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Re: あなたのオリキャラでSS リク締め切り ( No.198 )
日時: 2015/11/02 22:57
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6KsExnZ3)

SHAKUSYA様>>



 納得のいくものが書ければいいのですが……いいなーこれファンタジーって感じがしてていいなー。
 ロザーニャさんが好きになりそうです。こんな淑女様好きです……!!



 人類は衰退した。

 遥か遠い未来のこと——人間は食物連鎖の頂点から転落し、代わりに動物が世界を仕切るようになった。知恵を持つ獣で『智獣』と呼ぶ。
 食物連鎖の頂点から堕ちた人間は、小さな領土と文明の跡を使用して細々と生活しているらしい。らしい、と言うのは人間は珍しいものだからだそうだ。何故なら、人間の数が四桁程度しか存在しないからだ。
 智獣たちは己の文明を築き上げ、地表の大部分が自然へ戻りつつある世界を生きる。
 ……まあ智獣とは言っても、所詮は『獣』なので弱肉強食が成立するらしく、草食動物が肉食動物に狩られることが日常茶飯事らしいが。

 ネフラ山麓駅。
 良質な金属と宝石を豊富に産する、鍛冶と細工の街である。割と何でも揃っているので、世界を冒険する旅人たち御用達の街でも有名だ。
 ロザーニャは夫・ロレンゾと共に雑貨屋を営んでいる。
 さながら淡雪の如き白い肌。発達した耳はまるで犬のよう。弱視の為か目を開くことは稀だが、夕焼けの如き鮮やかな赤い双眸。貴婦人風の服装に似合う、お淑やかで物静かな性格。大胆不敵で闊達自在、饒舌な夫を影から支える妻の鑑である。
 ほわほわと上品に微笑みながら、ロザーニャは今日も亭主に代わって店番をする。



 その日の来客は突然だった。
 バターンッ!! と勢いよく店の扉が開かれたと思ったら、喧しい声が耳を劈く。

「ロザーニャさんこんにちはー!! 見て見て見て、エディに貰ったんだ見て見てー!!」
「店内ではお静かに、ラミーさん」

 カウンターに駆け寄ってきたのは人魚だった。青い髪の小さな人魚。
 腰まで届く蒼穹の如き青い髪。ロザーニャを見つめる瞳は深海のような深い藍。耳の部分が魚のひれのようで、空中を掻く尾には装飾が施されている。小さな手には何やら箱のようなものが握られていた。
 彼女の名はラミー。相方であるエドガーと共に世界を旅している少女だ。
 ロザーニャに注意を受けたラミーは、しょんぼりとした表情を浮かべて「ごめんなさい……」と細々と謝罪の言葉を述べた。

「それで、何を貰ったのかしら?」
「あ、うん!! これなんだ!」

 ラミーはロザーニャの鼻先に、抱えていた箱を突き出した。
 感触から察するに、この箱は木製。しかもかなり古いものだ。ところどころに金属の加工が施されている。何かを収納する箱だろうか。
 パカ、と蓋の部分を押し上げる。同時に、涼やかな音が聞こえてきた。

「オルゴールのようね。遺跡から?」
「うん、そうなの。それにしてもとってもいい曲! なんて曲だろ? ロザーニャさん知ってる?」

 流れる音楽に耳を澄まし、ロザーニャは記憶を探る。これは——

「一昔前に流行った、『水底の歌』ね。とてもいい曲よ」
「みなそこのうた?」

 硝子玉のようなキラキラした海色の瞳が、パチリと瞬いた。
 ロザーニャは上品に微笑み、

「あとで歌詞を記した紙を差し上げるわ、お礼にエディへ歌ってあげたらどうかしら?」
「そうする! とっても綺麗な歌だもん、エディもきっと喜んでくれるよね!」

 ラミーは『水底の歌』を奏で続けるオルゴールを抱えて、雑貨屋の天井付近をくるくると旋回した。その姿はとても楽しそうだ。
 ロザーニャは嬉しそうに空を泳ぐラミーを、にこにことした微笑を浮かべて見守っていた。


 ここはネフラ山麓駅。
 旅人が旅の途中に訪れる、平和で賑やかな憩いの場である。




 オルゴールなんて果たして存在するのだろうか。ちょっと心配ですが、どっかで誰かが作ったってことで。
 水底の歌はこれしか使い道がなかった……!!