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- Re: 第三回*小説大会!!!【開催中】 ( No.6 )
- 日時: 2016/02/28 09:01
- 名前: 青空苹果 (ID: dDPEYPay)
初めまして。
短編はあまり挑戦したことがないので不安ですが、宜しくお願いします。
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《 NPCの少女と赤いドラゴン 》
______「 ドラゴンのおじちゃん、私もういらないんだって。 」
少女が淡々と、老いた赤竜に告げた。
老いた赤竜は目が見えないのか、少女を見ずにただ呻き声を漏らした。そして赤竜がもうテレパシーすら使えないほどに弱っていることも表していた。
少女の翡翠色の瞳には何も映ることはない。
なぜなら彼女はNPC、ノンプレーヤーキャラクター。意思なき”道具”だから。本来は。
少女と老いた赤竜が出会ったのは”掃き溜め”だった。
プレーヤーからの人気がなくなり、不必要だと判断されたら捨てられる場所が”掃き溜め”。要らないものが沢山あるその場所には、いろいろなものが置いてあった。
使えない武器、使えない魔法、はたまた強い癖になんの旨味もない嫌われ者の敵キャラクター。
そんな”掃き溜め”が、少女は大好きだった。
プレーヤーキャラクターの言う通りに、ただ淡々と仕事する日常の中、そこだけでは”自分”という自我を持つことができるから。
少女は、”掃き溜め”の常連だった。
《……___お前は、まだ捨てられていない存在だろう。》
新人の赤竜はテレパシーで、少女を見るなりそう言った。少女は、「『まだ』ね。」と相槌を打った。そんな少女をつまらな気に見るなり、赤竜は自分のことを語り出した。
赤竜は、ゲームの序盤で出てくる小ボスだった。
圧倒的な攻撃力、減ることのない体力、その存在は終盤のボスには敵わないまでも、中盤並みだった。けれど、赤竜の、所謂”素材”にはあまり良い物はなかった。要は、赤竜は上記で言った”強い癖になんの旨味もない嫌われ者の敵キャラクター”だった。
「私はね、序盤の換金屋の看板娘のNPC。でも換金できる物は金額の癖に壊れやすくて威力も低い武器ばかり。」
少女は、赤竜とは少し違った。周りのプレーヤーキャラクターから好かれていた。”暴力”という形で。
何のバグか、はたまた態とか。何故か少女は攻撃対象に入っていた。何の攻撃力も持たない少女の”形”をした機械を甚振るのは快感のようだった。
「でも、非人道的だってクレームが相次いだみたいで。もう少ししたら、消されるんだって。私。」
少女は、只々儚げな顔で微笑んだ。
+++
「ドラゴンのおじちゃん、私、空が見たい。」
ある日、少女はそう言った。赤竜は重そうな巨体をゆっくりと持ち上げ、少女の側に寄った。
「おじちゃん、乗せてもらうね。」
少女が乗り終わると赤竜は大きく翼を羽ばたかせた。やがて赤竜の巨体は空へ浮かんだ。
混じり気のない、青い空。少女の燻んだ金髪が棚引く。
「ねぇ見て。空から見たら、掃き溜めも綺麗に見えるよ。」
沢山の武器や魔法、キャラクター。それは、空から見ればまお伽話の世界のようだった。
「おじちゃん。私…………まだ、消えたくないよ___」
少女は、掠れ掠れの声で小さく呟いた。苦しそうに。
けれど、少女に為す術はない。
だって少女は、道具だから_____
『データ:赤竜【アンガー】、データ:換金屋看板娘【ティア】を
消去<デリート>致します。』
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