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Re: 第二回*小説大会!! ( No.5 )
日時: 2016/02/01 19:34
名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)

ネクロフィリアの少年少女 稲波零都-藍沢奏音


「零都!これスッゴイ綺麗に出来たよ!」
「あー、綺麗綺麗」
「棒読みするなーッ、そもそも全然見てないじゃん!」
ムーと子供の様に頬を膨らませる少女___藍沢奏音。

奏音の言う【綺麗なモノ】はホルマリンに漬かった一人の男の【死体】
こいつも俺も、同じ性癖。ネクロフィリア【死体性愛】と言う性癖。
といっても俺は先天性…つまり生まれつき。奏音は後天性と言う違いがある。
たまに俺の部屋に来ては自慢の死体を見せてくる。
最初の時は何とも思わなかったけど今じゃただ鬱陶しいだけ。
「お前本当に性格変わったよな。あの引き籠り時代に比べて」
「あー、あの人生最大病み期引き籠り時代ね。確かに大分変ったなぁ…。あの頃は全然人とも話せなかったし」
久々に昔の話でもしよっか。なんてニコッと笑って言ってくる。
自分の傷を自分で抉る行為をよく出来るもんだ。なんて思いながらも昔の話を始めた。



奏音と和音と俺は幼馴染。
和音と言うのは奏音の双子の妹。5歳の頃に親を食べた【食人性愛者】。
親が喰われたショックなのか奏音は人には見えない【壁】のようなものを作り出した。
無邪気でよくしゃべる奏音がいきなり口数が少なくなり一気に冷たい性格になった。

小学校までは何ともなかった。 奏音だってちょっとクラスの中で浮いてるかな、程度。
でも、中学校に上がってからある噂が流れ出した。

【カンニングをしている藍沢奏音】

テストで常に満点近くをとっているという理由で『カンニングだ』といわれてそれが噂となって学校中に流れた。
その噂のせいで奏音は孤立した。 そんなことを和音から聞いた。

「ノンちゃんはカンニングするような子じゃないッ」
涙を目に溜めながらそう、俺に言って来た。何度も、何度も泣きながら繰り返してた。

結局中学時代は奏音は学校中の嫌われ者のまま卒業をした。

元々成績の良い奏音は推薦で頭のよい高校へ進学した。
和音も成績は下の下だがスポーツ推薦で陸上の強豪校へ。
成績の中の中の俺は地元の高校へ。
小学校から中学までずっと同じ学校だった俺たちは高校でバラバラになった。


「あ、零都。久しぶりだな」
「んー?あ、リー」
高校2年の冬。奏音と和音の兄、梨音と久々に会った。
現在社会人のリー。仕事が大変で疲れているのかどこかやつれているように見える。

「あれ、奏音と和音は?一緒じゃないのか?」
スーパーのレジ袋を持っているのを見る限り買い物に行っていたのは一目瞭然。
昔はよく奏音と和音もついていたけど今はいない。
「あぁ、和音は部活の合宿なんだよ。1週間前から」
へぇ…と相槌を打ち質問を重ねる。
「じゃあ奏音は?」
一瞬にしてリーの表情が変わった……気がした。

「奏音は……【 ずっと 】部屋にいる」
どこか心配した雰囲気を漂わせるリー。
「ちょっと前からずっと部屋から出て来てないんだよ」
「奏音が…?」
そう。1ヶ月くらいずっと。その言葉が衝撃的すぎた。


数分間、俺とリーの間に重い空気が流れた。 とっても重い、静かな時間。
それが耐えられなくなり先に口を開いたのは俺。

「なぁ、リー。一回奏音に会ってみてもいいか?」

何でこんな事を言ったのか自分でもわからない。
でも、奏音の事が心配になって、気づいたら言葉か零れ落ちていた。

「いいけど…、彼奴が出るかどうか」
それでもいい。そう言って藍沢家へ行った。

結論から言えば結局出てこなかった。
中から物音すらしない。もしかしたら居ないんじゃないのか。死んでいるかもしれない。
そんな事すら思ってしまった。


結局出てきたのは俺が高校3年になった頃。
本当はもっと前から出て来ていたらしいけど俺に会いに来たのは高3の春。

「どうしよう、零都。死体腐りそう」

それが第一声。 しかも、真顔で。
よく話を聞いたら奏音が引き籠りになった原因と言っても良い男が家まで押しかけてきて恐怖のあまり殺してしまったらしい。
どんどん冷えて血の気も失せていく死体を見て【綺麗】だと思って保存したかったが保存の仕方が分からなくって俺の元まで来たとか言っていた。


「あの時奏音が玄関先で言った第一声は一生忘れない」
「忘れろ、マジで忘れろ」
思い出して恥ずかしくなったのか両手で顔を覆い隠す奏音。
「なら尚更忘れないようにしなきゃな」

ケラケラ笑う俺とそれを睨みつける奏音。
いつまでも、こんな日々が続けばいいと願う…。



【ネクロフィリアの少年少女 稲波零都-藍沢奏音 fin】