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Re: 第四回*小説大会!!【募集中】 ( No.3 )
日時: 2016/05/08 05:51
名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)

『新月鬼』

パァン… 乾いた銃声が一発。誰もいない港に響く。

私の目の前にいる男は胸から綺麗な赤い色の血を流してとっても苦しそうな顔をしている。


「あぁ……とっても綺麗ね…持って帰りたいくらい」

拳銃片手に顔を歪ませたような笑みを浮かべる私は最高に不気味だろう。

「でも、死体は残しておかないと…」

鬼さん(警察)との楽しい鬼ごっこの続きが出来ないものね。

「さようなら。名前の分からない誰かさん♪」

私の声は暗闇の中に溶け込んで消えていった。



「また出たらしいよ!あの殺人鬼」

「あー、なんだっけ?新月鬼とかふざけた名前で呼ばれてるあの殺人鬼?」

「そうそう!」

職場へ向かう電車の中。女子高生二人組の会話が耳に入る。

新月鬼。犯行はすべて新月に行う殺人鬼の名前。

「私も有名になったわねぇ…」

思わずふふっという笑いが零れる。

新月鬼の正体はこの私。一見ただのOLけど新月の夜には証拠を一切残さない殺人鬼。

と言いつつも本当は警察との【 鬼ごっこ 】を愉しんでいる快楽殺人鬼。

「でもさー、私らは安心だよね。狙われてるのって【 男 】ばっかりだし」

「何で男ばっかりなんだろねー。趣味かなー?」

ごめんなさい。男の死体を見たいだけの趣味です。はい。すみません。

心の中で謝っているとすぐに会話が切り替わる。

「そう言えばさー、あの曲聴いた〜?」

「あー、聴いた!」

女子高生っていうものは一つの話題をもっと長く話すことはできないのかしらね。

すぐに変わる女子高生の会話を聞いて溜息を一つ。

「次の新月の日はどんな男にしようかしらねぇ…」

ポツリと呟く私の言葉が誰かの耳に届いていませんように。



「今日はイケメンを殺したい…イケメンの死体を見たい…」

今日は新月の夜。獲物を求め歩き回る私。

「ねぇ、そこの綺麗なお嬢さん。そんな暗い色の服を着ていたら闇夜に溶け込んで見えないよ」

振り向くとそこにはなかなか顔の整った男の人。

「あら、そう言っているわりにあなたは私の事を見つけてくれたのね」

僕は特別さ そう言って微笑むイケメンさん。

「お嬢さん。美味しいワインのお店知ってるんだけど……一緒に飲まないか?」

「ごめんなさいね、私これでもまだ18歳なの……。罪を犯すなんてしたくないわ」

今28歳だしもう殺人と言う名の罪を犯してばっかりだけど…うん。黙っておこう。

「おぅ、そうか…でも僕は君と楽しい一夜を過ごしたいなぁ」

私の長い髪を掬い上目遣いで私を見つつ軽くキスをする。

「…誘ってる、という解釈でいいかしら?」

「あぁ、勿論」

このまま上手い事人気のない所に連れていければすぐに殺せる。

「じゃあ、さ。ちょっと遠いけどなかなかいいホテルがあるの。そこに…一緒に行ってくれるかしら?」

彼の腰に腕を回してギュッと抱き締める。

「意外と積極的な子なんだね。いいよ、そのホテルに連れて行ってくれるかい?」

「えぇ」

さっと彼から離れ人気のない所を探しながら歩き出す。

「そう言えば、まだお互いの名前を知らないね。僕は夜咲 月影。君は?」

「春義 瑞樹」

勿論偽名。いま即興で考えた偽名。

「瑞樹ちゃんか。可愛い名前だね」

ありがとう。偽名を褒めて貰えてとっても嬉しいわ。



「ねぇ、瑞樹ちゃん? ホテルなんてどこにもないじゃん」

「あるわけないじゃない。こんな所にホテルなんて」

人気のない狭い路地裏に彼__月影を連れ込んだ。

「ばぁか。あんたなんかとホテル行くと思ってたの?どんな脳内してるのよ」

さっと拳銃をだして彼の腹に押し当てる。

「いいこと教えてあげる。この頃新月に現れる殺人鬼って…私の事。
春義瑞樹なんてそんなの偽名だから。それと…さようなら」

「んんんん……ッ!!」

何かを叫ぼうとする煩いお口は手でチャック。

パァン…乾いた銃声が一発。新月の闇に溶け込んでいく。

「狂、てる…」

まだ生きていた彼の口から漏れだす息と言葉。

「もう一発やらなきゃダメか…」

今度こそ、さようなら。夜咲月影さん。

パァン…



『昨日未明、路地裏から男性の死体が発見されました。
男性の死因は銃殺。昨日は新月だったということから警察は通り魔である【 新月鬼 】の犯行とみて捜査を進めている模様です』