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Re: 投票お願いします!【準備中】 ( No.2 )
日時: 2016/03/14 17:40
名前: 哀歌 (ID: bUOIFFcu)

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登場人物
アイドル・吾妻 実紗/あづま みさ
サラリーマン・吾妻 圭/あづま けい

「お、おとっ、おとと、お父さ…!?」

都市の地下街。
とあるアイドルの悲痛な叫びが耳を貫いた。

「お父さん、お父さん!?何で!?何でいるの、な、ななな何でぇ!?」

そう取り乱しながら、自分を取り囲むファンを押しのけてまでこちらに来て、『俺の』両腕をがっちり掴み、ぐわんぐわんと-----女子高生とは思えないほどの力強さで『俺の』体を揺すった。それに翻弄される哀れなサラリーマン、俺。

お父さんお父さんと連呼されているが。

俺は、君のお父さんじゃ、ないんだけど。

***

「すみませんでした」

数分後。そこには深々と頭を垂れる女子高生にして地下アイドル、吾妻 実紗がいた。

ちなみにここ、家族連れで賑わうファミレスである。

「誠に、誠に申し訳ございませんでした。同姓同名なだけでここまで取り乱し、早とちりし、挙句体をぶんぶん揺するなど…なんたる行為。心よりお詫び申し上げます、本当に、本当にっ、すみませんでしたぁぁぁ!!」
「いいから、わ、わかったから!ほら、とりあえず座りな?」
「うぅ、お優しいんですね…」

いや、そうじゃなくてね。周りの視線がね。と思ったが、そんなこと言って憧れのアイドルからの評価を下げるわけにもいくまい。

俺、吾妻 圭は32にして、アイドルに恋をした。

これだけ見ると痛々しいだろうが、俺は至って本気である。恋をした、というのは少し違うかもしれない。憧れた、というのが正しいだろう。

それは、去年の3月上旬のこと。


(※ここから下は別シーンです)


「ねぇ、わたしのことどう思う?」
「へっ?」

真に迫る表情で問う、実紗。
目は暗い色を宿し、それでいて明るく輝いている。

「惨めだとか、かっこ悪いとかさ」
「え、いや、その…」

微妙に図星を突かれて戸惑う俺をよそに、実紗はなおも続ける。

「わたしはね、そうは思わないよ。
…ううん、思えないの。だって、これまで、もうこれ以上ないってくらいに、努力してきたんだから。惨めとか、かっこ悪いとか思う材料はどこにもない」

あなたは、どうなの?

妖しい輝きを放つ視線から、言外にそんな質問を感じ取り、大の大人が16の女の子に射竦められた。
その質問を…問い正しを反芻し、なぞる。

俺は、どうなんだ。
努力、してみたか。

この少女のように、「かっこ悪い」と言われて疑問に思えるくらいの、気高い努力を1度でも出来たのだろうか。