リクエスト依頼・相談掲示板

Re: 長期で小説の挿絵描いて下さる方、いませんか? ( No.24 )
日時: 2016/05/29 01:06
名前: 狐 ◆4K2rIREHbE (ID: C8ORr2mn)

◆ミストリア編◆

P8
「……売国奴の疑いをかけられていること、なんで言わなかった?」
 不意に、ルーフェンが先程より幾分か低い声音で言った。
トワリスは、その言葉にびくりと首をすくめると、何も答えずに目をそらした。

P10
「……ファフリ、よくお聞きなさい。今から言うことは、とても大切なことです。母の一生の願いと思って、言う通りにするのです」
 ファフリは、あまりの妃の気迫に、ただこくりと頷いた。

P16
「……いや、お妃様に直接頼まれたのは、アドラ団長だよ。俺は、団長に言われて、ファフリについていこうと思ったんだ」
「そっか。……他の兵団の皆は、どう思ってたのかな、私のこと。やっぱり邪魔だと思ってたかな。召喚師のくせに、全然戦力にならないから」
 ファフリの表情は、存外穏やかなものだった。

P25
 ユーリッドは、暗殺者達の気配が近づいてくるのを感じていた。
 ユーリッドとファフリは、少しでも音や臭いをごまかそうと、川近くの木に身を隠していた。
しかし、見つかるのも時間の問題だろう。
次に追手が来たら、今度こそ自分が戦わねばならないと、ユーリッドは分かっていた。

☆P30
 真っ赤に染まった川の、せせらぎの音だけが聞こえる。
ユーリッドは、ファフリを見つめて、呆然と立ち尽くした。

P42
 アレクシアはふっと息を吐くと、前方にいるルーフェンを見た。
「でもそれだと、今現在、貴方ばかりが襲われる理由が分からないわ。貴方が王都から離れた途端に、王都には獣人が現れなくなったのは何故?」
「……さあ?」
 アレクシアの挑戦的な視線に対し、ルーフェンは笑顔で答える。

P62
 ルーフェンは、表情を引き締めると、バジレットの顔を真っ直ぐに見た。
「陛下、国同士の争いは、双方の国全体をも滅ぼしかねない大規模なものとなるでしょう。そのようなことを、ミストリアの真意がはっきりとしない今、実行しようというのは大変危険です」

P72
 トワリスは、岩の上に立っていた。
そのすぐ横には、滝の流れ出る洞窟がぽっかりと口を開けている。
洞窟の中は暗黒よりも深い闇に覆われており、外から夕日の光が射し込んでも、ほとんど中は見えなかった。

☆P83
ファフリは、大きく音を立ててベッドから立ち上がった。
「私だって、好きで召喚師に生まれたんじゃない……! なんで、なんでこんな目にばっかり遭わなきゃいけないのよ! もう嫌……なにもかも、皆いなくなっちゃえばいいのに……!」

P88
 どうしたのかと首を傾けて見ると、虎の獣人の前に一人、小柄な女が立っていた。
 女は、ユーリッド達と同じように外套を纏い、深く頭巾を被っていた。
だが、その外套の縁に入っている模様や、革靴の皮革が独特なもので、格好が同じと言えどこか変わった風貌をしていた。

P99
「……まだ、いけない。あともう少し」
 ぽつりと呟いて、ファフリは浮いたまま渓流を見つめる。
その目はどこか虚ろで、彼女はおそらくファフリではないとユーリッドは思った。

P112
「……ごめんね」
 そう口の中で小さく呟いて、トワリスは柄を逆手に持った。
そして、ファフリの喉元にゆっくりと切っ先を近付ける。

P128
 この光景には、トワリスの後ろにいたユーリッドやファフリも、はっと息を漏らした。
「なんだよ、これ……本当に生きているのか……?」

P137
 侵入者は、底光りする目を二人に向けると、唇で弧を描いた。
「我が名はエイリーン。アルファノルの召喚師にして、闇精霊の王。『忘却の砦』第六の主であるぞ──……」

P142
「……うん。そうだと、いいんだけどね」
 苦笑混じりに言ったトワリスを、ファフリは一瞥した。
トワリスは、どこか不安そうにうつむいて、ぼんやりとしてた様子で、握っている実を見つめていた。

P147-148
 ただ、少し違うのは、自分は今、森の中にいるということだった。
足元ではさらさらと草が揺れて、頭上では木々の細長い葉がざわめいている。
 なんとなく、目を閉じてみると、川の流れる音が、どんどん耳元に近づいてきて。
さらさら、さわさわと、ファフリの心も揺さぶってくるようだった。

P160
 トワリスは、続けて魔力のみを発現させた。
すると、もやっと煙のように掌に現れた魔力は、しかし、あっという間に、黒い結晶に吸い込まれていく。

P164
 ハイドットで出来た坑道は、まるで満天の星空に囲まれた回廊のようだった。
上下左右、全方向から光に照らされ、もちろん松明など不要であったし、ハイドットの岩壁同士が風景を反射し合っていたので、まるで映し鏡の世界に迷いこんでしまった気分になる。
だが、その輝きの向こうは、ハイドットの漆黒がどこまでも続く、闇の空間が遠く広がっているようにも見えた。