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- Re: 【募集〆】貴方の小説に感想を書こうか ( No.24 )
- 日時: 2019/07/02 21:48
- 名前: 書喰神 ◆ugFJcpBygw (ID: fhP2fUVm)
お待たせいたしました。
『VS人類』の感想
まず一通りを読みましたが、全体的に文章の肉付けが足りません。
何より、大元となる世界観の設定が曖昧過ぎです。
・冒頭にて
宇宙からの侵略者、壊滅一歩手前の地球の人類ときて、何故『新人類』を作り出すという結論に至ったのか?
『宇宙からの侵略者への対策』を普通に考えるなら、そもそも地球への侵入を防ぐために宇宙空間にての迎撃、あるいは大気圏突入直後の迎撃……つまりミサイルなどの遠距離兵器で地上に降り立つ前に抵抗しようとするでしょう。
あるいは既に侵入を許してしまったなら、成長に時間がかかる人類よりも、やはり大量生産に向き、誰もが使えて一定の威力を出す兵器か、あるいは爆弾のような大量殺戮に向いた威力の高い兵器を考えると思います。
そのための新兵器開発、というのならまだ分かりますが、いきなり『新人類を作る』という発想に至る経緯は?
誰が、いつ、どうしてそう結論を出したのでしょうか?
壊滅間近の人類を纏める指導者たちでしょうか?
そもそも、現在地球陣営はどのような状況なのでしょうか?
『地球には数えきれない程の宇宙人が降り立ち、人類は瞬く間に壊滅の一歩手前まで追い詰められてしまった。』
とありますが、それはどの程度の壊滅なのでしょうか?
世界中の国々が既に消えて、一部の国しか残っていないような状態?
地球同盟のようなものを作り、地球全土の生き残りが一ヶ所に集まり、防衛線を築いて首を引っ込めた亀のようにひっそりと暮らしているのでしょうか?
『追い詰められた人類』と聞いて、私が真っ先に思い浮かんだのが『進撃の巨人』の世界観です。
襲い来る巨人たちから自分たちを守るため、高い城壁で幾重にも防衛線を築いて、選び抜かれた戦士達で、その防衛線を守るように戦っている。
とても分かりやすい設定です。
『VS人類』の世界観ではどうでしょうか?
宇宙人たちから生き残りの人類を守るため、防衛拠点的な場所に避難しているのでしょうか?
作中の宇宙人たちの襲撃場面を見る限り、『壊滅寸前』とか『追い詰められている』などの状況が見得ません。普通に暮らしてたらいきなり宇宙人の襲撃が遭った、というように見えます。何故なら普通に子供が外を出歩いている時点で警戒の欠片もありません。
作中のベルと阿佐見の会話に『特に厳重な警戒態勢が敷かれている』とありますが、いったいどのような警戒態勢なのでしょうか? 現状は『敵の気配が無い』くらいしかその根拠が書かれていませんし、その後すぐに襲撃があったので『どのような警戒態勢があって、どのように突破されたのか』が分からないので、警戒態勢って本当にあったのか疑わしいくらいに見えます。
『壊滅一歩手前の追い詰められている人類』とは思えない防衛状態です。
軍は? 自衛隊は? 日本首脳陣は? 各国の首脳陣は? 各国での連携は?
人類が壊滅一歩手前という根拠の説明が全くないのに、いきなり『新人類』が出てくるのは読者が混乱します。
他の作品でのありきたりな設定だと、侵略者が持つ特殊な能力で既存の兵器は通用せず、対抗するには侵略者の肉体の一部を移植してその特殊な能力をを使えるようになった者たちしか居ない、だから軍を出しても意味が無い、みたいな設定ですね。
作中にはそういう世界情勢について、何の説明もありませんので、全く状況が不明確です。
・登場人物の身体的特徴
現状は年齢と身長くらいしか描写がありません。髪や瞳の色は? 瞳の形は? 髪型は? 服装は?
主要人物なら、最初の登場時にそれくらいの描写は欲しいです。
阿佐見 悟史が22歳で身長150cmと在り得ない低さだけど、何故それに対する追及が無いのか?
「“新型”だからか背が高すぎねぇか?」と発言しているが、じゃあ旧型新人類は全員身長がベル以下なのでしょうか? 173cmとありますが、女性として高いかもしれませんが、男女含めてなら特に意識するほどでもないと思います。
ベルが高いのではなく、むしろ阿佐見 悟史の身長が低すぎる点を言った方が良いのでは?
「身長は約173cm、私の素材となった人々の平均がそうだったらしい」
『約』と付いている割には一桁単位まで言うのは違和感。だったらただの『173cm』で良いと思います。『約』を付ける意味がありません。
・作中の「……」
商業小説では基本的に三点リーダ『…』を使用します。そしてそれは偶数での同時使用が一般的です。「……」とか「…………」とかです。まれに単体で使う作者様もいらっしゃいますが、本当にまれです。
・ユズ、阿佐見、ベルの関係
この作品は三人称視点で書かれています。一人称視点は主人公の心の機微が分かりやすいという特徴を持ち、三人称視点は登場人物の知識に囚われずに全体的な説明をしやすいという特徴を持ちます。
しかし、この作品は三人称視点で書かれているのに、様々な説明が全くありません。
ベルに説明するのを省略するのはまだしも、読者に向けて説明するのを省くのは、この手の特殊な世界観を持つ作品にはそぐわないと思います。
宇宙人といえば、思いつくのは『ウルトラマンの怪獣』とか、映画『インデペンデンス・デイ』や『メンインブラック』でしょうか。
しかし、それらの宇宙人とこの作品に出てくる宇宙人とでは全く設定が異なると思います。更に『新人類』というこの作品特有の特殊な用語も出てくるので、それらの説明は最初に詳細に書くべきだと思います。
宇宙人への対抗策などという人類存亡を懸けたもので、しかも1億人も犠牲にしたというのならば、それはもはや国家規模のプロジェクトだと思いますが、ベルが目覚めた場所にはユズしか居ません。他の研究者は居ないのでしょうか?
『そんな人類は自分たちに出来る最後の悪足掻きとして新たな人類を作り出した。』とか謳っておきながら、ユズ個人の研究なのでしょうか?
『地球の救世主となる存在』と言っておきながら、十全な警備の敷かれた施設で育てるのではなく、どんな関係者かも分からない阿佐見個人に預けた理由は? 簡単に敵に侵入されるようなただのマンションに住まわせる意味は?
仮にも『地球の救世主となる存在』と思っているベルに対し、あまりにもおざなりな対応に見えます。
まだ実力が十分に発揮できないなら大切に研究施設で調整すれば良いし、逆に直ぐにでも実戦投入するなら、国防を担う機関に渡して敵の情報を直ぐに入手できる環境に居た方が良いと思います。
何故、個人の、ただのマンションなのか?
・シュラベター族
『敵は黒い肌とこれ見よがしに隆起した肉体を持った二足歩行のトタゲのような姿をしていた。』
『これ見よがしに隆起した肉体』とはどんな肉体ですか? 恐らく『隆起した筋肉を持つ』みたいに言いたかったのでしょうが、これでは意味不明です。
もう少し言葉を意味を調べて、適切に使用しましょう。
ちなみに私の言葉を引用して変更しただけでは説明としては足りませんので、お気を付けください。
『トタゲ』とは何でしょうか? 『トカゲ』の間違いでしょうか?
・ベルの能力
戦闘段階『1人(危険)→10人』
いきなり作中に出てきましたが、これまでベルの能力について全く触れていないので、いきなり感が強く、その後の説明も全く無いので意味不明です。
身体能力が上がる? それは筋力だけ? 思考速度や肉体強度も? 肉体強度はどういう基準で上がる? 1人とは成人男性基準か、それとも犠牲者と言っていたから中には幼子も含まれるのか? デメリットは? 人数分食欲が増すとか、肉体に負荷がかかるとかあるのか?
そもそも一億人の力で戦うのと、近代兵器で戦うのと、核兵器を落とすのと、どう違うのか?
・ホワイトの思惑
ナイフを投げて、男の子を庇ったとは言えベルに刺さったのに「おいおい僕が何をしたっていうんだい?、君の気が障ることでもしちゃったかな?」というのはおかしいし、ベル自身もナイフの事は気にせず「宇宙人というだけで理由は十分だ」と返すのもおかしい。
「はぁー、君とは上手く付き合いたかったんだけどなぁ......しょうがないか、“敵”なら」
「まだ目覚めたばかりだからなぁ......殺すには惜しい」
後者が目的ならば『上手く付き合う』必要は無いのでは? ただ放置すればいいだけではないでしょうか?
そもそも日本の首都である東京に気軽に『厄害』が入り込んでいる時点で人類は既に詰んでいるように思えますが、『地球上において兵器含めて勝てるものが誰もいない厄害』たちが、どうして一気に地球の人類を絶滅させてしまわないのか。ちゃんと設定は考えてありますか?
残念ですが、現状では完全なる設定不足、描写不足でリアリティのある世界として成り立っていません。
これがコメディ路線ならば問題は無いですが、シリアス寄りの戦闘モノというジャンルならば詳細な設定は必要不可欠です。
取り敢えず、現状の文章に肉付けをするところから始めてみてはいかがでしょうか?
折角の三人称視点なのに、あらゆることに対して描写が少な過ぎます。
姿形、場所、時間、思考(原因、経緯、結果)、動作など、書き足そうと思えば幾らでも書き足せるはずです。
■総合評価:『論外』
作者は自分の作品の雰囲気に呑まれては駄目です。常に客観的に見て、この表現ならば読者に理解して貰えるだろうか、という点を考えながら執筆することが重要です。
この作品には、作者の頭の中の世界を文章として描くという努力が感じられませんでした。
物語の開始時、宇宙人たちはどのような状態なのか、人類はどのような状態なのか。それらの詳細が決まっていれば、自ずと世界観は見えてきます。
私にはそこの部分を曖昧のまま見切り発車してしまっているように見えました。
設定不足は作中に矛盾を生む結果になりやすいので、気を付けましょう。
最後に、地の文をもっと大切にしましょう。
小説とは一つの世界を生み出すに等しい行為です。作者は神に例えられることもありますが、正しくその通り。世界を生み出すのは漠然とですが非常に大変な事だとは分かりますよね? それも当然、一つでも不自然な所があれば、世界として成り立たないのですから。
特に世界全体を舞台にした物語ならば、詳細な設定は大事でしょう。
キーワードは『詳細な設定』です。
もう一度、ご自身の作品の設定を見直してみるべきだと思います。
正直に言えば、言いたい事はもっとあるのですが、切りがないのでこの辺りで。
以上で『VS人類』の感想を終わります。
指摘について、この部分の意味が分からない等がありましたら質問をして下さい。
それでは、長文失礼しました。
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