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- Re: 第四回*小説大会!!【募集中】 ( No.2 )
- 日時: 2016/05/01 20:23
- 名前: リュー (ID: 6Z5x02.Q)
書かせていただきます!
『毎週火曜の21時』
「はぁ………」
小さな溜め息が私の口から漏れる。
そんな、どんよりした私、佐倉香織の気持ちとは裏腹に、空には明る気な色の満月が浮かんでいた。
私がこんな溜め息を漏らす理由は、今向かっている場所にあった。
その場所とは───塾だ。
私が今日から通うことになったのは、道野世塾、中学第一学年三組だ。
塾───道野世塾は、クラスごとに授業時間が決められている。
一組は午後五時から午後六時まで。
二組は午後七時から八時まで。
そして三組は、午後九時から十時までだ。
塾なんて行かなくても、勉強には追い付いていけているのに。
今年中学生になった私を心配した、親の良心だとわかっていても、反抗したくなる年頃なのだ。
でも私は、塾へと向かう。
しばらくあるいた場所に、道野世塾とかかれた看板のある、一軒家が見える。
その一軒家────道野世塾の玄関戸に手を掛け、中には入り物音一つ立てずに教室内へとはいった。
教室と言っても、所謂リビングのような場所で、キッチンまでついてある。
キッチンの周りにある、カウンター席に私は座る。
カウンター席が私のお気に入りの席だ。
すると、珍しくカウンター席の上に落書きがしてあり、小さく『あの子可愛い』とかかれていた。
私は思わず、『あの子って誰?』と思い、筆箱からシャーペンを取りだし
「あの子って誰?」
とかいた。
そして、その上に教科書とノートを広げ、勉強を始める。
その日は穏便にすごし、カウンター席の上にかいた文字には気付かれないままだった。
それから7日後の今日、火曜日。
私の塾は週一回、毎週火曜日にあるため、また、空を見上げながらのんびりと塾への道を歩いていっていたのだった。
と、私は色々なことが気になる。
先週かいた「あの子って誰?」の文字に、誰か気づき、何か付け足した人物がいるのか。
それとも、何も変わっていないのか。
それか、消されてしまったのか。
私は気になって気になって、仕方がなかった。
そんなことを考えていると、塾が見える。
塾内に勢いよくは入り、例のカウンター席に誰もいないことを確認し、座る。
そして、机の上を見る。
するとそこには『同じクラスの女子』と書かれていた。
何処と無く、最初書かれていた字と似ている。
私はそこに
『恋してるの?その子に』
とかきたし、また先週と同じように勉強を始めた。
*****
『恋じゃなくて、多分完璧に好き』
『HooHooー♡』
『おい!』
『で、どんな感じの子なの?クラスのもて女とか?』
『違う。俺が好きなのは───後ろの席の子が好きなんだ』
『ふーん。あ、私の席の前にも「佐伯」って男子がいるよー』
『へー。あ、お前名前は?』
『佐倉香織』
『ふーん。あ、お前のところの教室って、席順決まってる?』
『席?五十音順だけど』
『あ、俺の所と一緒じゃん。俺の所は、俺ともう一人女子以外さ行の人いないけどな』
『ふーん。ねー、あんたも名前教えて』
『今度な』
何日もと言う日数、塾に通い、それと同時に顔も名前も知らない、同じ塾生徒との会話文は増えていった。
会ってみたいけど、どんな奴かもわかんないのに、探しようが無い。
それに、相手は私の名前を知っているけど、私は相手の名前を知らない。
多分、来週にはわかるだろうが。
私は、会話文を繰り返し、やや黒に変色してきたカウンターテーブルの机の上を消ゴムで消し、元の綺麗な木材の上へと戻す。
そして、小さな普通の100均で売っていた付箋に『早く知りたいから、絶対教えてよね、名前』と書き、机の上に張り付ける。
そして、教科書やらノートを取りだし、その付箋の上に置いた。
*****
次の週の火曜日。
また塾へと向かう。
だんだん塾に馴れてきたせいもあり、塾へと行くのが楽しみになってきた。
塾が見え、スキップにも近い足取りで塾内へと入り、いつものカウンター席に座ろうとした。
………が。
誰かが座っているのだ。
男の子───凡そ私と同い年の、男の子が。
『今日はアイツの返事が見れない』
私の脳裏にはそんな言葉が。
嫌々、違う違う。
アイツのために塾に来てるんじゃないし、アイツの返事を楽しみにもしていない。
───けど何故だろう。
心が苦しい。
アイツに返事が返せないなんて、悔しい。
アイツに申し訳ない。
アイツに合わせる顔がない………合ったこと無いけど。
でも、何よりも───アイツの名前を知りたい。
折角仲良くなれた気がしたのに、今返事をしなかったら何故か遠い存在になってしまう気がした。
塾に来てから一時間が経過。
「はい、今日はここまでー。気を付けて帰りなさいねー!」
先生がそういい、生徒達は立ち上がり帰り始める。
私もその中に混じって帰ろうとした。
が。
そう、しかし。
私の腕を誰かが掴む。
思わず振り向く。
其処にいたのは、今日カウンター席に座っていた男の子だ。
「なんですか………?」
俯きがちに言う
初対面だとこうなってしまうのだ。
するとその男の子は
「佐倉香織──で合ってるか?間違えたら御免」
そう言う
まさかと言う表情で相手を見る。
相手はニカッと笑っていった。
「俺が、佐伯終夜。この付箋、お前のだろ?」
そういって、私がカウンター席に張った付箋を私につき出す。
そっか………彼が───佐伯くんが………
あの、カウンター席で私と話していた、男の子なのだ。
*****
「やっと会えたなー、香織」
「いきなり下の名前?」
帰り道。
途中まで帰る方向が一緒なので、必然的に一緒に帰ることになった。
「佐倉って呼んだ方が良いかー?」
「どちらでも。私は、佐伯って呼ぶけど」
冷たい声で言う。
こんな私、同じクラスの人は想像できないだろうな。
「君づけくらいしてくれよー」
「いや」
私は顔を背ける。
すると佐伯が
「お前んち此処だろ?」
といい、一軒家を指差す。
「ん、そだけど。何で知ってんの?」
今日が初対面で、家の場所なんて教えたはず無いのに。
でも、佐伯はニカッと笑って
「いいじゃんか」
と言う。
まぁ確かに、どうでも良いことだ。
「またねー」
「またな」
両者共に手を振る。
すると去り際に佐伯は、大きく手を振り、こう叫んだのだ。
「お前、教室といるときと雰囲気違うなー!そっちの方が可愛いぞー!」
嘘でしょ。
まさかまさかの、同じクラスの人だったのだろうか。
まぁ、男子に1㎜もの興味がない私が、クラスの男子を見て初対面だと思ってもおかしくないが。
でも、それだったら───
『後ろの席の子が好きなんだ』
あの言葉は───。
私が好きだと言うことになるではないか。
嘘でしょ
最初で最後の、告白だと受け取っても良いのだろうか。
───わからない。
でも、良い。
明日聞ける。
だって彼と私の関係は、単なる塾仲間ではないのだから。
「クラスの友達」
だから。
だから、明日聞ける。
明日聞こう、直接。
少しでも、自分なりに、ちっぽけな勇気を出して。
終わり!
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