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- Re: 神よ。私は美しい……【ポケモン対戦小説】 ( No.26 )
- 日時: 2015/08/20 02:45
- 名前: 高坂 桜 ◆hjAE94JkIU (ID: dUayo3W.)
日に日に地区予選が近づいていく中、特訓を続ける極・ポケモン部一同。しかし毎日同じことの繰り返しで、そろそろ精神的にきつくなってきた。いくら強くなるためとはいえ、パターン化した特訓はほぼ単純作業だ、精神がすり減っていくのも当然である。雫としても、このまま部員のモチベーションが下がるのは困るので、部員たちで適当になにかしらの大会や、校内で対戦のできる相手を探すことにした。
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適当に探すと言っても、翼や未歌たちにはアテがあった。そう、いつか夏奈の初陣の相手にした、クラスメイトの御剣鋏弥だ。前回と同じように、翼が半ば脅迫して彼を部室まで連れて行くが、その道中で雫と遭遇した。その後ろには、見慣れぬ女子生徒が一人。どうやら彼も、対戦相手になってくれるというクラスメイトを連れて来たらしい。人数は多いに越したことはない。さらに鋏弥とは対戦経験があり、手の内もそこそこ透けているので、完全に初見の相手はありがたい。ということで喜ぶ翼たちだが、その女子生徒を見るや否や、鋏弥の態度が急変する。同時に、相手の女子生徒も鋏弥に反応を見せた。女子生徒は鋏弥になにか言おうとするが、最後まで言うことはできず、鋏弥も一同を置いて立ち去ってしまった。
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とりあえず女子生徒と共に部室に向かう一同。女子生徒の名前は、御剣ココ。そう、あの御剣鋏弥の姉だそうだ。今はポケモンを半ば引退しているようで、レートに潜ったり大会に出るなど、積極的な対戦はしていないとのこと。それでも完全にやめたわけではなく、全国へ行くメンバー探しの時は断られたが、軽く対戦する程度なら、という条件付きで今回は了承してくれた。そんなことよりも翼たちが気になっているのは、鋏弥の態度。どう見ても姉弟喧嘩をしているか、そうでなくとも普通の関係ではないことは明らかだ。ココから話を聞くが、どうやら昔からあんな感じで、家でもほとんど言葉を交わしていないようだ。ココとしては、なんとかしたいと思っているが、彼女も明確に鋏弥が自分を避けている理由は分からないらしい。
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そんな話を聞かされ、対戦する気が削がれてしまったポケモン部一同。気になることだが、他人の人間関係に干渉することは憚られる。しかし夏奈が真っ先に、二人の関係を改善させたい、と意見する。一応、彼女の勝利で飾った初陣の相手なので、それなりの恩義は感じているようだ。それに続き、華音もできることなら、と夏奈に着く。しかし、最近になって大人しくなり、脅して対戦相手にしているものの、翼や未歌にとって鋏弥は、なにがあろうと不良のリーダーである。未歌を嵌めて絶望を与えようとした時のことは忘れようがない。二人の仲直りに賛成の夏奈、華音と、それを渋る翼、未歌。雫は鋏弥の素行を知ってはいるものの、虻村を失墜させた時の件もあり、中立に立っていた。結局、この日は特に何もせず、部活は終了した。
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鋏弥の回想と一人語り開始。
今でこそ鋏弥は姉のことを避けているが、しかし昔からそうだったわけではない。むしろどこに行くにも彼女に着いて行き、よく一緒にいた。とりわけ鋏弥がココを好きな理由は、ポケモンだった。昔のココはそこそこの有名人で、かなりの強者であった。大会では何度も優勝経験があり、鋏弥はそんな彼女を尊敬していた。「勝っても負けても楽しいし、どんな結果でも得られるものがあるのがポケモン」というのが彼女の持論で、鋏弥もそれを信じて疑わなかった。
ココが中学一年生になったある日、彼女は全国大会の地区予選に出場することとなった。鋏弥もその応援に、会場へと駆けつけた。昨年には凄まじい強さの三年生が相手を蹴散らしていたと、ココたちの学校は評価されている。そしてその再来とまで言われるほどに、ココたちのチームは快進撃を続けていた。しかしその快進撃は、中途で止まることとなる。相手チームは強者揃いで、ココたちのチームにも黒星が目立ち始める。そんな中、相手のエースらしい人物とココの一騎討ちとなり——彼女は敗北した。言い訳のしようもないほどに惨敗だった。しかし鋏弥は知っている。いくらボロボロに負けても、いつも笑顔で帰って来る彼女の姿を。負けても楽しいし、得られるものがあるのが、彼女のポケモンだ。全国出場が叶わなかったことは残念だが、彼女にはまだ、来年と再来年が残っている。今回は負けてしまったが、健闘を称えようと、鋏弥は彼女を迎える。だがそこにいたのは、彼の知らない、意気消沈する姉の姿だった。
そしてこの日を境に、御剣ココはすべての大会に姿を現さなくなった。そして御剣鋏弥は、自分の考え方を改め、不良グループのリーダーとなった。
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翌日、雫は一枚の紙を持ってきた。それは、週末に行われる大会の知らせである。雫はこの大会に、部員で出場しようというのだ。昨日の御剣姉弟の件がまだ尾を引いているというのにこんなことを提案するとはどういうことかと言うと、彼のが言うに、予選も近いので、御剣姉弟のことは忘れようということだ。予選は10パートナーズルールというレギュレーションを採用しており、週末の大会はそれに酷似したレギュレーションで行われるらしい。つまり、週末の大会で予選や全国で行われる10パートナーズルールのようなレギュレーションに慣れておこうというのだ。雫の言うことはもっともで、夏奈以外の三人は納得するが、夏奈は昨日のことについて冷たすぎるのではないかと反抗。そんな彼女に雫が言い放ったのは「誰か応援してくれるような観客がいるといいかもね」という意味不明の言葉だった。さらに去り際に「この大会は参加者があんまり集まってないみたいだし、もう一人くらい誰か連れて行きたいね」という言葉も残していく。華音はそれら二つの言葉で雫の言わんとしていることが分かった。雫の表向きの目的は、部員たちをパートナーズルールに慣れさせること。しかしその裏では、御剣姉弟の関係修復を図っているのだ。それを理解した華音は、翼や未歌を連れ、ココと鋏弥に大会のことを話す。ココには鋏弥が出るから観に来て欲しいと、鋏弥にはココが来ることを伏せておいて出場して欲しいと。
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中立の立場だった雫としても、似た状況にある知り合いがいたので、ココのことは放っておけなかった。一見するとココと接しようとしない鋏弥に問題があるように見えるが、しかし実際に問題なのはココの方だ。事実は複雑だが簡単に言うと、彼女が対戦に復帰することが、鋏弥との関係修復に必須だ。そのために、弟の対戦する姿を見せつけようというのだ。彼女が対戦から身を退いた理由は知らないが、弟が勝利を求めて戦う姿を見れば、なにか変わるかもしれないという、ある種の賭けである。
そしてやって来た、大会当日。慣れないルールに戸惑うポケモン部一同。夏奈は早々に敗退し、完全に実力の戻っていない華音と、未歌もとんでもない地雷を踏んで敗退。準決勝まで残ったのは翼と、まさかの鋏弥だった。
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準決勝が始まろうという時、電車を乗り間違えて遅れて来たココは、ちょうどステージに弟が出て来る様子を目撃。そしてその対戦を見届ける。
かなりの接戦となる翼vs鋏弥だったが、あと一歩というところで鋏弥が敗北。決勝に進んだのは翼だった。
負けた後、会場の廊下を一人で歩く鋏弥。その前に、ココが現れる。結局負けた、なにも得られなかったと語る鋏弥に対しココは、そんなことはないと返す。そして、鋏弥が必死で戦う姿を見て、鋏弥のお陰で、本気で対戦に向かい合っていたあの頃の熱意を取り戻せたと言う。それに対し鋏弥は「勝手にしろ」などと素っ気なく返すが、内心では喜んでいた。ココにもそれは分かる。こうして、御剣姉弟の間にできた溝は、埋まったのであった。
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後日、ココが鋏弥を連れて部室にやって来た。大会に誘ってくれたことと、二人の関係が改善されたことに対する謝礼を言いに来たらしい。これからココも、本格的な対戦に復帰するとのことだ。そのことを喜ばしく思いながら、ポケモン部一同は、迫る地区予選に向けて、特訓を開始するのであった。
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