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- Re: あなたのオリキャラでSS書きます!! 第1回目募集開始 ( No.4 )
- 日時: 2015/09/21 20:45
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: gTez.RDd)
俊也様>>
吸血鬼ご兄弟でSS、お題は『血、秋、月』のギャグということで。参りましょう!!
秋の夕暮は早く訪れる。
紺碧の空には、ぽっかりと青白い月が浮かび上がり、少しだけ物寂しい雰囲気が漂う。
冷たい秋の夜風は閑静な住宅街を駆け抜け、寒さに身を縮こまらせる住人多数。街灯がポツポツと細い道を照らし、道行く人は帰路を急ぐ。
——ところで、話は変わるのだが、こんな噂はご存じだろうか。
人々が寝静まった深夜には、吸血鬼が町を徘徊するのだ————。
その根も葉もない噂を聞いた者は、みんなして鼻で笑った。今更吸血鬼とか。ニンニクや十字架でくたばる化け物が出てくるのか。んな阿呆な。
誰だって信じようとしないだろう。なにせ吸血鬼はおとぎ話の存在だ。怖がらせようといたずら目的で噂を流したか、あるいは子供が深夜に徘徊することを諌める為に親たちが教えた教訓か。
兎にも角にも、結論として言えることはそう、吸血鬼などいないのだ。
だと、言うのに。
「ハァハァハァハァ……可愛いよ、可愛いよぉ……ハァハァハァハァ」
「…………(ブクブクブクブク)」
深夜の路地裏。街灯の明かりが届かぬ暗い道で、1人の男の子が脂ぎった中年に詰め寄られていた。
歳は10代後半ぐらいだろうか。闇夜に浮かび上がる透き通るような白髪はとても柔らかそうだ。肌の色はきめ細かく、そして病的なまでに白い。彼の健康状態を疑いたくなる。小学生ぐらいの背丈があるウサギのぬいぐるみを胸の前で抱き、擦り寄ってくる中年を必死に押しとどめていた。
ついでに薄い唇からは泡みたいなのを吹いていた。
「ハァハァハァハァ可愛い可愛い可愛いハスハスペロペロ」
「うわああああああああああああああああああああああああああ変質者ああああああああああああああああああああああああああああああ」
中年の毒牙ならぬ脂ぎった指先が可憐な少年を穢そうとしたその瞬間。
夜の空に轟けと言わんばかりの絶叫と共に、中年が「く」の字で吹き飛んだ。吹き飛ばされた中年は近場のコンクリート塀に頭から突っ込み、ピクリとも動かなくなる。漫画ならおそらく彼はしぶとく生きることになるだろう。チッ、頭潰されて死ねばよかったのに。
中年を吹き飛ばしたのは、白髪の少年と同い年ぐらいの男の子だった。
闇の中に溶ける黒髪に、炯々と輝く赤にほど近い紫色の瞳。昼間に町を歩けばまず間違いなく女が放っておかないぐらいに彼の顔立ちは美形で、それでいてどこか現実離れしている。目の前の白髪少年ほど現実離れはしていないが。
「……あれ、紫乃……? ……汗、掻いてる。汚い」
「おまっ……お前を助ける為に全力疾走してきた兄ちゃんに向かって何だその口の利き方はァ!?」
白髪の少年、小紫由乃は己の兄をジト目で睨みつける。
黒髪の少年、小紫紫乃は額に浮かんだ汗を拭ってから弟の腕を引っ張った。
「ったく、何でお前吸血鬼なのにこんな脂ぎった中年に襲われてんだ? もしかしてこいつから血を貰おうとしたのか? 趣味を疑うぞ?」
「……そんな訳、ない……フラフラしてたら……連れ込まれた……」
「だからいい加減周りには気をつけろって……もういいや。ほれ行くぞ。学校戻るぞ」
グイグイと弟の腕を引っ張って、薄暗い路地裏を脱出する紫乃。成すがままに由乃は兄の後ろへ続く。
と、不意に兄の足がピタリと止まった。反動で彼の背中に鼻っ面をぶつけてしまった由乃は、恨めしげに突如立ち止まった紫乃を睨みつける。
「……何して、んの……」
ペシペシ、と小学生サイズのウサギのぬいぐるみで背中を軽く殴りつける由乃。
しかし、紫乃は何やら思いつめたような表情をしている。それからくるりと身を反転させ、由乃の肩をガッシリと掴んだ。じっと己を射抜く紫色の目が真剣みを帯びていたので、由乃は紫乃への攻撃を中止する。
「由乃。ちょっとここにいてくれ。大丈夫、10秒で用事を済ます。その間、耳を塞いでいろよ。いいな」
「…………ん」
コクリと小さく頷いた由乃は、コンクリート塀に背中を預ける。ギュッとウサギのぬいぐるみを強く抱きしめ、言われた通りに耳を塞ぐ。
タタッと紫乃がどこかへ走っていく振動が空気を介して伝わってきた。何やらぎゃあぎゃあ騒がしいが、耳を塞いでいる為上手く聞こえない。ていうか聞きたくないうるさい喧しい鬱陶しい。
やがて騒がしいのは収まって、同時に兄が清々しい表情で帰ってきた。
「さ、由乃。帰るぞ」
「……紫乃、臭い」
「オイ!? 言っていいことと悪いことがあるぞ!!」
由乃の暴言に紫乃はため息をついた。「せっかくさぁ……」と何かを言いかけて、やめる。
2人の美しい少年は、何やら楽しそうに会話をしながら夜の世界へと足を踏み入れるのだった。
翌日、路地裏で死体が発見された。
太った中年の男が、脂肪と臓物と残り少ない毛髪をゴミ置き場に撒き散らされて殺されていたらしい。遺族は当然悼んだが、ネットで何故かその中年の男が話題になった。
何でも彼は年頃の子供に詰め寄っていた変態だったらしい。
世間が出した結論は「まあ殺されて当然だよねハハッ」だった。変態にはさぞ息がしづらい世の中になったものである。
一言。お目汚しすいませんでした。
由乃君可愛すぎてこんなことに走りました申し訳ございません。
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