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- Re: 東方で合作しよう!(魔夜様呼び出し) ( No.108 )
- 日時: 2016/11/18 20:38
- 名前: ダモクレイトス ◆MGHRd/ALSk (ID: 7PvwHkUC)
- 参照: この短編は二分割しまう!
1年前に来た、居候の少女——外の世界から来たという、茶髪をサイドテールにした、目付きの鋭い娘、名を今金アリスという——に、背中を護られた。幻想郷に来て1年しか立っていない、若い娘に護らられるなんて。プライドが傷ついたわ。いかにイリス——名前が同じなので、彼女を略称してそう呼んでいる——が、勤勉で労を惜しまないとはいえ。
「あの娘から言わせれば、年や時間なんて関係ない、のでしょうけど」
古書の一文を思い出す。私の力は限界がある。その領域を多少でも伸ばし、起きうる絶望的なすべての事象に少しでも対抗できるようにせねばなるまい。しかし、我々は何をしようと定められた領域に嘆き頭を抱え、終焉を迎えなければならないのだろうか。という、奴だ。そんなことはあってはならないと、にべもなく考える。
煙草をふかす。幻想郷で生まれたアークマンチェスターなる種類だ。ほろ苦さの後に広がるフレーバーな甘みが悪くない。魔界にいたころの癖で研究の時につけている眼鏡に煙が映った、その瞬間だった。
まるで、巨大な弾幕と弾幕同士がぶつかり合ったような、大音量が我がアリス挺に響いたのは。その音は振動となり体を揺さぶる。事の重大さを如実(にょじつ)に私に伝えてくる。
「ぶふぅっ! なっ、何の音っ!」
慌てて立ち上がる。煙草を握りつぶし、スペルカードを手に取る私の前に、左腕の飛んだ痛ましい姿の上海(しゃんはい)人形が寄ってくる。その間10秒程度。どうやら先程の、おそらくは爆発か何かと思われる音の正体に巻き込まれたのだろう。私は辛そうな顔をする人形を優ししく撫で、上海人形が指さす方へと足早に歩きだす。
「上海人形たちが何か失敗したのかしら。あの子たちに難しすぎる指示は出していないはずだけど」
私の最終目的は、愛する人形たちに完全なる自立機能を与えること。そう、式神に劣ると揶揄(やゆ)される彼女らを本物のステージへと立たせて。自らの研究の価値の高さを、彼女らの意義ととともに認めさせること。
失敗は許される。魔女として捨食(しゃしょく)の議を終了し、捨虫(しゃちゅう)の議にとりかかり、完全なる魔法使いも近い。食事は好きだし、日も浅いから、食事をとったりはするが。正直、時間というものは幾らでもある。幻想郷が続く限り、私はこの未完の魔法の完成に没頭し、力を伸ばしていこう。
問題は、失われた人形たちだ。先程の娘のように片腕だけなら、再生も可能だが、全身消し飛んでいる者が多数いても可笑しくない。たかが人形なのだから、そう躍起(やっき)になる必要もないだろう。とは、隣に住む職業魔法使いのお嬢さんが放った言葉だったか。
「違うのよ魔理沙。私の娘たちには魂があるわ」
アンティークコートハンガーにかけられたケープを素肌に羽織り、いざ煙が渦巻く爆心地と思しき場所へ進む。自分の周りに気流操作の魔法を纏わせ、数歩歩いた先には。吹き飛んだ壁と抉れた廊下。lそして大量の人形たちが残骸となって横たわっていた。
「嘘。これは——そんな、まさか」
よく見れば、全ての人形たちが交互ついになっているじゃない。蓬莱(ほうらい)と上海が争いあったかのような感じと言えば良いかしら。もちろんそんな指示は出していないし、私が酔った勢いなんかでそれを口にしたとしても、セービング機能により無効になるはずだ。
思考が追い付かない。誰かが機能を停止させ、再入力した。いや有りえないわ。確かに私は研究に没頭し、タバコを吸いながら本を読んでいたけれど、敷地内には防犯用の結界がある。何事もなくそれをかい潜り、データの改暫を行って、大爆発を起こすほどの戦闘を行わせるなど。
——誰かの視線を感じた。
「くっ! 何者っ? 隠れてないで出てきなさい! 魔光(まこう)デヴィリーライトレイ!」
人形を封じれば、私をどうにかできると思っているのか。なめるな。とっ捕まえてやる。上海たちの仇だ。そんな思いで光のレーザー砲を私は気配がした方へと放つ。しかし、放ったはずのデヴァリーライトレイは途中で掻き消え、霧散(むさん)した。
そういえば、他の人形たちは皆、心を壊され殺し合いをさせられたけど、あの上海人形は無事だった。何がどうしてだろう。たまたま違うところで行動していた彼女が、爆発音が気がかりで確かめに来たというところか。
「シャンハーイ」
くぐもった声。背後から。私は上海人形と正対しながら飛び退り、スペルカードの準備をする。また先程のように不発する可能性があるが、抵抗しないわけにはいかない。露骨(ろこつ)な鳴き声を上げながら、先程の左腕が欠けた上海人形が空を切り裂くように走り出す。
「苦しいのね。開放してあげるわ」
彼女の魂が血の涙を流しているのが分る。何者かによって誑かされている証だ。その術者をおそらくは逃してしまった情けない主人として、介抱してやるのがせめてもの礼儀だと思う。先程光の符を放ったように、何も私は人形魔法しか使えないわけではない。戦えるのだ。
「風符(ふうふ)ブレイブウィンドッ!」
解き放たれた鎌風はまっすぐに飛び、上海人形を縦一文字に引き裂く。断腸(だんちょう)の思いで、崩れ落ちる人形が落ちゆくさまを私は見つめていた。そして完全に機能を停止したことを確認し、彼女の亡骸(なきがら)に手を差し伸べた。
「ねぇ、ごめんね。貴方たちの危機に気付けない駄目な主人で……」
こぼれ落ちる謝罪は届いていないだろう。でも掛けずにはいられない。弾幕勝負や彼ら自身のミスによるものなら、まだあきらめも付くだろう。しかし、目の前の人形が傷ついた理由は、明らかに防げたもので、主人たる私の失態だ。
「見せてちょうだい。貴女が見た光景を……そして、感じさせて。貴女が感じた世界を」
それぞれの人形にはメモリがある。正確には魂により焼き付けられた記憶室のようなものだ。過重なる損傷を受け、思考を停止した状態でこそ、その記憶は鮮明に光を放つ。つまり真実的に無駄な情報なく確認できる。
義務がある。死者を看取る人間がどんな苦痛を味わっているか。今なら分る気がするわ。誰だってこんなバチの当たりそうなことをしたくないのだから。固唾(かたず)を飲んで目を通す。ここにヒントがなければ、手詰まりだ。
「えっ? 嘘、これって……イリス!?」
ちらりと映った人影は意外なものだった。以外でとても身近な。その名を何度呼んだだろう。2人で一緒に歩いていると、どっちをどう呼べばいいのかと聞かれて、即興で愛称を付けた時を思い出す。イリスは際限なく、不思議なこと、つまり異変に足を突っ込むタイプで……退屈しなくて。
短い間ではあるけれど、濃密な時間を過ごしてきた。けれど、記憶は嘘をつかない。私は彼女のことをそれなりによく知っているつもりだ。疑いたくはない。だけど、横たわる上海の記憶を無視することもできないだろう。確かめる必要があるわ。だから、彼女の言動や行動を思い起こす。
「香霖堂(こうりんどう)に行く、と言っていたわね」
早朝、確かにそう言って出ていった、上品な狐色の瞳をした少女。かわした会話は少ないから、確かに覚えている。香霖堂といえば、魔法の森の入り口——人里前のほうのはずだ。あの子は朝の7時にでて、今は午後2時を少し過ぎたころ。徒歩で移動するにしても、道さえ覚えていれば2往復はできるはず。犯行は可能だ。
「行きましょう。霖之助(りんのすけ)さんに話を聞いてみないと」
————————
こんな感じになりました。正直、自分でも読みづらい気がします。キャラクタがアリス一人しかいないのもあって、台詞も全然少ないですしね。今金さんが居候し始めて1年。ついに今金さんに猜疑の目のかかる異変が起こってしまった……みたいなシチュエーションです。まぁ、二分割ですのでもう少しよろしくです。
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