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- Re: 第三回*小説大会!!!【開催中】 ( No.5 )
- 日時: 2016/02/28 01:41
- 名前: 河童 ◆PZGoP0V9Oo (ID: DxRBq1FF)
はじめましてとなりますが、書かせていただきます。
『親友以上の』
わたしの前に座る女性はかなりの恥ずかしがり屋だ。好きだ、ということを。ありのままをさらけだすことを。言葉と表情で上手く隠してしまう。
カフェ『月光』。わたしと彼女が居る場所だ。テーブル席の一番奥。私はグレイのスーツ、彼女は白いカットソーに赤いカーディガン。淡いピンクのフレアスカートという服装だ。実に可愛らしい。
わたし達は今時で言う、「親友以上恋人未満」と言う奴だ。私は彼女のことを好きだ。もちろん友愛ではない。恋愛だ。そして彼女もきっとわたしの事を好きだろう。別に自惚れていうわけじゃあない。
この前彼女が傘を忘れたので相合傘をした時ずっと顔が赤かった。
その前偶然手が触れただけで耳が真っ赤だった。
しかし彼女は頑なに『好きではない』という。私は彼女のことが大好きなのに。それを直接伝えると、照れて背中を叩かれてしまうので、最近は文学的な表現で伝えることにしている。これでも学は有る方だ。勿論彼女も。
「明日は晴れますか?」
今まで黙っていた彼女が口を開く。明日の降水確率は25%。
「きっと明日は晴れますよ」
「雨、止みませんね」
今は絶賛晴天中だ。
「わたしはまだまだ帰りませんよ」
彼女が下を向く。可愛らしい顔がテーブルに向く。彼女と目が合うテーブルにすら嫉妬してしまう私はきっと頭がおかしい。
「今日は少し寒いですね」
今日の最低気温は17度。
「手ならいつでも握りますよ。ほら」
手を握る。柔らかくて小さい手。暖かい。彼女の顔の色と同じように真っ赤だ。
「海が綺麗ですね」
ここは室内だ。
「私は遠浅の海ですよ、貴方に対してはね」
「雨音が響いていますね」
先程も言ったように、今は絶賛晴天中だ。
「今もでしょう?」
彼女がさらに俯く。しかし手は繋いだままだ。というか私ががっしりとつないでいるので彼女が離せないのだ。
「夕日が綺麗ですね」
今は昼だ。
「私の気持ちなんて幾度も言ったでしょう?」
「星が綺麗ですね」
今は12時46分でランチタイムだ。
「貴方の気持ちなんてとうの昔に理解していますよ」
さらに俯く。これ以上俯くと首がもげるのでは、というところまで。赤くなった顔を隠したいんだろうが、髪から出た耳が真っ赤だ。
「虹が綺麗ですね」
今は雨上がりではない。
「私もです」
「明日の月は綺麗でしょうね」
明日の月は上弦の月。
「あなたにだったら良いですよ」
と、言うと。今まで饒舌だった彼女が黙りこむ。
そのままそこそこ長い時間が経ったが、可愛らしい彼女を見ていたらあっという間だった。
「月が綺麗ですね」
今はグッドアフタヌーンだ。
「わたし、死んでもいいですよ」
途端、泣き出す。
こうなることが予測できず、わたしはみっともなくおろおろする。
しかし彼女の顔を見ると、笑顔だった。嬉し泣き、とでも言うのだろうか?
「寒いですね」
今日は立夏。
「わたしの胸はいつでも空いています、あなたになら」
彼女はばっと席を立ち、私の方へ来て、顔をわたしの胸に埋める。
「今日はとても幸せです」
もっともだ。
「わたしもです」
わたしは彼女を強く抱きしめる。壊れてしまうかというくらいに。
彼女は未だに泣いている。ぽつり、と彼女の頭に滴が落ちる。どうやら私も涙を流しているようだ。
私達は、泣きながら親友以上の恋人以上になった。
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