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- Re: 第1回*小説大会!! ( No.5 )
- 日時: 2016/01/05 09:37
- 名前: 将軍 (ID: S0f.hgkS)
- 参照: 投稿させていただきます。題名は花蟷螂
花蟷螂
僕が初めて恋をしたのはとても可憐で恐ろしい殺人鬼でした。
「寒い………」
「そうだな、もう冬だしな」
高校に入って初めての冬。
僕は友人と共に学校に向かう道を歩きながら当たり前のことを呟いていた。
「お、おい!」
「なんだよ」
「な、あそこにいるのって!」
高校が見えてくると友人が興奮したように僕の服の裾を引っ張って校門の方を指差す。
僕は煩わしく思いながらそちらの方の目を向けるとそこには彼女が立っていた。
彼女
高校の入学式の時にすれ違ったとき、僕は彼女に恋をした。
正直、初恋だと思う。今まで一目惚れなんてって思っていたが、彼女を見ると僕の心臓は早鐘を打ち、彼女を直視出来なくなる。
「お、なんだなんだ。やっぱお前、惚れてんのか」
「う、うるさい」
ニヤニヤ顔でこちらも見ながら顔を押しつけてくる友人の顔を押しのけながら早足で彼女の横を通っていく。
そんな僕に気づいた彼女はその可憐な顔に笑みを浮かべながら僕に挨拶をしてくる。
気恥ずかしい僕は小さい声で返事をするとそのまま教室に足早と駆けていった。
「最近このあたりで連続殺人事件が発生してるからお前ら寄り道せずにまっすぐ帰れよ」
HRが終わり先生が教室から出ていくとみんなはそれぞれ友人たちと喋りながら部活に向かったり家に帰宅したりしていた。
「一緒に帰ろうぜ」
「悪いな、今日は塾なんだよ」
友人が荷物を持ってこちらに近づいてくる。
僕はすまなそうに断ると友人は笑いながら良いってと言って見送ってくれた。
ちらりと彼女の方を見ると彼女は女子たちと楽しそうに談笑していた。
「混ざってきたらどうだ?」
朝に見たニヤニヤ顔でこちらを見てくる友人を無視してそのまま学校を出た。
「結構遅くなったな」
塾を終え、外に出て僕は白い息を吐きながら腕時計を見る。
時間はすでに夜の9時の半ばを超えていた。
急いで帰らないとと思い早足で帰路に着いていると不意に視線の端に彼女を捉えた。
彼女は数人の男たちに囲まれ、そのまま路地裏に連れていかれた。
「ど、どうしよう……」
僕は産まれてこのかた喧嘩なんてやっとことは無いし、運動よりもどちらかというと勉強に力を入れてきたので力だってない、それでも初恋の人を見捨てることは出来ない。
僕は勇気を出して入り組んだ路地裏に入っていく。
入り組んだ路地裏の最奥の手前の丁度いいところに古びた角材が置いてあり、無いよりはマシと考え、それを掴む。
「か、彼女を離せ!」
上擦った声になっているが、それでも臆さずに奥に飛び込む。
「え………」
そこには僕の思っていた光景とは違うものが広がっていた。
血、血、血、見渡す限り血の海。
先ほどの男たちは全員倒れ伏していた。
そして彼女は倒れ伏している男たちの中心に血塗れのナイフを持って立っていた。
彼女はこちらに気づくと微笑みながら僕の襟首を掴むとそのまま奥に引きずっていった。
彼女は血で塗れた顔に笑みを浮かべ
「貴方は勘違いをしていたけど私を助けようとしてくれたから私の事を喋らないなら生かしてあげる」
可憐な声でそう告げた。
僕は花蟷螂という言葉が脳裏によぎった。
美しい擬態に身を包み、餌が来るまで待ち続け、餌が来たら容赦無く喰らいつく。
彼女は花蟷螂だ。
僕は捕まった餌だ。
でも僕はそれでも良い。
彼女が僕を見てくれている。それだけ僕は十分だった。
僕はそっと頷いた。
僕の返事を聞き、彼女はいつもの可憐な笑みを浮かべた。
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