リクエスト依頼・相談掲示板

Re: あなたのオリキャラでSS 現在リク停止中。ちょっと待て ( No.27 )
日時: 2015/09/24 22:41
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: gTez.RDd)

yesod様>>


メーカーさんを使ったら昼・プロポーズ・馬鹿な才能って出たので、抜き取って昼とプロポーズとスマホで書きます。
ついでにジャンルがホラーって出たんですけど、これ私の目の錯覚って訳じゃないですよね……。うん、間違いないわ。



 昼休みのことだった。
 会社の屋上でぼんやりと青空を眺めていたら、何故かスマホが鳴った。きっと社内で誰かが自分のことを探しているのだろう、と勝手な予想をつけた。緊急の連絡があって、でも探しに行くのが面倒だからこうしてスマホに電話をかけたのだとも。
 着信音を奏で続けるスマートフォンの広い画面に目を落とすと、なんと相手は非通知。一体誰が非通知設定で自分に電話をかけてきているのか。

「……チッ、非通知かよ」

 ブチッと問答無用で通話を切断した。着信音は止み、バイブレーションも停止する。動かなくなったスマホを一瞥して、セージは舌打ちをした。
 誰がこんないたずらをしたのか。思考を巡らせるが、非通知で電話をかけてくるような奴などいない。いや、いるかもしれないけど、いないだろう。
 というか何故わざわざ非通知でかけてくる必要があったのか。ビビらせたかったのか。ふざけるな。

「こんなもんでビビる訳ねえだろ」

 ハッと鼻で笑った瞬間、再びスマートフォンが震えた。
 ビクッとセージの心臓が一瞬だけ跳ねた。口から心臓が飛び出て、言葉にはできないほどのえげつないグロ画像になるところだった。
 恐る恐るスマートフォンを手に取ると、やはり相手は非通知設定だった。2度目である。もう1度通話を叩き切ってやろうと画面に触れようとしたところで、セージはふと「電話に出てみよう」と思い立った。どうせ通話料金は電話をかけてきた相手——つまり向こう持ちなのだ。出たって問題はないだろう。かけ直す訳でもないし。
 緑色の『応答』ボタンに指先で触れ、スピーカー部分を耳に当てる。

「もしもし」
『————……ガガッ』

 セージは眉根を寄せた。
 何故だろう。相手の声が聞こえない。ノイズでもかかっているのか、ザザッとかガリガリッという音しか聞こえてこないのだ。

「もしもし?」
『ガガッ——ザー、ガリガリッ——ザザッザ——あ、——ガリガリガリッ』
「え? もしもし? オーイ、聞こえねえんだけどー? オーイ?」
『ガリガリガリッ!! ザザッ——あ、の——ザザップッ』

 ほとんどノイズで通話は切断されたが、かろうじて聞こえたのは「あの」という呼びかけだけだった。
 女性の声ではない。男性の声だった。どこか掠れた、緊張感のある声。
 途端に背筋に寒気が走ったセージは、転がるようにして屋上から飛び出した。昼間だからまだ明るい階段だが、これが夜だったらと考えるだけで震えてくる。『夜だったら』という考えを頭の中から追い出して、セージは人の多い明るい廊下に足を踏み入れるのだった。
 女性社員の甲高い話し声。上司の打ち合わせの声。同期の楽しそうな笑い声。あらゆる音がぶつかり合う。ようやくセージは安堵の息を吐くことができた。


「ねえねえ、知ってる? プロポーズに失敗した男性社員の話!!」
「あ、知ってる。フラれちゃって、傷ついたその社員さんが屋上から飛び降りたんでしょ?」


 高い女性特有の声がなぞった、1つの噂話。
 ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間、セージは彼女たちの噂話に聞き耳を立ててしまう。
 楽しそうに弁当をつつきながら会話をする女性社員たちは、セージの存在に気づいていない様子だ。噂話はやけに大きな声で繰り広げられている。

「で、1人で屋上にいたりするとその社員さんから電話がかかってくるんだって。プロポーズしようとした時も、電話で彼女さんを呼び出そうとしたみたいだよ」
「えー、怖い」
「まあでも噂話だしね。屋上綺麗だし、あそこでお弁当食べる社員さんも結構多いでしょ。電話なんてかかってこないこない」

 あはは、と楽しそうに笑っている女性社員たちに言ってやりたい。今まさにその電話がかかってきたのだと。
 喉まで出かかった言葉を飲み込み、セージはさっさと仕事場に戻ろうとした。だが、それを引き止めるようにスマホが鳴る。
 画面に表示された文字は非通知の3文字。応答のボタンを押す。

「……ハイ」
『ガガッ——あの、すみません。大切な話が——』

 セージは慌てて電話を切った。かなり大ぶりな動作で切ったようで、通りがかった若い男性社員が驚いた表情でこちらを見ていた。
 苦笑して何でもない風を予想が、セージの脳内は乱れに乱れまくっていた。もうこのまま倒れてしまいたいほどだ。バタッと倒れられたらどれほど楽だろうか。そうさせないのは、スマートフォンにかかってくる非通知の電話。
 彼女たちが話していた噂話に間違いない。プロポーズに失敗した男からの電話だ。
 どうするべきか。着信拒否設定にしようにも、非通知だからできない。どうして白昼堂々幽霊が自分に電話をかけてくるのか、定番は夜だろう夜!! とどうでもいいことを考え始める。
 どうするべきだ。どうしよう。お祓い? いや違う。この場から逃げなくては。逃げるったってどこに。ああダメだ、八方塞がりだ。幽霊相手に知恵など通じる訳がない。相手は反則のような存在だぞ。しかもねちっこい系の。
 ぐるぐると思考を巡らせているうちに、再びスマートフォンに着信が入った。非通知かと思ったが、画面に映し出されていたのは同期の名前。反射的に応答ボタンをタップする。

『おう、もしもし』
「お前かよかった助かった」
『お、おう? どうした?』

 今この時は同期に救われたと感じるセージ。このまま通話していれば幽霊からの電話に出なくて済む。
 そう考えながら、ふと何とはなしに窓の外を見やった。


 ガラス張りの大きな窓ガラスの向こう。
 スーツ姿の男性が、携帯片手に落ちていく瞬間を目撃した。




 なんかよく見る落下型ホラーになりました。ごめんなさい。セージさんこんな性格じゃないな多分。