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- Re: 【募集〆】貴方の小説に感想を書こうか ( No.45 )
- 日時: 2019/08/03 11:16
- 名前: 書喰神 ◆ugFJcpBygw (ID: 1Fvr9aUF)
モンブラン博士さんの感想に時間が掛かりそうなので、先に千葉里絵さんの感想を書きます。
それでは長らくお待たせいたしました。
『藤の如く笑えよと』 感想
・プロローグにて。
『そんな時分に日嗣の御子、つまり若宮が妻を取ることになった。』
皇族の妻は『妃』と呼びます。本文の雰囲気的にも『妻』という俗な呼び方よりも、『妃』という高貴な呼び方のほうが適しているのではと思います。
次。
『藤花は夏ノ宮を若宮から授かった。』
『授かる』は子宝や地位など、「金銭に直結しない大切なものを与えられる」という意味合いが強いので、この場合は『賜る』が適していると思います。
次。
『ー懐刀で刺し貫いた』
ダッシュ『——』は二つ繋げて使うのが一般的です。急展開など、勢いを付けたい場面に使う事が多い記号ですが、強調の仕方にも色々と方法があるので、勉強しましょう。
次。
『今までの若宮の夏ノ宮へのお通いは、藤花の証を得るためであった。』
『藤花の証』という省略された言葉に違和感。『藤花が○○であった証』と言うならば問題は無いのですが、この時点では藤花の正体は読者に隠したい思惑もあるかもしれません。
なので『藤花が人外である証』、『藤花が化生の者である証』など、正体を明かさないように違和感のない言葉を考えてみて下さい。
・序章にて。
『人の事を本当に美しいと感じたのはまだ六つ七つと幼い時だった。』
桜の精と思うような少女を見た強烈な思い出なのに、『六つ七つ』と歳を曖昧に言っている事に違和感があります。
もしくは、強烈な思い出であっても記憶が薄れてしまうくらい昔の思い出ならば、ずっと昔のことである事をほのめかす一文が欲しいですね。ただ、現状の文章だとかなり強烈な思い出みたいなので、年齢は断定するくらいで良いと思いますが。
次。
『この友垣が私を連れて行くのは大抵、大人達に行ってはいけないと言い聞かせられている場所だった。
その日もとうが私を連れて行ったのは、大人達に近寄るなと言われていた領境の湖だった。
だが、とうが私に見せてくれる物は決まって美しかった。
その日もとうは見たこともない様な景色を見せてくれた。』
『その日も』が近い場所で連続して使われていると文章的に不自然になります。文章の構成を変えてみて、同じ表現が重ならないようにしましょう。
付け加えて、『だが』を使っている箇所の対比に違和感があります。
現状では端的に見て
『大人達に行くなと言われた場所』だが『美しくて見たことない景色』
となっていますが、これが
『大人達に行くなと言われた場所』だが『そんなことを忘れてしまうくらいに』『美しくて見たことない景色』
と、「だが」のあとは前者の否定から入るのが自然です。それを省略する手法もありますが、現状では不自然さが目立つのでやめた方が良いでしょう。
意識してみてください。
次。
『湖畔には、もう散っている筈の桜と今が盛りの藤の花が咲き乱れていた。』
もっと場面の情報が欲しいですね。大切な思い出の場所ならば、鮮烈に風景が目に焼き付いているはず。その「大切な思い出」「強烈な思い出」というものを強調させるために、どのような光景なのかをもっと詳細に描写してくれると嬉しいです。
更に言えば、この作品の作風に合わせるために、古風で美しい言い回し、というものを引用するとより良くなると思います。
古語や、ひらがなの擬音などですね。
次。
『そして、湖の向かいには天女の様な少女が居た。』
『まるで桜の精の様だと思った。』
文章と文章が近しい場所で、同じ『人の印象』を別々の表現をするのは違和感があります。
「天女」と「桜の精」、別に両方を感じたというのならそれでもいいですが、その場合は「天女」と感じた理由が作中にはありません。最初から「桜の精」と思わなかった理由は? 最初に「天女」という例えを持ってきた理由は?
○○だから天女に見えた。そして衣装や場所も相まって、桜の精のよう「にも」感じた。というような文章だったらまだ自然に感じます。本文に合うように考えてみて下さい。
次。
『顔こそ見えなかったが、此方に微笑み掛けている様に感じる愛らしさがあった。』
ちょっと意味が不明です。雰囲気は伝わりますが、それだけで情景は思い描くことができません。顔は見えないのに「微笑み掛けている様に感じる」、そして「愛らしさ」があると……。それはいったい別の言葉で表すとどういう感じでしょうか?
例えば、これは微笑むというよりクスクスと笑う感じですが「口元に手をやっていて肩を震わせる」など、顔が分からないならば、「動作」を描写しなければ読者には「桜の精の様な少女」が微笑んでいると思わせる雰囲気のある光景も、その愛らしさも想像出来ませんし、伝わりません。
『微笑み掛けている様に感じる愛らしさ』という言葉を、動作や光景で表現してみて下さい。
ちなみに私には無理でした。『微笑む』というのはそもそも表情筋だけの動作ですし、それを顔を見せないで表現する方法、更にそこに愛らしさまで加える表現はちょっと思いつきませんでした。
次。
序章のこの場面は思い出なので、全部が全部過去形の「〜だった」みたいな「た」で終わる文章になるのは仕方ないですが、他の方の指摘にもあるように、それが続くと単調な文章の連続になってしまいます。
無理に現状の文章を変えろと言っているのではなく、それが三回以上続くようであれば、文章と文章の間に前後の文章に付随する修飾文や説明文を追加してみるといいかもしれません。
・一章 藤の花
『藤の花の綺麗な紫がちらと見えた。 まだ少しではあるが、咲いているようだ。』
この時、ちどりは何処に居たのでしょうか? 恐らく屋敷の中だとは思うのですが、明確な描写がありません。軒先? 縁側? 中庭? 玄関? 門の近く? 現状では「ちらと見えた」や「咲いているようだ」という表現から、あまり藤の花には近くない印象を受けます。読者が情景を明確に思い浮かべられるように場所の描写はしっかりしましょう。
次。
『ちどりは見とれていた。』
これは『藤の花』に見惚れていたという意味でしょうか。だとしたらその前にある「ちらと見えた」や「咲いているようだ」という文章に違和感があります。
これらは「この時点のちどりが居る位置」からは藤の花はよく見えない、という意味に見えます。
話かけられるほど近くにある藤の花を上記のように言うのは不自然です。
それとも、よく見えない位置から、よく見える位置に移動したのでしょうか? でしたらその事をちゃんと描写して下さい。
現状だとよく見えない位置に在る藤の花に見惚れて、よく見えない位置に在る花に話しかけるという、かなり変な人になっています。
次。
『今日はちどりが宮仕えのため中央に行く日なのである。』
若宮の妃決めも兼ねているというかなり重大な中央行きの日というのなら、相当に着飾っていることでしょう。それを「紅梅匂の衣に身を包みながら」の一文だけ、というのは寂し過ぎると思います。地の文で書くのでも、山吹の熱意のあるセリフの中に入れるのでもいいので、ちどりの容姿や衣装の描写をもっと追加して下さい。
衣装が豪華であればあるほど、その宮仕えがどれほど重要な物であるかを読者に印象付けることができます。
そして、ちどりの容姿を詳細に描写することで、あとに出てくる妹との対比もし易くなります。
更に言えば、どれだけそれが四大貴族にとって重要なのかを歴史などの別の観点から説明してくれると、四大貴族にとって、その宮仕えのための中央行きが何を置いてもしなければならないくらい優先順位が高いもの、という認識を登場人物たちが持っていると読者に感じさせることが出来るでしょう。
単に若宮の妃候補みたいに軽く書かれていますが、それが貴族たちにどのような影響をもたらすのか。妃を出した家の発言力が高くなるとか、何がしかの権利を貰えるとか。
名誉、実利、両方の理由を書いて、四家の宮仕えに対する必死さをもっと表現すると、元々候補ではなかったちどりがどうしても行かなくてはならなくなった理由の一助になると思います。
次。
『可愛らしい顔立ちに、綺麗な黒髪、教養もあって姉のちどりよりも先のことをやっていた。』
容姿の描写は課題の一つですね。ちどりを褒めた山吹の言葉と「可愛らしい顔立ち」と描写が被ってますし、いまいち特徴が掴めません。たれ目でおっとりしているとか、やや吊り目がちで勝気な印象だとか、ちどりにしろ妹にしろ具体的な描写が抜けています。付け加えると「綺麗な黒髪」だけだと長いのか短いのか、真っ直ぐなのかウェーブがかかっているのか分かりません。
『教養もあって姉のちどりよりも先のことをやっていた。』とは、『何を』ちどりより先のことをしていたのでしょうか? いきなり『やっていた』と書かれても、何を指しているのか分かりません。前後の文から宮仕えに必要な教養を学んでいるとは分かりますが、それでもいきなり感が強く、また表現が作風と合いません。
まずは「宮仕えになるために○○や××などを学んでいて」というのを最初に持って来てからの方が文章が自然になると思います。
次。
『妹ではなく、ちどりを中央に向かわせることにしたのが今回の宮仕えである。』
宮仕え(妃候補)に必要なのは何よりも教養だと思いますが、それをずっと学んできた妹ではなく、やっと元気になったとはいえ、それまで病弱で妹よりも教養の無いちどりが選ばれたのは何故でしょうか?
年齢でしょうか? ですが仮にも若宮の妃候補となるのでしたら、やはり普通は教養の方が優先順位が高いと思われます。地位が高ければ高い程、一度の失敗が人生の汚点、一人の失敗が家の汚点となります。それを考えればやはり現時点で教養の高い妹を選ぶのが普通だと思いますが、何かちどりに決めた別の理由があるのでしょうか?
あるならば、そしてそれを今は伏せたいならば、その理由の存在をほのめかすような意味あり気な一文を入れてくれると「ああ、この理由が何かの伏線になっているんだな」と読者は納得します。現状だと年齢という差があるとはいえ、妹よりも教養の無い姉を選ぶ事に説得力がありません。
次。
『「何がですか?」と山吹が聞いてきたが、まだ物見が開いているのに気付き、ぴしゃりとちどりの鼻先で閉めた。』
まず、山吹が付いて来ている事を先に書いて欲しいです。主が牛車に乗って、女房が歩いて付いてくるのは考えてみれば当然ではありますが、それは古い日本の牛車の光景を知っている読者からすれば、です。当然それを知らない読者もいるのですから、その読者からしてみれば、上記の文章だと山吹がこの場面では何処に居るのか、何故いきなり物見を閉めたのか、それが分かりません。
牛車に乗った、というちどりの状態だけではなく、周囲の状態も合わせて描写をして下さい。山吹は後ろ?横?を徒歩で付いて来ている? 他に従者は? 何人? 参勤交代みたいな行列? 仮にも四大貴族の姫たるちどりの中央行きにおいて、あまりにも描写が簡潔すぎます。豪華さ豪勢さが足りません。四大貴族と称されるだけの格を、次期帝の妃を送っているという意味を、この中央行きの行程で表して欲しいです。
付け加えると「まだ物見が開いているのに気付き」とありますが、何が「まだ」なのかが分かりません。一度閉めたわけでもなく、「まだ」と付ける必要性を感じません。
次。
『それを見た山吹が苦笑しながら』
周りを覆われていて、物見も閉じられている状態で、どうやって山吹は牛車の中のちどりの慌てている様子を「見た」のでしょうか?
次。
『大きく息を吐くとちどりは立ち上がった。』
何処で、立ち上がったのでしょうか? 牛車から出たという描写は後にあるので、まだ中に居るはずですが、牛車の中に立てるスペースは無いです。
以下に続きます。
- Re: 【募集〆】貴方の小説に感想を書こうか ( No.46 )
- 日時: 2019/08/03 11:08
- 名前: 書喰神 ◆ugFJcpBygw (ID: 1Fvr9aUF)
続きです。
次。
四姫が集う場。
これまでよりも容姿と衣装の描写に力が入っていますね。良い事です。
ですが、更に良くするならば、藤花宮の中がどんな場所なのか、椅子は、装飾品は、人数は、それらが読者に思い浮かべられるように描写するべきです。
そして姫たちの動作。ただ座っているというだけでなく、胸を張って背筋を伸ばして自信満々のように〜とか、肘掛にもたれ掛かり気怠そうに〜とか、それぞれの姫の性格を座り方ひとつで表せます。
独特の世界観なので、様々な点において詳細な描写を入れてくれると、読者はその世界観に入り込むことが出来ます。
それと、気になったのは方向ですね。夏秋の姫は二人共、ちどりが入って来た方向に向かって座っていたのでしょうか? 普通は入口側は下手、奥側は上手と言って、地位の高い者は上手側に席を置きます。藤花宮の部屋の内装はどのようなもので、二人の姫は何処に座ってどちらを向いていたのでしょうか。そしてその向きが入口から入って来たちどりに二人の顔が見える位置でなければ、本文に矛盾が生じてしまいます。
次。
容姿を形容する順番。
冬姫 肌→髪→目→唇→目
夏姫 目→髪→身体→衣装
秋姫 目→髪→唇→衣装
これは作中の各姫の容姿を形容した順番を並べた物です。本文はちどりの主観でストーリーが進んでいるので、容姿の形容もちどりの視線が流れた順に見ているはずなのです。
ですが見ての通り、ちどりの視線の流れに統一性はなく、かなり視線がブレブレのように見えます。作者様が思い付いた順番で述べているのではありませんか?
ちどりは藤花宮に入る前、まず冬姫と通路の突き当りで顔を合わせます。この時、ちどりは一番最初に冬姫の肌の白さに注目しますね。ではその肌とは何処の事を指しているでしょうか。顔? 手? 冬姫というからにはあまり露出が高くない印象を受けますが、衣装についてはまったく触れていないため、何処に視点があるのかが分かりません。
そこから髪へと視線が動き、目、唇と来て、再び目について触れて終わります。
視線の流れが不自然です。一本筋の通った視線の流れを意識して下さい。
出会って最初に一番目に付いた所、そこが顔なら、まず顔について述べてから、髪、体型、衣装……みたいに、徐々に最初に視点を置いた所から順に視線を動かしていきます。
最初に注目した場所(視点を置いた場所)によって、視線の流れは上から下へ、下から上へ、内から外へ、外から内へ、などに変化します。
ちどりが姫たちのまず何処に焦点を当てたのか。その場所からまったく見当外れな場所に視線が動いたり、同じ場所に戻ってきたりすると違和感を感じますよね?
視線の流れを意識して、登場人物の容姿を形容して下さい。
次。
『秋領の姫は規範通りの美人ではなかったが』
国や土地によって美人の判断基準が変わる事はありますが、この作品の国での美人である判断基準が作中に明確に記載されていません。現状の秋姫の容姿の形容だと、タイプの違う冬姫も夏姫も美人と感じたちどりの感性を以て、明確に「規範通りでない」と言えるだけの根拠にまだ薄いと感じます。
いったいどういうものが規範通りの美人なのか、どの点が規範通りではないのか。それを明確にして下さい。
次。
『自分のことを白波と名乗ると、儀式的な挨拶と祝辞を述べる。』
現状ですと淡々とし過ぎていて『儀式』というよりは単なる説明会のように見えます。
儀式とは行事、イベントです。王侯貴族の関わる行事は例え少ない人数だとしても、決められた動きというものがあります。例えば、座り方、立ち方、歩き方、止まる場所、跪き方、挨拶の文言、お辞儀のし方、などなど。
この『藤の如く笑えよと』の作風ならばそれらも定められていた方が、より儀式らしさが引き立つと思います。
更に言えば、場所や人の立ち位置の描写も、もっと荘厳な様子や空気が張り詰めた感じなど、この儀式に相応しい雰囲気を事前に描写してくれると、王侯貴族の行う儀式、という印象が強くなります。
次。
「秋家が当主の姫、蘇芳菊でございますわ。お会いできたこと、心より嬉しく思います」
『姫』は基本的に自分以外に使う敬称なので、目上に対して自分の事を指して言うのは違和感があります。
ちょっと時間が無くなってしまったので、とりあえず此処まで。
■総合評価:『可』
正直に言えば、『不可』寄りの『可』です。
文章能力はまだまだ拙く、読者に文章を光景として想像させるだけの描写にはなっていません。古の日本に対しての理解も浅く、各所に「そこはそんな簡素な描写で終わらせるのはもったいない」という点も多々ありました。
しかし同時に世界観には引き込まれるものがあります。
最初で読者を読みたい気持ちにさせることには成功していると思います。
なので、あとはどれだけこの作品の文章の質を高められるか、設定に深みを持たせられるかが重要となるでしょう。
ポイントは『詳細な描写』と『視点の流れを意識した描写の順番』です。
あと気になった点と言えば、ちどりの気持ちですね。
自分より妹の方が相応しいのでは、と思うのは分かりますが、そもそもちどり自身がこの宮仕え、若宮の妃候補になる事をどう思っているのか、それが描写されていないのが気になりました。知らぬ相手の妃になるのは嫌なのか、それとも家の為と受け入れているのか、乗り気なのか、しぶしぶなのか。
最後に描写に関してですが、『和』の印象が強いこの作品としては、もっと『ひらがなの擬音』を多用しても良いと思います。最初の桜の花びらが舞っている時、牛車に揺られている時、冬姫を初めて見た時、などなど、擬音を使って描写出来る場所は多いです。
擬音を使った描写にも種類があります。
例を出すと、
『ひらりひらり、と桜の花びらが舞った。』
とか
『ひらり、ひらり。
桜の花びらが舞った。』
など、ひとつの文章にしたり、擬音と別の文章にしたりと手法は様々です。
その場面に合った描写で使い分けると良いと思います。
現状の最後までは行きませんでしたが、とりあえずこれにて『藤の如く笑えよと』の感想を終えます。
質問、意見、反論、などなど御座いましたら、気軽にコメントをお願い致します。
以上、長文失礼いたしました。
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