのぼらせてゆく。
 普段はいつも…… 言っちゃ悪いけど“男らしい”、誰に対しても対等で、媚びない、さばけた、強い“はず”の彼女が真っ赤な目で僕の顔をまっすぐ見て震えている。
 今ここで…… 僕が抱きしめたらバラバラにこわれてしまいそうに――――


 ドドドドーン!
 夜空全体に響きわたる音とともに窓から降り注ぐ眩しい光。 花火大会のオープニングが始まった。
「相手が“僕”じゃあ、全然もの足りないかもしれないけれど……今夜は一緒に楽しんで みる?
 綺麗でしょ?  ここからでも充分に見えるんだよ、花火。」
――――本当はこんな台詞を言いたいんじゃなかった。
 僕の本心は……  もしも由季ちゃんが健の彼女じゃなかったら――――


3>に続きます

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.196 )
日時: 2012/03/27 17:11
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

3>

「やさしくしないで!!」


 今度こそ彼女の肩に手を乗せようとしたら大きな声で思いっきり弾き飛ばされた。
「男なんて大ッ嫌い!! 健も!高樹くんも! みんな大ッ嫌いッッ!!」
 そう言いながら由季ちゃんは――――――僕の胸に飛び込んできた。
 窓の外で一発づつ上がるイタズラな花火が、僕が必死で眠らそうとしている欲望を覚まそうとする。
 震えている由季ちゃんの背中に手をまわし、僕は彼女のくちびるを奪った。
「ねぇ 由季ちゃん……
               この浴衣…… 自分で着たの……?」
 由季ちゃんの浴衣の掛衿をつかんでいる僕の手も震えている。
「――ごめん。
 僕も健とおなじだね……。  今、“チャンス”だっておもってる……
 “やられたなら やりかえせばいいじゃないか”……って……
 由季ちゃんが“いや”なら、僕 すぐにやめるから…………」


     ☆     ★     ☆


 僕は“気まぐれ”で由季ちゃんを抱いた。
 “嫉妬”でも“愛情”でもない。 ただの“興味本位”で。
 彼女には悪いけれど、アレは“ひと夏の過ち”だと思っている。
 生まれて初めての盛大な“花火大会”が終わり、家に戻っていった彼女は今、何を思っているのだろう。


――――あの時は半信半疑でまともに聞いていなかった占いの結果を今頃になって思い出した。
「近いうちに恋に落ちるでしょう。
 落ちる……というか溺れる、と言ったほうがいいですね。
 純平くんのほうから夢中になってしまうくらい、あなたの心を惑わす女性が現れます。
 ――――しかし、その恋の前にはとても大きな障害の壁が立ちはだかっています。 覚悟をしておいてください。
 欲望にまかせて 突っ走らないように…………」


《おわり》

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.197 )
日時: 2012/03/30 18:30
名前: 夕凪旋◆PQzQy5g.72
参照: 初投稿です。よろしくお願いします。

 『休暇』

 ――私は、ずっと貴方を待っていたいのです。
 そう言って泣き崩れた彼女の姿を、私は生涯胸に抱いて生きていくのだろうか。

 時間とは実に不可思議で、そして残酷なものだと思う。十年という巨大な時間の壁によって、私はあの時、私を思って涙を流した彼女の姿しかまともに頭の中に思い描くことができないのだから。他にも、例えばたくさんの笑顔を見せてくれたはずなのに、その中の一つすら思い出すことができない。あの泣き崩れた時の映像のみを残して、他のものはさっさと荷物をまとめて頭の中から出ていってしまったかのように。
 それ故に、だ。もう彼女に会うことができないのだと知った時はそう、体中から力が抜け、情けなくもその場に崩れ落ちたのを覚えている。が、一滴の涙も頬を伝い落ちることが叶わなかった。“悲しかった”のではなく、ただただ無念でならなかったのだ。
 私は閉じていた目をそっと開き、実家からそう遠くはない河原の草むらに腰を下ろしたまま、頭上に広がる澄んだ空を仰いだ。久しぶりに見た故郷の空は悲しいほどに青く、ほんの少しの間とはいえ、ここに帰ってきた私を温かく迎えてくれているようにも見えた。じっと見つめていると急に胸の奥が熱くなったので、少々躊躇ったが、私は再び目を閉じた。何故か、暗闇の方が心底落ち着くのだった。

 どこか遠くから聞こえてきた、子供たちの無邪気な笑い声が耳を通り抜けていく。

 待ち望んでいた夏を歓迎するようにして鳴く、蝉たちの声に混じって。

 嗚呼、どこにいても見れそう、聞けそうなその全てが愛おしくてたまらない。

 できることなら暫くの間、実家で伸び伸びと暮らしていたいものだと切実に思う。しかし、あまり時間が取れず、今日中にはもうここを発とうと思っていたので、「残念ね」と項垂れる母に向かって謝罪の言葉を繰り返して家を出てきたわけなのだが、今更ながらにそれを後悔した。恐らく、明日の早朝に発っても滑り込みで間に合っただろうに。とはいえ、彼女の話を聞いた後にあの家にいても、ただ気まずいだけなのだろうとは思うが。

「もう、行くか」

 あまり長居すると、それこそ向こうに戻れなくなりそうなので、私は目を開けると、ゆっくりと腰を上げてズボンについた草を払い落とした。自分でもどうしてなのかよくわからないのだが、その行動すら、大切な思い出を払い落としているようで何だか無性に切なくなる。思いを振り切るよう深く息を吸い込んでみると、空気は爽やかな夏の味がした。


「……さよなら」


 ふっと頬を緩めてそう呟いた時、先程まで私を取り巻いていた子供や蝉たちの声がはたりと止んだ。突然誰かにスイッチを切られてしまったかのように、何の前触れもなく。
 私は急にそれが恐ろしくなり思わず身を固めて辺りを見渡した。実際に目にしてみて気がついたのだが、私が今体験していることは非常に不可思議なことであった。それはただ音がないだけで、周りの景色は今までと何一つ変わらずに動きつづけていたのだ。例えるならそう、音量をゼロにしたままテレビを眺めている時と同じ。
 どうすれば直るのか全く見当もつかないので、耳に手を押し当ててみたり離してみたりを繰り返していると、やがて、すぐ近くから草を踏み締める音が聞こえてきた。それと共に、先程まで姿を消していた音たちが雪崩れ込むように私の耳に飛び込んでくる。
 思わず勢いよくそちらへ顔を向けてしまう。音の主は驚いたらしく、少々後ずさった。

 しかし、正直、相手の顔を見た私の方が驚いたと思う。

 白いブラウスにこげ茶色のスカート。背中に届く長さの黒髪。大きな麦わら帽子。

 この女性は驚くほど、“彼女”にそっくりだった。

 しかし、彼女にしては様子が変だ。彼女だったら、真っ先に私の名を呼んでは嬉しそうに駆け寄ってくるはずなのに、この女性はまるで私を恐れるかのように距離を取り、不安げにこちらを見つめているだけ。私が今、身につけているのが軍服だということもあるのだろうが、彼女だったらそんなことは絶対に気にしない。
 別人か。胸の奥で広がった期待を粉々に粉砕された私が肩を落とした時、

「――あのう、」

 ふいに女性が口を開き、驚きのあまりに固まっていた私を見上げてくる。真っ白い手には、向日葵によく似た黄色の花が握られていた。……いや、恐らく向日葵なのだろう。が、私がよく目にする向日葵と比べて、それはとても小さかった。

「この近くに、公園はありますか?」

 心細げなか弱い声であった。しかし、とても心地よい声でもあった。
 そして、やはり聞いたことのある声だった。

「確か、……茶色の遊具のある公園なのですが」

 女性はちらちらと私の様子を窺いながら、躊躇いがちにそう付け足す。心なしか、きゅっと手に力が込もっていた。
 確かにこの近くにはこの女性の言う公園があったような気がする。まあ、それも私の記憶に間違いがなければ、或いは今も例の場所にあるのならばの話だ。今の私には自信を持って、十年も昔に住んでいた地を案内することはできなかった。
 しかし、一人で心細げな彼女を安心させてあげたくて、

「ええ、そうですね。確かにありました」

 と、私は自信ありげに頷いてみせた。
 そして、よかったと言わんばかりに安堵の表情を浮かべる女性に近付いて微笑みかける。

「私も丁度、その近くを通るところでした。一緒に行きましょうか?」

 そう訊ねると、女性は「ありがとうございます」と頭を下げた。

 素敵な方だ。で揺れる黄色の花がよく似合う、素敵な女性だと思った。顔を上げた時にふっと浮かべる笑顔には、守ってあげたくなるような愛らしさも感じる。これを世は一目惚れだと言うのだろうが、きっと、いや絶対にそうではないはずだ。その前に私は、この女性にそっくりな女性を好きになっているのだから。
 まず先に私が歩きはじめると、慌てて彼女も私にくっ付くようにして歩きはじめた。私に合わせるように少し急ぎ足で。少し歩調を緩めてみれば、彼女もそれに合わせて少しだけ足を動かすスピードを落としはじめる。隣ではなく、ずっと影一つ分ほど後ろを着いてきていた。
 ――それが、無性に切なかった。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.198 )
日時: 2012/03/30 21:21
名前: 夕凪旋◆PQzQy5g.72
参照: 続き。

「……とても、綺麗な花ですね」

 互いの沈黙に息苦しさを覚えはじめた頃、ふと思いついた話題にすがるように背後に声を掛けてみると、女性は「はい?」と疑問符の飛んだ声を返してきた。さては、聞いていなかったのだろうな。私は足を止めずに首をそちらへ向けて「それ」と顎で花を示し、再度「綺麗な花ですね」と言い、微笑んでみせた。すると、女性は嬉しそうに顔を綻ばせる。

「そうでしょう? 私も大好きな花なのです」

 何という花なのか教えてもらおうと思ったのだが、どう訊ねればよいのかわからないまま、結局、私は前を向きなおしながら「そうですか」とだけ言って口を閉じてしまった。彼女の大好きな花でいいじゃないか、それだけでいいじゃないか。そんな気がした。
 それから、何の話題も見つからず、ただ黙々と二人で歩きつづけた。
 十数分ほどひたすら歩きつづけていると、茶色の滑り台が見えはじめてきた。
 ――あそこだ。私は額の汗を手で拭ってから、公園のことを伝えるべく女性の方へと視線を滑らせてみた。
 すると、彼女は先程とは打って変わって何やら悲しそうで、口を真一文字に結んで俯いている。綺麗に切り揃えられた前髪が、彼女の目元に暗い影を作っていた。見方によっては、泣いているようにも見える。花の話題に触れた時に零れ落ちた笑顔を、知らぬ間に壊していたのではないかと自分の行動を確認してみるが、どこに落とし穴があったのかはわからなかった。また、何て声を掛けてあげればよいのかもわからなかった。

「……ます」
「え?」

 微かに聞こえてきた声に思わず足を止める。声は確かに震えていた。
 体を女性の方に向けた時、胸に先程まで彼女が持っていたあの花を押し付けられた。
 甘いような苦いような香りが鼻孔をくすぐる。花を手にしたまま再度「え?」と声を上げる私に向かって、女性は眩しすぎる笑顔を浮かべてみせた。頬には一本の涙の跡が引かれており、涙で濡れたまつ毛はきらきらと輝いていた。

「この花を差し上げます」

 受け取ってはいけない。頭にはそのような命令が出されたのだが、

「……受け取って、ください」

 彼女には、勝てなかった。
 受け取った花を見下ろしてみると、逆にその花は私を見上げてきた。それを見て、この花、実は生きているのではないだろうか、という錯覚に陥る。に好き勝手に揺らされているだけだというのに。そう思うと、今度は首を傾げてくる。実に可笑しな花だ。そして、それでいて――

「本当に、綺麗ですね」

 素直にそう思った。

「……向こうに公園があるのがわかりますか?」

 私は体を正面に向けなおして先程見つけた滑り台を人差し指で指し示しながら、「あそこです」と付け足してみる。女性は私の隣に立つと、目を細めて私の指差す方を見つめていたが、その一拍後にはどうやら見つけたらしく、「あっ」と小さく声を漏らしては無言で何度も頷いてきた。笑みが零れ落ちる。

「あ、あの公園です。どうも、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」

 こんなに綺麗なお花を頂いてしまって。そこまでは言葉にすることができなかった。だから、言葉の代わりに、花を大事に抱きかかえたまま頭を下げた。夏の物詩とも呼べる蝉の鳴き声が私たちの間に落ちてくる。一生懸命に羽を羽ばたかせて鳴く蝉。その声をひどく鬱陶しがっている人もいるのだが、メスを呼ぶために必死なオスを想像すると罵声を浴びせるのが可哀想に思わないのだろうか。

 ――そういえば、名前。顔を上げた時にはもう、そこに女性の姿はなかった。

 生温いが頬を、汗ばんだ前髪に触れていく。引き寄せられるように花に視線を落としてみると、茎には小さな紙が巻きつけられていた。先程までは巻かれていなかったような気がするが、そういえば茎などあまり気にせずに花ばかりを見ていたので、ひょっとしたら気付かなかっただけで最初からあったのではないかという気もしてくる。よく見てみると、その紙の端には小さな文字で『啓介さん』と。私はその紙を解いてみた。
 少々黄ばんだその紙には綺麗に整えられた文字で二言。『ありがとう』と『行ってらっしゃい』。上の方にはやはり、私の名が記されてあった。『啓介さん』。

 どこか遠くから聞こえてきた、子供たちの無邪気な笑い声が耳を通り抜けていく。

 待ち望んでいた夏を歓迎するようにして鳴く、蝉たちの声に混じって。

 私は再び紙を花に巻きなおして、頭上を見上げた。
 空は相変わらず真っ青で、優しく微笑んだままこちらを見下ろしている。雲はやたらゆっくりと空の中を泳ぎ回っており、大きな羽を広げて舞い踊る影はすうっとその中に姿を消す。自分の口元が緩んでいることに気が付くまで、そう時間は掛からなかった。

 私は静かに目を閉じて、暗闇の中に“彼女”の姿を思い浮かべてみた。

「……ほら、やっぱり」

 できるじゃないか。
 私には眩しすぎる笑顔を浮かべる、“彼女”の姿を思い浮かべることが。


「――ありがとう。行ってきます」


 再び目を開くと、目に入った手元の花が微笑んだように見えた。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.199 )
日時: 2012/03/30 18:30
名前: 夕凪旋◆PQzQy5g.72
参照: 後書きー。

 *後書き*

…………………………、長えよこれ。
と、まあ、はい。ここまで読んでくださった方、お疲れさまでした!
前々から面白そうな企画だなあと思って影でこそこそっと見ていたのですが、第四回になったところで「受験も終わったし、僕も書いてみるか」というノリで参加させてもらいました。とっても楽しかったです、ありがとうございました。

これは僕が書いている小説の番外編なのですが、まあぶっちゃけ、読んでいなくても大丈夫じゃないかなと思います。ので、何の小説なのかは敢えて言わない← ただ、「夏」というお題でピーンときて書いただけだし。むしろ、別物。
夏が来ると僕は何だか切なくなってきます。なんででしょうねw 友人は「夏だぜ、海だぜ、あっはっはっはっは」みたいな人と「夏かよ、マジかよ……」みたいな人に分かれるのですがww あら、不思議。
書きたいものをどんどん詰め込んでいったら、何だかすっごいグダグダしたものになってしまいました。文章とかかなり読みづらい上に、話も訳わからない件について(これ、「夏」関係してるのかな……?)。そして、小説もグダグダならば後書きもグダグダっていう。すみません。これからは、読んでいて苦痛にならない小説を目指していきたいです。

それでは猫さん、そして最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました!

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.201 )
日時: 2012/04/03 18:25
名前: ゆかむらさき◆zWnS97Jqwg
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=10497

こんばんは猫^^

毎回SS大会楽しませてもらってます^^
えっと……今回はものすごく惚れた作品がありましたので投票しようと思っています。
まだこのあとにイイのがボン!ボン!って出てくるとおもうけれど……
ほんとに みなさんスゴいのでビックリしちゃいます……

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.202 )
日時: 2012/04/05 14:26
名前: 夜深◆4QOlS8qZ..

タイトル:『恋の煙』

うだるような熱さの中、
冷蔵庫を開けて牛乳のように腰に手をあてて飲むコーラは格別だ。

ぴちぴりと来る炭酸と扇機の弱いが少しの間、
涼しさを連れてきてくれる。

もうすぐ腰に届いてしまいそうなくらい長い、私の黒髪。
そろそろ切ろうかと思う。 失恋もしたし。

私とヨースケは部活仲間にも認められているお似合いのカップルで、
(全く想像できないけれど)将来ケッコンするんじゃないかとまで言われていた。

けど、ヨースケの住んでいるマンションの隣に2歳年上の大学二年生が引っ越してきた時から自体は一変。

そう。私という髪のきれいな彼女がいながら(これはただの自慢だ)、ヨースケは汚い茶髪の下品に大きく口を開けて笑う女に恋をしたのだ。

以前、ヨースケは私に「君の口角が上がる笑い方が好きだ」と言っていたから、余計に悔しかった。なんで、と思った。

テレビをつけてみると、お昼のニュース。
いつもと何も変わらない、利発そうなニュースキャスターが淡々と、
関西のお昼のニュースを読み上げていく。

「今日未明、〇×県〇〇市にあるマンションで、11階から白い煙が上がっている、とマンションの近くに住む女性から通報があり、火は11階から10階に燃え移りましたが、約1時間半後に消し止められました。
火元の部屋には、10代後半と見られるの男女2人が煙を吸うなどで意識不明の重体です。警察は詳しい出火原因を調べると共に、発見された男女の身元確認を急いでいます」

枝毛を探す手を止める。
今、テレビに写っていたのは、多分、いや、絶対そうだ。
ヨースケのマンション。

ヨースケの浮気が発覚してからというもの、私は彼に一切連絡をしていない。 あっちからもしてこないから私たちの仲は完全に終わったはずだ。

でも、テレビに映るマンションを見て、
お願い、ヨースケ、生きていて。
そう思った。

ヨースケのお父さんは毎日パチンコに行って夜は帰ってこないし、
お母さんは看護師だから時々ヨースケのいるマンションに帰ってこられないことがある。

それを良いことに私とヨースケはよく一緒にマンションの一室でお菓子を食べ散らかしたり、とりとめのない話をしていた。

ヨースケは昨日、その大学生と一緒に部屋で遊んでいたのだろうか。

ヨースケがバランスゲームで失敗するたびに、彼女は茶髪を揺らして、大きな口を開けて笑うのだろうか。

突然のことすぎて、わからなくなった。

ひとつだけわかったことは、私はまだ、ヨースケのことが好きで、ヨースケの癖のある髪を触りたいし、彼の私服の趣味の悪さをふざけて批評したりしたいということ。

ヨースケは生きているのだろうか。

あんな下品な大学生の名前をつぶやきながら、彼が天国にいくなんてありえない。
生きていてほしい。 生きてなきゃだめだ。

自分でも驚いたけれど、そう思った次の瞬間に、
私は白いソファに突っ伏して泣いていた。

これからも私の恋は続くのだろうか。

うだるような熱さの中、私の頬を流れる涙と額の汗を乾かしていく小さな扇機だけが元気に首を振っていた。


**
こんにちは。
以前、「冬」をテーマに雪の結晶のことを書いた夜深(よるみ)です。

チャットモンチーの『恋の煙』を聴きながら、掲示板を見ていたら、ここをまた見つけて、久しぶりに書こうと思ったら恋愛小説っぽくなりましたw

"私"は"ヨースケ"への未練(?)に、ここで初めて気づきましたが、
そのきっかけが怖いニュースだったなんて、ほんとに怖いですね。

自分の大切な人にもう二度と会えないかも知れない、
って思うと、人は泣くのでしょうか。

書いていて結構楽しかったです。
テーマ「冬」の時に、何人かの方が私の書いたお話を評価してくださり、とても嬉しかったです!

これからも暇を見つけたら書いていこうと思うので、
是非よろしくお願いします。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.203 )
日時: 2012/04/06 15:08
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6


『壊れたエアコン』


 茹だるような暑さに、私、龍崎サナは、ソファーとお友達になってました。
 タダでさえ貧血気味な私に、このような暑さ、加えて。

 なんで、エアコンが壊れてるってんねんっ!!

「大丈夫? 何か買ってこようか?」
 折角、彼氏のラナ君が遊びに来てるのに、何も出来ません。
「ごめん、何も出せなくて……」
 おでこにつけてるハンカチがもう、ぬるいです、先生……。
「じゃあ、アイス買ってくるよ。少し休んでて」
「んっ」

 からからからー。
 エアコンが壊れたから、超レトロな扇機とやらを取り出して使ってる。
 ウチは、パパが扇機をドライヤー代わりに使ってるので、メンテはバッチリされてる。
 けど、この時代、そんなの使うの、ウチだけのような気がするのは、気のせいかな?
 そういえば……夏祭りのとき、ラナ君が可愛いきんぎょ、すくってくれたっけ。
 私はすぐに紙が破れちゃって、一匹も掬えなかったけど、ラナ君、ああいうのって、得意らしく10匹くらいくれたな。あのきんぎょも、今は死んじゃって、代わりに生きていたときの映像を使って、壁のオブジェに映してる。ちょっとだけ、涼しい気分になった。
 それにしても、扇機の、ちょっと気持ち良いな。
 あーっていったら、声が震えるから、宇宙人の声ーなんて冗談良いながら遊んだっけ。
 それもきっと、ウチだけなんだろーな。
 ああ、暑い。ぼーっとしてきちゃった。
 それに……だんだん眠くなってきちゃって…………。


 気がつけば、側にラナ君がいた。
 もう帰ってきたんだ。
 ………あれ? 涼しい?
 がばりんちょって起きちゃった。
 ばさりと、何かが落ちて……ああ、ブランケット?
「サナ、起きたの? 大丈夫? アイス食べる?」
「うん、大丈夫。って、あれ? エアコン、直っちゃった?」
 気がつけば、さっきの茹だるような暑さも全くなくなってる。
 換わりにあるのは、程よく涼しくそよぐ。しかも凄く冷たくないんだ。
 本当に程よいって感じ。
 そうそう、エアコンってこうだよね!!
「あ、サナー! アイス、何味にする?」
「バニラ&クッキー!」
「オッケー!!」
 冷蔵庫から、持ってきてくれたアイスは、私の好きなメーカーのアイスだった。
 こういうところは抜かりないよね、ラナ君って。
「そうだ、エアコン、どうして直ったの?」
「あ、えっと……困っていたみたいだから、僕が業者呼んで直してもらっちゃった」
「でもこの時期って混んでて、なかなか受けてもらえないんじゃない? うまー♪」
「はむはむ。うん、だから、僕の知り合いに頼んでやってもらっちゃった」
 その、ラナ君の知り合いって人が、微妙に気になるんですが。
「えっとその……修理費用は……」
「大丈夫、タダでやってもらったから」
「マジ?」
「うん、マジ」
 いつの間にか、アイスはすっかり空になっていて。
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした」
 互いにぺこりと頭を下げて、笑い出す。
「その様子なら、もう大丈夫だね」
「うん、元気いっぱいっ!!」
 思わずサムズアップしてしまう私。
 と、思い出した!!
 今日の重大な目的!!
 立ち上がって、ばたばたと自分の部屋から、ゲームソフトとヘッドマウントディスプレイを二つ、引っつかんで持ってきた。
「お待たせ! 今日はこれをラナ君とやりたいなって思ってたの!」
「サバイバルホラー?」
 こくこくと頷く私。結構、人気のシリーズで面白いって話なんだけど。
「一人でやるのは怖くって」
 てへぺろっと頭を掻く私。
「うん、面白そう。僕もやったことないし」
 さっそく、ヘッドマウントディスプレイを装着しちゃうなんて、ラナ君、気合入ってるみたい。そういえば、ガンアクション、すごく得意だっけ?
「今日はパパもママも居ないし、さくっと夜なべで、エンディングまで行っちゃうわよ!」
「え? ちょ、ちょっと待って、それって……ああっ!!」
 ゲームソフトを入れて、私はさっそくスタートボタンを押す。
 そう、楽しいデートはこれからだ!!

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.204 )
日時: 2012/04/06 15:11
名前: 秋原かざや◆FqvuKYl6F6

◆あとがき◆

ふう、間に合ってよかった!!
えっと、別サイトで書いているキャラの外伝という感じで作ってみました。
一応、近未来です。はい。
エアコンも高性能だし、外は温暖化でめっちゃ暑い夏を想定してます。
他愛ないひと夏の思い出みたいな感じで書いてみましたが、いかがでしょう?
とにかく、大事なことなんでもう一度。
間に合って、良かったっ!!

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.205 )
日時: 2012/04/06 16:59
名前: さくら
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21261

こんにちは、猫さん。>>191で御邪魔させて頂いたさくらです。
カキコでは、二次創作(紙ほか)で活動しています。URLは主スレです。
締め切りになる前に、一度ご挨拶を、という事でコメントさせて頂きました。暇があればどうぞ聞いてやって下さい。
まず、第四回ss大会を開催してくれて有難う御座います。実は前々から、こういうのに参加してみたくて、今回勇気を出して投稿させて貰いました。勇気も出なかったチキンな奴で申し訳ありません。
とても素敵な企画で、とても楽しめました。賞は別に狙っている訳ではありませんが、やっぱり投稿させて頂いて良かったと思います。
投稿した事に、悔いも反省もしておりません!(`・ω・´)キリッ
只ちょっと、もう少しでも文才があればなぁ、と…、(´・ω・`)ハア

私も、ゆかむらさき様と同じ様に、ハートにズッキュンと惚れた作品が御座いましたので、投票しようと思っています。
この先また良い作品が投稿されるかもしれないので締め切りが過ぎたらにしておきますが。
また連絡下さい。今回はどうも有難う御座いました。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.206 )
日時: 2012/04/06 20:07
名前: Lithics

はじめまして、Lithicsと言います。
いままで投票も参加もした事がありませんでしたが、毎回楽しく読ませて頂いていました。今回は、既成のものですが折角テーマに合ったものがあるので、参加させて頂きたいと思います。どうぞ宜しくお願いします!


『望夏の灯』


 ――それは、ただ綺麗な灯。夜の浜辺に広がる幾多の灯篭……蝋燭に紙を被せただけの簡素な造りだが、小さな炎が集まって揺れる様に目を奪われる。それを防波堤の上に座り、見下ろす僕は。きっとこの場にふさわしくもない、能面のような無表情で居るんだろう。

 波間に攫われた紙灯篭の一つが、尚その煌めきを失わないのを見ても。灯りを並べる人々の皆が皆、哀しみと愛情を綯い交ぜにした顔をするのを見ても……僕の心は揺れなかった。



「廉、そろそろ時間だ。通夜が終わっちまうぞ……?」

「分かったよ、修介。だけど、もう少し……」

 ふと、後ろから男の声。それでも灯から目を離さず声だけで返すと、彼は文句も言わず、隣に座り込んだ。此処は彼と僕……そして彼女が年に一度必ず訪れた特別な場所。通夜の会場から行先も告げずに出てきた僕を、彼が見つけられたのも別段不思議では無かった。

「ああ……。あいつは『迎え火』が好きだったな。良く不謹慎だと言ったもんだが」

「……今年は灯が多いね。修介、あいつも喜んでると思う?」

 今さら、その感傷は無意味だ……しかし、それでも。毎年の盆には此処を訪れて、死者の霊を迎える火を見て、花火のようにはしゃいでいた彼女の姿が瞼に焼き付いて離れない。きっとそれは、隣に座る男、修介だって同じだろう。この揺れる灯の中の少なくない数が、世を離れたばかりのあいつを性急にも呼び出しているモノなのだから。

「だろうな。全く、わざわざ盆に逝くなんて……これを狙ったとしか思えんよな」

「はは、違いない……」

 呆れたような修介の声は、全く変わっていなかった。今でも、拗ねたように反論する彼女が隣にいるような気がして。それを宥めるのが僕の役目で……時には修に重ねてからかい、ふくれていく彼女を見て笑うのが……僕達の日常だった。それは当たり前のように続き、終わるとすれば歳を刻んだのち穏やかに……そう思っていたのに。

「……ほら、行くぞ。さっきから、おばさんがお前を探してるんだから」

「ん……」

 声に応えて立ち上がり、砂浜に背を向けて……肩越しに、一度だけ振り向いてみた。目に映る、やけにぼんやりとした視界は涙のせいではなく……この地方の夜に特有な海霧の為だ。僅かに灯篭の和紙が濡れ、余計にその輪郭を滲ませる。その幻のような光景に、ふと一つの疑問が氷解するのを感じていた。

「そうか……綺麗だから。理由なんてそれだけかな」

「…………?どうした?」

 薄く笑う僕に、修介が怪訝な顔を向ける。悔しい事にそんな事、この男はずっと前から分かっていたのだろうが。彼女が『迎え火』を必ず見に来た理由は、ただそれが綺麗だから。死者を呼ぶとか、盆の行事だからと。そんな事よりも、灯の本質……誘蛾の如き煌めきを好いていたのだろう。そういう、単純な奴だった。

「なんでもないよ。行こう」

「はあ……勝手だな、おい」

 修の脇をすり抜け、防砂林へと歩く。追ってくる彼の、砂を踏む足音を聞きながら……やはり、そこに彼女の足音が足りていない事を思い知った。

 ――思えば。彼女が死んだという事を、僕はまだ自覚出来ていない。だから、この目から涙が流れる道理はなくて……繰り返し想うのは、最期の日の追憶。まるで自分に納得させるように、ふとした瞬間に思い出される光景だった。


<続く>

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.207 )
日時: 2012/04/06 20:10
名前: Lithics


『望夏の灯』-2

 その日。僕は夢と現の狭間を漂いながら、彼女の事を考えていた。


 ――耳朶を打つのは、雨音だろうか。途切れずに鳴り続ける音は、何だかとても心地好くて……誘われるような瞼の重さに任せて、再び眠りに落ちそうになったのに。ふと、そのBGMが一斉に消えて。痛いくらいの静寂に、何か虚しい夢を見ているような不安に襲われた。今、目を開けないと……全てが消えて失ってしまう気がして。


「あ、やっと起きた? もう、お見舞いに来て寝ちゃうなんて」

「ぁ…………美奈?」

 叱られた子供のように、慌てて目を開けた先には。斜陽に染まって尚、真白いと分かる部屋。雨音ではなく、それに似たリズムを刻む蝉の合唱。窓際に置かれ、西日を吸い込む清潔なベット。その上で横になりながら、優しく微笑む人……それらは、決して幸福ではないけど。僕にとって、失いたくない光景の一つに違いないのだ。だからこそ、ここに来て眠ってしまった事を後悔した……もう、残りは少ないと言うのに。

「うん、私よ……廉ったら寝ぼけてるの?」

 ベット脇に座る僕の手が彼女が伸ばした手に包まれる。その暖かさは、寝起きで呆とする僕には心地よかった。くすくすと笑う声が、蝉の声と混ざって……それだけで、酷く穏やかな気分にさせてくれる。

「む……そうだね、少し寝ぼけてるのかも」

 ……だって、目の前の彼女の姿が。以前の元気な美奈と変わらないなんて、そんな幻視をしてしまう。少しこけた頬に浮かぶ笑みから、三人で遊びに行った海での華のような笑みを。痩せて乾いた手が、初めて手を握った時の緊張の汗に湿った感触を。そんな都合の良い望みを思い起こさせる……僕にとって、残酷すぎる皮肉だった。だから、その泣いてしまいそうな感傷を、態とおどけた口調で誤魔化してみる……それもきっと、彼女は全て分かっていて。

「ありゃ、開き直ったな? ふふ……じゃあ、私が起こしてあげる」

 にやりと、悪戯な笑いまでは良かった。そんな本来の彼女らしい決して純真な娘ではない感じ(本人に言った事は無いが)で……明らかに邪な悪戯心を持っている辺りが、僕は大好きだったから。

「え、…………ん!?」


 ――でも、悪戯にしたってこれは酷い。だって、こんなのは一生忘れることが出来ないじゃないか。蝉音が鳴り続ける中で、時間だけは淀んで流れない感覚がした。

「ん……んふふ、蓮の顔、真っ赤だね……」

「……夕日のせいです、きっとそうだ」

 ……突然のキス。そりゃもう眠り姫だって起きるに違いない、まことに男らしい突然さ。どこか甘い感覚だけ残して、ゆっくりと離した彼女の顔も夕日に照らされて赤く。

「ふふ、修介に見られたら怒られるかな? なにせ、あなたの『王子様』だものね?」

「ははっ、よく覚えてるね。美奈は……『悪い魔法使い』、だっけ?」


 ――それは、古いセピア色をしたような思い出。幼稚園で出会った修介と僕、そして美奈は毎日のように一緒に遊んで。或る時、童話の『ごっこ遊び』をしようと言ったのは、確か美奈その人だったと思うのだが。


「そ。だって、お姫様よりも格好良かったんだもの」

 美しい姫の役から、美奈は真っ赤な顔をして逃げだして。仕方がないから修介と僕がじゃんけんをして……最初に必ずグーを出す癖を見破られた挙句に、僕が『眠り姫』の役を賜ったのだった。もっとも修介が演じる所の『王子様』は、あまりにシュールで……今でも本人の前では禁句の一つではあるが。

「……楽しかったな。もう、お姫様は御免被りたいけど」

「うん! あはは、二人共、ちょっと似合ってなかったわねぇ」


 思い出は色褪せても、なお煌めいて。二人で同じ記憶を思い返せるのは、これ以上無い幸せだと思えた。こういう思い出は、他にも数え切れない程ある。高校に入って僕と美奈が付き合い始めても、修介を交えた三人の関係はほとんど変わる事は無く……

――だからこそ。満たされていたから、失いたくなかったのに。


「……廉? ほら、またそんな顔する」

「え? あっと、ごめん……」

 僕を見上げる美加の眼は、薄く潤んで。一度は俺に合わせて起き上がった身体も、今はベットに戻ってしまい……握っていた手は、もはや握力を無くしていた。思わず、息を呑む音を押し殺す。その微笑みも、悪戯っぽい目も声も……何も変わらないというのに。

――それだけで。もう残りなど無いと、気付いてしまった。


「ふふ……きっとね、魔法使いも……お姫様に恋をしたんだと思う」

「うん……」

「あ~あ、童話みたいに魔法が使えたら……」

 何かに憧れ、囁くような声は。弱った僕の心を酷くざわつかせる。それでも……最後まで気丈な彼女の前で、僕が弱みを見せるわけにはいかなかった。

「いいよ」

「え?」

「魔法、僕が叶えてあげるから」

 この世に魔法があるのなら、こんな時に使えないなんて嘘だ。支離滅裂な言葉かもしれないが、僕は本気だった。美奈は、やっぱり少しだけ驚いた顔をしたけど……

「じゃあねぇ……廉?」

「……ああ。ほら、目を閉じて」


 言いたく無かった。それが彼女の願いでも、口にしたなら、もうこの時間は終わってしまうから。でも、美加は嬉しそうに……華のように笑って。ためらう事なく、その瞼を閉じてしまった。

「――ごめんね」

 今度は僕から。軽く重ねた唇は、すこしだけ暖かく――――




 
<続く>

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.208 )
日時: 2012/04/06 20:13
名前: Lithics

 
『望夏の灯』-3

 ――それで、御伽話はお終い。結局、僕は魔法使いでも王子で無く、彼女は眠り姫では無かったのだ。そんな微妙にずれた配役のまま、エンドロールすら無いその幕切れを……僕はただ彼女の傍で見つめる事しか出来なかった。


「おい……廉? お焼香、お前の番だぞ」

「ぁ……ああ、分かった」

 通夜の会場は、彼女の親族や弔問者で溢れかえっていた。高校のクラスでも、地元でも明るく人気者だったのだから当たり前なのかも知れないが。そこは哀しみに包まれてはいても、美奈の思い出話をする人々は皆、柔らかな顔をしているのが印象的だった。

(やっぱり……僕には過ぎた相手だったかもね、君は)

 焼香に向かう途中にすれ違う、どの人の顔にも薄い涙の跡。チラリと振り返ると、僕の隣に座っていた修介の眼にも……僕には隠したかったのだろう、それは見なかった事にして。控えめに焼香を焚く間にも、どんな言葉を掛けていいのか分からず……結局は迷いだけを残して席へ戻った。

(…………)

 正座をして、雑多な人々の会話を聞く。読経は既に終わっていて、誰とも会話をしない僕は唯々そこに居るだけ……彼女の事を考える事さえ無かった。

(なんで、泣けないんだろ……僕はこんなに……)

 こんなに、どうしたというのか。今ある感情が哀しいのか、それとも喪失感なのか。自分の事なのに全然分からなくて、自分が空になるようで……酷く不安になる。それでも独り変わらず、能面のような顔で座る僕は周りにどんなに見られているのか……そんな事を考える自分は、先ず自分から嘲笑されるべきだと思った。


「ごめん、修介。やっぱり今日は帰るよ」

「……そうか。調子悪いなら、ちゃんと休めよ」

「分かった……それじゃあね」


 居た堪れなくなって、今度こそ通夜の会場から逃げ出した。外に出た途端に、夏夜の空気が肌に纏わりつく。普段なら不快である感覚も、それも彼女との思い出に繋がるからか……自分が空っぽになるような不安を和らげてくれる気がした。だから今は、自分を卑下しなくても済むように、美奈の事だけを考えていたかった。

(……もう一度、見に行こうかな)

 そして。ふらりと、誘われるように海岸へ。僕らのお気に入りの防波堤へと続く道には、それこそ数えきれないほどの思い出がある。手に取るように思いだせるモノから、唯々笑い転げただけで、その理由を思いだせないようなモノまで……一つ一つが、大切な思い出。あとで修介にも訊いてみようと考えながら、ゆっくりと歩いた。


○●○●

 ――相変らず、海辺の火群は綺麗だった。その絶えず揺らめき、むしろ心許ない程の儚さが。灯した人の気持ちや、込めた願いなんて知りようもないのに……それこそ揺れる灯のように、僕の心を揺らす。

(…………)

 ついに、言葉も無くした。確かに在るはずの想いは、ちいさな心から少しも出る事なく……それは僕自身だけしか伝わらない。だからなのか、言葉にも表情にも出来ない感情は。此処に来ると、どうしようもなく溢れてきそうで辛かった。

「あれ……? あ、もしかして」

「……え?」


<続く>

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.209 )
日時: 2012/04/06 20:16
名前: Lithics

『望夏の灯』-4

 ――不意に、懐かしいような声がした。そんなはずは無いのに、美奈の声に似ているような。瞬間、凍りついたような時間を経て、慌てて振り返った先には。

「ふふっ、やっぱり。あなたが、廉クンだよね?」

「……! 君は……どうして?」

 その女の子は、気付かぬ内に僕の後ろまで来ていた。揺れる灯に照らされた柔らかい笑みが、彼女が美奈に似ているけど別人である事を教えてくれている。しかし、今僕の名を……唖然とする僕を見て、彼女は慌てて謝って来た。

「あっ、ごめんね、美奈ちゃんに聞いてたから……私ね、母方の従妹なの」

「従妹……そっか、なんとなく似てるから吃驚したよ」

 顔立ちも、背格好も同じくらいで。ただ雰囲気だけが微妙に異なる彼女だけど……今まで通夜にいたからか、その雰囲気に少し違和感を感じていた。

「うん、私も……美奈ちゃんの話の通りだから驚いちゃった」

「はは……変な話を吹き込んで無いといいけど」


 悪戯っぽく笑う顔は、美奈のそれに近くて……思わず苦笑いを。美奈にこんな年の近い従妹が居たなんて知らなかったけど……なんとなく地元の人では無いような気がしたから、それも当然かもしれない。

「……ふ~ん、此処が美奈ちゃんのお気に入りの場所、か」

「ん……? そうだね、あいつから聞いてた?」

「うん。でも来た事はなくって……さっき御通夜で、修介クンって子に詳しい場所を聞いたの」

「ああ……」

「ふふ、なんとなく分かるな。綺麗だものね、此処からの眺め……」

 それきり、会話もなく浜辺の灯を見ていた。僕の知らない美奈を知る機会ではあるけど……その美奈と似通った彼女の顔がどうしても見て居られなくて。結局、意外な形で沈黙を破ったのは彼女の方だった。


「ね……あなたも、魔法掛けられたんじゃない?」

「え……?」

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。思わず振り返って見た彼女は、やはり柔らかく微笑んでいて。それは決して、冗談を言うような雰囲気ではなかった。

「あなたも、泣けないんでしょう? だから……」

「あ……」

 唐突に、違和感の正体に気付いた。彼女から伝わる哀しみに反比例するかのように、その表情は酷く穏やかで。通夜の会場にいた人達と異なる点と言えば、その頬に涙の跡が無いという事。

「子供の頃、美奈ちゃんの家……叔母さんの家に遊びに来たんだよね」

 静かに話し始める口調は、懐かしさに溢れた……別の意味で泣きそうになるような優しい声。そんな声のせいか、語る彼女の瞳の奥に、居ないはずの美奈が映っているような気がした。

「でね? 理由は思い出せないけど、私が酷く泣きだした事があって。その時に、美奈ちゃんが傍に来て言ったの。『実は私、魔法使いなの! だから、もう泣かなくてもいい魔法を掛けてあげるね』ってね」

「…………」

 くすくすと笑う彼女の横で、僕は呆然とそれを聞いていた。きっとそれは、美奈が演じた『悪い魔法使い』の事だろう……『悪い』の単語を端折るあたり、美奈らしいが。

――思い出した。その『魔法』は……一時期は泣き虫だった僕に、美奈が最も得意とした決まり文句。『眠り姫』を魔法で眠りへと閉じ込めたくせに、もう泣かないように励ましてくれる……そんな矛盾した、役でさえ隠しきれない悪の魔法使いの優しさ。


「……廉クン?」

「は……はは……うん、そうだね。僕も、そのせいで今も泣けないんだ、きっと」

「……そっか。ふふっ、今になると迷惑な魔法よね」

 初めて正面から顔を見合わせて、二人で笑う。かなりの偶然で出くわした僕らだが、案外、美奈の手でも加わってるのかも知れないと思った。同じ『魔法』で心に想いを閉じ込められた僕らは……きっと周りよりは長く彼女の事を想うだろう。

「さてと……じゃ、私は行くね」

「うん、さよなら……」

「じゃあね!」

 ひらひらと手を振りながら、背を向けた彼女に。その名を訊こうとして、やはり障りのない挨拶を返すだけに留めておいた。美奈の面影を追う事に、大した意味など無いだろうと、今ならそう思えたから。元気に去っていく背中が見えなくなってから、僕もちらりと浜辺の灯を一瞥して、それに背を向けた。

<続く>

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.210 )
日時: 2012/04/06 20:19
名前: Lithics


『望夏の灯』-5

 翌日。僕はもう一度、浜辺に赴いていた。本格的に盆の期間に入った為か、昨日まで砂浜を覆っていた迎え火の灯りはすっかり無くなっていて。宵闇が落ちてくる、群青色と黒が混じり合った空には、明るめの星光が揺れている……そんな曖昧な時間。

「……ちょっと遅くなったけど。美奈、これなら迷わず来れるだろ?」

 服が汚れるのには構わず、砂浜に横になって。傍に置いた『迎え火』の蝋燭一本が、広い浜辺で唯一の灯り。だから、先に逝った人を迎えるには迷わなくて良いだろう。

(…………)

 瞼を閉じると、心は不思議なほど穏やかで。相変らず涙は出ないし、彼女が居なくなったことが哀しくない訳ではないのだけれど。思いだしたのだ、それもこれも、美奈が望んだ事。『悪い魔法使い』に掛けられた悪質な魔法だ。

「ははっ、惚れた弱みかなぁ……」

 ……いつか、この閉じ込められた想いも薄れていくだろう。そうして魔法が解けて、少し大人になった僕が、彼女の為に泣ける日もきっと来る。だから、それまでは。七夕の伝説のように、一年に一度だけ帰ってくる恋人と言うのも……美奈ならロマンチックで好きなんじゃないだろうか。

(本当に来たら、ちょっとホラーだけどね)

 半透明になった彼女が不機嫌そうな顔をしているのを想像して少し笑えた。ホラー映画や怪談の類が大嫌いだったのだから、自分がなっていたら酷い顔をするに違いない。

「ん…………」

 浜が吹く。生温かい感触に目を開けると、大して時間は経っていないのに空も浜辺も真っ暗になっていた。波との音だけが世界の全てで、眠ってしまいそうな心地好さに包まれる。そうして、波間に漂うような時間の後。

――横に置いた灯が、に煽られて。ひとしきり揺らめいた後、ふつりと消えてしまった。

「……ああ、おかえり、美奈」

 
 その直前、揺れる火の温もりが。僕の隣に座って笑う、彼女の温もりを感じたような……そんな幸せな幻視をもたらしてくれた。また目を閉じれば、やっぱり彼女が隣にいるような気がして。そのまま特に何をするでもなく……灯りの絶えた浜辺で、夜が明けるまで。



 浜辺に灯の揺れる夏は、大切な人に会える。忘れられないのが弱さでも、それでも良いと思えたから……僕は夏を待ち望む。

 ――じゃあ、また来年も。出来るなら、君と二人で。

(了)


※突然参加させて頂き、迷惑でなければ良いのですが。では、今回に参加される作品を拝読させて頂くのを、楽しみにして居ります!

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.211 )
日時: 2012/04/08 14:27
名前: 白波 ◆cOg4HY4At.
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11906

 彼は何としてもこの闘いに勝ち抜かねばならない。
 それが今まで彼が生き残るために蹴落とした人達に対する贖罪で、勝ち抜かなければ彼はほとんど確実に、この燃え盛る太陽によって水分を消し飛ばされ命を落とすからだ。

『HI・KA・GE!』

 事の始まりは、今日という日の有り得ない暑さと、それによってクーラーがショートして壊れたことにあった。
 それによって部屋の中も、サウナのように気温は上がり続け、熱中症で倒れる人達が何百、何千と出て、建物の中に居るのが危険と判断した彼、白瀬京を含む暦市民達は日陰を求めるために街中を走り始めた。

 走ることは水分の消費を早めるため、危険ではあるのだが、どのみち早く日陰に入れなければ彼たちは生き残る事が出来ない。
 だからこそ彼らは、ありったけの水を持ち日陰を捜索するのだ。

 そして、数分を掛けて川へ着き京が目にした光景は、バトルロワイヤルさながらの光景だった。
 僅かな日陰を得るために競い合い、勝者が敗者を日向にどけ、持っている水を得る。
 そんな弱肉強食の光景が京の目の前には広がっている。どうやら、そう簡単に生き延びることは出来ないと言うことらしい。
 ならば当然彼もこれに加わる。加わらなければ自分の命は無く、対多数というシチュエーションは彼にとってはあまりにも有利すぎる――。


 河川敷の橋の下で行われている戦争。

 そこに、上半身は胸から上を、下半身は太腿が半分以上見える服装をした男が一人。

 後ろには数多のペットボトル、それが紐のような物に繋がれ、男にそれを持たれている。

 その姿は、数多の猛獣をその手に従えているようで、かとすれば意思を持っているかのように、地面を蠢くその物体達は、メデューサの持つ蛇の髪のようにも見えた。


 京が纏う、その異質な雰囲気に、暴動事件のような殴り合いが起きていた橋の下の人間達は一時的に停止して、京がいる方向を見る。
 一目視ただけで解る、自分とは次元が違うその雰囲気に、その中の数十人はプライドを捨て、結託して京を完全に包囲しながらジリジリと近付き、彼をこの戦いから一刻も早く落とそうと、即興でアイコンタクトを取った後、一斉に京へと走り出し襲いかかる――。

 京がその右手を振るうと、右からは主人を襲われて怒り狂う水の獣が襲いかかり、京がその左手を振るうと、左からは自分の髪となる水の蛇が身を守るために襲ってくる相手へと飛ぶ。
 その怒りに、その牙の矛先になった京を阻む人間達は、一人残らずその餌食になる。
 結果、彼ら程度の人間が猛獣使いの牙から、メデューサの蛇から逃れることなどは出来ず、ましてや、そこに作られた神の領域を只人情が犯して良い訳もなく、『白瀬 京』という突如として現れた、ただ一人の少年に触れることすら出来ず、襲い掛かった数十人は吹き飛ばされた。

 その光景を目撃して、唖然とする彼に襲いかからなかった懸命な人間達。
 その中には圧倒的な存在を恐れて、別な日陰を求めて去って行く者、無謀にも京に挑もうとする者、人が減った日陰でひとまずは傍観を決め込む者がいた。

 当然ながら、京に挑む人間は実力差を弁えない無謀な弱者。
 どうせ自分が勝ち残れないことに変わりはないのだが、愚かにも京に襲いかかることで更に自分の命が短くなる。
 先程のように気絶させられた後に日の元へと晒され、その体内を巡る水分を燦々と降り注ぐ日光によって強奪と呼べるようなレベルで奪われていった。

 そして数十分後、京などの働きによって確実に三桁はいたであろう日陰を求める軍団は、五人までに減った。
 その中には当然京も含まれるが、序盤に雑魚とはいえ複数に狙われることが多かった京はその五人の中では一番疲労が溜まっている。
 それ故か否か、疲労が溜まっている京には一人が付き、京と同程度の実力があるかもしれない『那須 一夜』という京と同じ程度の男には残る二人が付くことになった。
 日陰の大きさを考えれば、五人になった今、最早争う必要は、無駄な血を流す必要はないのかもしれない。
 だが、『白瀬京』と『那須一夜』は自分が蹴落とした人間達にせめてもの償いをするために頂点を目指す。
 これは理屈などではなく、自分の誇りを、課せられた使命を、この二つを果たしたいという思いを尊重してのことだ。
 それ故に二人は、残る三人を敵に回した。

 これが暦市の歴史に後に刻まれることになる『師走橋の戦い』という戦いになることを、此処に居る少年少女達は今はまだ知るよしもなく、熱気に耐えながらも頭を冷静にして自分が生き残る方法を考えていた。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.212 )
日時: 2012/04/08 14:30
名前: 白波 ◆cOg4HY4At.
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11906

 無論、京が相手する人数は一人だが、その一人は弱いという訳ではない。
 むしろ、二対一ではなく、一対一の勝負になるために三人の中では一番強いであろう『湊 善花』という少女が相手となった。

「流石にあなたも疲れてきたんじゃない?」
 そう言ってこの相手、善花が構えた得物は、よく研がれて、容赦なく降り注ぐ真夏の太陽を浴びて、眩しく感じる程の銀の光を放つ、二本の鉄製の鋏。
 彼女は今に至までにも、何度か切れ味の悪くなった鋏を交換しているために、その所持している数は計り知れない。
 これは、既にペットボトルの本数を晒している京へのアドバンテージとなり、少しだけ彼の腕を躊躇わせる。なぜなら、一斉攻撃を仕掛けるは良いものの、大量の鋏が彼女を防御する盾となりかねないからだ。
「体力が落ちようとも、俺は負けれないんだよ……。御託は良いから掛かってこい」
 常人離れした体力を持つ暦市民。中でもこの白瀬京はトップレベルの体力と強さを持っているのだが、この炎天下で長時間動き続けていたとなると、流石に息もあがるようで、その語気からも疲れが感じられた。

 そんな彼に敬意を表したのか「じゃあ……行くわね」そう言って水分が足りなくなる危険性も省みずに、全速力で京の元へと駆け出す善花。
 彼女自身の速さもさることながら、彼女が持っているのは重いとはとてもいえないような獲物、鋏。
 その鋏が何本入っているのかは外見では分からないが、その身体が京よりも軽いことは確かで、距離を取らせることも許さずに、一瞬でその鋏を煌めかせて京の懐へと飛び込んでいく。
 今までも何度か他人にこの速さで詰め寄る度に多少なれども驚いていた京だが、自分にやられてみると防御どころか認識すら遅れてしまうような彼女の残った五人の中でも圧倒的に速いそのスピードに戦慄した。

 だが、当然戦慄するだけで何もしない京ではない。
 その眩い銀の光の動きを頼りに攻撃の予測をつけ、光が自分にふれる前に自分の身体を、重心を後ろにずらしながら右小指第二間接までを、繊細かつ素早く曲げる。
 すると、第一関節と第二間接に繋がれた、狂犬を縛り付ける紐が一気に引かれて、主人に光が当たる前に、害を為す光を弾き、それと同時に善花の腕も弾いた為、彼女に僅かながら隙が出来る。
 当たり前のことだが、その隙を逃す京ではなく、左腕を横向きにして、虚空にビンタを放つと左手に繋がれた全ての紐が反応し、合計十六もの攻撃が一斉に善花の左足を襲い、攻撃直後のため跳んで避けることも叶わなかった善花の足にそれらは全て当たり、左足を砕いたように見えた――のだが違った。

 それらは当たった瞬間に中身が水で詰まったペットボトルと、何か硬いものがぶつかったときに生まれる重くて鈍いような、だけども少し高さも残したような独特な音と共に物によっては上空へ、物によっては下方へと弾き飛ばされる。
 これから考えるに、善花の足には鋏が入っていたらしく、それに京が放った十六もの攻撃は衝撃を分散され、スピードが一番の強みの彼女に甚大なダメージこそ与えるも、これが決定打になることは無く足を押さえながらも善花は立っていることが出来た。
 しかし、今の攻撃で与えた足へのダメージはやはり深刻なもので、左足は充分な働きをしていなく、立っているのがやっとのようで、この足で先程のような超スピードでの攻撃を撃ち出すことは出来ないことは明白だ。

(これはマズい……だけど!)
 そう思った彼女は、出来るだけ使いたくなかった策に出る。
 この暑さでも、肌の露出が少ない服を着て、決して顔以外を日光に晒すことがなかった彼女が服を――その手で裂き、下に穿いてある黒いスパッツと、バスケの時に付けるようなユニフォームの姿になる。

 花を隠していた蕾は花開き、姿を現す真っ白な花弁。
 そして、今日の照りつける白い日の光を、そのまま吸収したのではないかと思わせるようなその肌を露出すると共に、何かがぶつかり合うように、低くこの場に鳴り響く轟音。
 それはこの二人の戦いに終戦を告げるように大きく鳴り響き――その音と共に、善花は“先程と何ら変わらないような、むしろ速くなっているようなスピード”で京の元へと跳ぶ。

 力を入れているのは、ほとんど右足だけで、走るというよりも跳ぶという表現が似合うような距離の詰め方だというのに、そのスピードは先程を凌駕する。
 それ程に大量の鋏が服には仕込まれていたらしく、その重さを無くして軽くなった今の善花は、まるで白い光を放ち飛んでいく流星のよう。
 その光は目で追うことすら難しく、気付いた時には、右足だけでも認識が追い付かないようなスピードでの攻撃を、がら空きになっている腹への突きを京へと放っていた。

 その攻撃。とてもではないがペットボトルを付けた紐を右腕に十八本、左腕に十八本付けている京がかわしきれるものではない。
 善花の放つ神速で渾身の一撃をバランスを崩しながらも、避けようとするのではなく、右腕を思い切り振り、腰を捻りつつ当たる面積を少なくすることを目的として動くことによって、柔らかい腹に突き刺さり内臓へその攻撃が届くことはなく、背中の肉を一部分持って行かれるだけで済んだ。

 しかし、思い切り回避のみに専念した京はそのまま倒れ込んでいく。
 倒れ込んで大きな隙が出来た京に、善花は止めを――さすことは叶わず、鈍い音が響いた後地面に倒れ込んだ。

 倒れる直前に京がした行動を覚えているだろうか。
 そう、彼は避けるときに、倒れる直前に思い切り腕を振った。
 腕を振ることによって、連動された右腕の十八の武器が左側へと動き、その半数が止めをさしにきた善花へと当たり、彼女を気絶させたのだ。

『勝ちが目前に迫ったり、慢心がどこかにあれば人には隙が出来る』

 自分が生き残るためには、あの行動しかとれなかったのもあるが、そのような心理も利用しての京の勝利だった。

 これを狙ってはいたものの、上手くいったことに京は安堵の息を漏らし「ふう……後は一人か……」と、横を見ながら言う。
 そこには二人を一人で相手して、その両方を京とほとんど同じタイミングで倒した猛者が一人、仁王立ちで悠然と立っている。

『那須一夜』対『白瀬京』

 これが『師走橋の戦い』最後の勝負となる。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.213 )
日時: 2012/04/08 14:33
名前: 白波 ◆cOg4HY4At.
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11906

 最後の戦いを始める前に、両者は少ない言葉を交わす。

「やっぱりお前が相手か。じゃあ、とっととおっぱじめようぜ」

 二人が言ったのはそれだけだった。

 一夜が構える武器。それは独自の改造によって、威力を異常なまでに高めた『水鉄砲』
 加えてここは川がある橋の下で、一夜の水鉄砲『水神の激流“ポセイディア”』の弾数は無限と言って差し支えなく、状況的に有利なのは一夜の方だ。

 だから、一夜は迷うことなく満タンにしているその水鉄砲の引き金を引き、京に向けてその水を飛ばす。
 その攻撃をヤバいと思った京は、左のペットボトルを総動員させて十八本の壁を作る。
 十八本を注ぎ込んだぶ厚い壁が崩されることは無かったが、その予想以上に高い威力で、完全にシャットアウトする予定だった一筋の水はペットボトルを押し、それに連動して京の左腕が上に上がる。

 ――だが、それは良い方向へと働いた。

 水流によって程よくバラけたペットボトル達、ペットボトルが上へと打ち上げられることによって、連動して上へ上がった京の腕。
 それから京がとる行動はただ一つ。
 腕をそのまま振り下ろすことによって、上がった十八本全てを一夜へ向けた攻撃にすることだ。
 審判の手を下し、一夜へと向かっていく十八のペットボトル。
 その攻撃範囲の広さから避けることは叶わず、確実に二、三本のペットボトルは一夜へと当たるルートへ入っている。
 それを一夜も理解しているのか、彼がその場から動くことは無い。
 ただ、ポセイディアに入っている水を半分近く注ぎ込み、剣を振るかのように斜め上から来る自分に当たりそうなペットボトルを薙ぐ。
 結局ペットボトルは当たらずに地面へと落ち、地面に小さなクレーターを作るだけに終わり、一夜を傷つけることはなかった。

 先攻後攻を交代するように、次は一夜が反撃に出た。
 まずは更にペットボトルが来ないように川がある後ろへと跳び、距離を取る。
 そして、高々と振り上げたポセイディアに入っている全ての水を使い切り――水の剣を振り下ろす。
 その剣を振り下ろすスピードは、まさに神速。
 高い水圧と充分過ぎる速度。この二つを両立させた攻撃は、京を真っ二つにして斬り殺さんとばかりにそれは頭上へと迫って行く。

 善花の攻撃程のスピードは無いため、右へと半身分ずれて、その剣を避けることは容易とはいわないまでも、充分に可能だったのだが、水の剣が地面に叩きつけられた時に巻き上がる砂埃で視界を奪われ、一瞬とはいえ隙が出来てしまった。
 その隙に、一夜は後ろの川から水を補給し、再び水が満杯近く入ったポセイディアの引き金を引く。それをすぐ戻し、間髪入れずに再び引く。それを繰り返す。何度も、何度も。満杯近くまで入っていた水が半分以上無くなるまで引き続ける。

 それらは大量の水の球となり京を襲う。
 ゆうに二十は越えているその球に対処するために、京は左手をまるでピアノを弾くように目まぐるしく動かす。
 演奏者の意志の通りに音符は宙を舞い、水の球とぶつかり合い、それらが奏でる協奏曲。
 少し高い音と、宙を舞う水。それよりも高く打ち上がり、日光という照明に照らされ、光の絵画を作り出すペットボトルという名の音符。
 幻想的なその光景に『那須一夜』という観客の目は一瞬奪われてしまう。
 ――それが戦闘中であるにも関わらず。

 そのタイミングを見計らったように、音を紡ぎ、奏でるその腕は『終焉の協奏曲“コンチェルト・オブ・ジエンド”』を奏でる。
 右腕を振り上げ、左に繋がれた二本以外全てを宙へと浮かせる京。
 そして、それらがちょうど良いぐらいの高度まで上がった時、京はピアノを強く鳴らす。
 同時に一夜を包囲し、向かっていく三十四の攻撃。
 ポセイディアにより前方の物だけでも防ぐが、到底全てを避けきることなど出来るわけもなく、鈍い音と共に地面へと崩れ込む。

 それと同時に地面へと叩きつけられたペットボトルはコンチェルト・オブ・ジエンドの衝撃に耐えきれずに破裂し、中に入っていた太陽光によって熱せられた水が上空へと飛散する。
 それらの大半は一夜を囲うように円を作り、重力に従って地面へと落ちて乾ききった地面に吸収されていく。
 そして、衝撃で少し別の方向へと水滴となって飛んだ残り少数は、宝石のように光り輝き、地面へのまだら模様と、反射によって出来る虹を、まるで勝利を祝うように創り出した。

 それを見た京は、初めてこの瞬間に自分の勝利を理解し「ああ……終わったのか……なら、俺も休める……」と、左腕に括っている紐を手繰り寄せ、ペットボトルに入っているぬるいどころか、少し熱くなっている水を勝利の美酒のように一本飲んだ。
 そして、満足したように橋の下の日陰で眠るように倒れ込んだ。
 同時に『師走橋の戦い』も終戦を告げた。


 その後、京は冷たいとは言えないが、温いぐらいなら言えそうな夜に吹かれ、目を覚ましす。
 その開いた目に飛び込んできたのは熱中症の人を、瀕死の人を運ぶ大量の救急車。
 その光景を見ながら『あぁ、これは俺がやったことなのか……』ということを理解し、少しだけの後悔の念に晒されながら家へと帰る。
 雲一つ無い夜空には、デネブ、アルタイル、ベガで作られる夏の大三角形が綺麗に見えた。

『HI・KA・GE!』終了。

Re: 第四回SS大会 小説投稿期間 3/21~4/8 ( No.214 )
日時: 2012/04/08 14:53
名前: 白波 ◆cOg4HY4At.
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11906

               あとがき
 小説というものから何かを得るというものがありますが、僕は全てが全てそうある必要は無いと思うのです。
 現在のラノベとかもそのような作品がありますし、読書という行為によって少しでも笑わせたり、没頭させたり出来ればその本は、その文章は充分に意味のあるモノになると思うんですよね。
 まあ、何が言いたいかと言うと、この作品もそんな気持ちで書きましたよ。ということなんですが。言い訳っぽいですね。
 話は変わりますが、真夏の暑苦しい日。こんな日に体育などの授業があり、少しでも日陰にいようとしたことがあるのではないでしょうか。少なくとも僕はあります。
 そんな経験と、数年前にウイダーのCMで日向に出たら倒れるってやつあったな。という記憶を元に、この『HI・KA・GE!』は作られました。
 暦市という架空の舞台で行われる、ちょっと格好良くも、かなりはっちゃけた、かなりバカな人達のストーリーにクスリとでも笑ってくれたら、それはとっても嬉しいなって思っています。
 お題『海』で書いた『泳げない僕~~』も実はここが舞台だったりするので、これが累計二作目の暦市の物語となります。
 もう、ほとんどが僕の趣味みたいなに、終始はっちゃけていましたが、これからも白瀬君達の有り得ない日常を覗いて頂ければ幸いです。
 では、暦市で再びSSを書ける機会を貰い、こんな趣味百%の作品を読んでいただきありがとうございました。
                     白波

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