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Re: あなたのオリキャラでSS 新規のお客様募集 ( No.77 )
日時: 2015/10/02 23:36
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: gTez.RDd)

SHAKUSYA様>>



 大変長らくお待たせして申し訳ございません。
 そして何故かシリアルをご期待されているので、その通りに書けていればいいのですが、何分カッチョイイお題がきちゃったんでwktkgkbrしております。



「臥待月ってなんだっけか」
「遅い時間に出る月のことだ。寝待月とも言う」

 燭台の蝋燭がぼんやりと鍛冶場を照らす。
 作業台を挟んで、2人の『人外』が向かい合って座っていた。彼らの前には猪口と徳利——どうやら酒盛りをしているようだった。
 片方は蜥蜴。姿は人間そのものだが、全身の皮膚が蜥蜴のようだ。年齢はおそらく中年期ぐらいだろう。カーキ色の袖がないジャンプスーツから伸びる逞しい腕は右のみ、さらに左目には片眼鏡をかけていた。右目を失っているのだ。至るところに傷跡があり、近寄りがたい雰囲気が漂っている。だが白い髭を三つ編みにしている個所を見ると、「……お洒落か?」とちょっと聞いてみたくなる。
 もう片方は黒い鱗を持つ体格のいい男。蝋燭の炎を取り込んで輝くその双眸は、美しい青をしている。相対する男とは違い、こちらは角が生えている。装着している飾りが、動くたびに涼やかな音を立てた。和装に身を包んだ彼は、鍛冶師そのものだった。
 蜥蜴のような男——ロレンゾは、プハッと一息ついた。

「月ってそんな変わらねえだろ。寝待月とか望月とか立待月とか、何で月の名前はたくさんあるのかね」
「……満ち欠けが関係してくるのだろう。どうした? 今日はやけに饒舌だな、貴様」

 黒い鱗の男——ベルダンはその碧眼を細めた。彼はまだ酒に1口も飲んでいない。手がつけられていない猪口の中で、透明な酒が波紋を作る。
 だらっと作業台へうつ伏せになったロレンゾはふわふわした声音で、

「時間が経つのが早くてなァ。なんか、こう、寂しくなってくんのよォ」
「……そんな風には見えんがな」
「見えねえだけだっつーの」
「戯けが。さっさと帰れ、女房が家で待っているのだろう」

 ロレンゾは雑貨屋を経営している。人を寄せ付けぬ風貌だが、気立てのいい店主だ。人当たりもよく寛容であるからか、交友関係も広い。ただ、軍人時代の名残である傷跡が近寄りがたい雰囲気を漂わせているのだが。
 んー、と唸り声のようなものを上げたあと、ロレンゾは猪口に残っていた酒を一気に呷った。徳利を引っ掴んで猪口に酒を追加し、

「もう少しだけ付き合えよ、ジジイ。くず鉄弄ってても楽しかねえだろ」
「馬鹿にすんじゃねえ。くず鉄でも武器を作る材料にはならァ」
「違ェねえわな」

 からからと笑ったロレンゾは、猪口に注いだ酒を飲みほしてから席を立つ。

「じゃあな、ジジイ。カミさん待ってるから帰るわ」
「……フン。さっさと帰れ」

 ロレンゾと一切目を合わせぬまま、作業台に肘をつくベルダン。さらに彼の背後で揺れる長い尻尾が、シタンッと床を叩いた。彼の悪態を彩るようだ。
 哄笑を上げたロレンゾは、鍛冶場から去って行った。人通りの少なくなりつつある店先に蜥蜴の男が混じり、やがて姿を消す。
 彼の姿を見送ったベルダンは、店の奥にある火のない炉を一瞥した。鉄を熱する為のものだが、火が灯ってないとなると、物寂しい空気が漂っている。

「……らしくもないことを言いやがって、ロレンゾめ」

 手つかずだった猪口を取り、酒を喉に流し込む。

「『臥待月』か……いい酒だな」





*****

 最終的に臥待月は酒の名前になりました。
 全力で土下座させてください。低クオリティのものを作ってしまったこと、誠に申し訳ございませんでしたァァァァ!! これシリアルじゃねえ!!