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- Re: 第1回*小説大会!! ( No.7 )
- 日時: 2016/01/05 12:40
- 名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: Jk.jaDzR)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
【黒い影】
「おにいたんッ、どこいくのッ」
ぎゅーっと抱き付いてくるのは、俺の妹、燈。
俺たちの両親は数年前に交通事故で死んでしまった。だから今は社会人の俺と妹の二人暮らし。妹はまだ小学校に通ったばかりで言葉もうろ覚えな状態で、それなのに俺の朝食を作ろうと朝から頑張ったりするいい奴だ。
「んー、会社だよ。燈がいい子にしていれば今日もはやく帰ってくるからねー」
よしよしと頭を撫でてそういいながら微笑んで名残惜しいが体を引き離す。
「ほんと?ほんちょにほんちょッ!?」
確かめるようにそう何度も聞いてむーっと拗ねたようにしながら俺の手を引っ張る。
「ほんとだって。今日は早く帰ってくるよ」
微笑みながら頭をまた数回撫でると、玄関を出る。
妹はそれをじーっと見つめながら手を数回、振り見送ってくれる。
本当は俺だって休みたいんだ、だって今日はせっかくの日曜日だし、どこかに遊びに行きたかった。
だけど、それよりお金が重要だ。稼がないと燈も俺も暮らしていけない。
だから少し寂しくても俺は出かけていく。
俺はせかせかと仕事をつづけた。
そんなころ、燈はお祝いの用意をしていた。
今日はおにいたんの誕生日ッ、だからだから一生懸命に働いているおにいたんにいっぱい楽しんでもらって、いっぱいお礼する。
「ふふっ、おにいたんの好きな物、いっぱい作るもんッ」
ぎゅっと自分より少し大きいリュックのひもを握りしめながら八百屋などの店で買った食材を大切に持ち帰っている途中、誰かに視線を注がれている気がして、はっと振り返る。
その時、黒い人影が見えておにいたんかなと思い、その場所に行ってみるが、誰もいない。
不思議に思いながらも、まいっかと気を取り直して家に食材を持ち帰る。
早速、家に持ち帰った食材で料理を始める。
「……よいっしょッ」
慣れない手つきで料理本——兄にふりがなを全部ふってもらった大切な料理本をみながら料理をする。
ときどきけがをしてしまうけど、今日はあきらめずに料理を続けた。
「……で、できたぁ」
綺麗に盛り付けをした料理を見て時計を見る。
時計は短い針が八、長い針が十二を指しているつまり、八時と言うことだ。
「おにいたん、はやくかえってこないかなぁ……っ」
今日は早く帰ってくると言ったのできっと短い針が九になったら来る。
短り針が九になるまで時間はたっぷりあるから、そうだ、プレゼント、プレゼント買ってこよ。
誕生日にプレゼントは必要なのに、なんで燈、買わなかったんだろう?
もういつもなら寝ている時間なのでうとうととしながら鍵を閉めて外へ出る。
——燈、燈。こっちおいで、燈。
信号の向こうにパパとママの二人がいる。
パパとママの顔はよく覚えてないし、覚えてないだけど、なんとなく声でわかる。だからあれはパパとママだ。燈を迎えに来たんだねッ。
燈も今行くよ。
あれ、なんでパパとママは燈に背を向けるの?
「いかないで、いかないで、いかないでよぅ、パパぁー!!」
手を伸ばしても届かない。
私の手はいつもあの二人にとどかないでいつも終わるんだ。
でも、もうすぐでとどきそう、行かなきゃっ。
チカチカと青から赤へなりそうなのを気にせずに走っていく。
その時、
「燈ッ!!」
ギュッと誰かに抱きしめられる。
振り向けば、私の兄が涙をこぼしながら私を抱きしめていた。
「お兄ちゃん?」
「何してんだ、バカッ、死んじゃうだろッ」
涙声になりながらそうつぶやくと、次には良かったという言葉が出てくる。
ふと俺が燈が行こうとしていた向こうを見ると、黒いものが金色の光をはなってこちらをみていた。そこには渦をまいて風が吹いている。
なんだっともう一度目を擦ってみるともうそこには何もなかった。
後日、俺はあの信号の向こうを訪れたが、やはり何も証拠となるものはなかった。一体、あれはなんだったのだろうか——
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