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Re: あなた様の作品にご助力を! ( No.25 )
日時: 2017/09/27 22:23
名前: 緋紅赤朱 ◆EtcmJTqYfU (ID: hgzyUMgo)

>>YCの人様

初めまして。緋紅赤朱と申します。
とりあえず、できるかどうかは作品の方を拝見しないと分かりませんので、作品名やURLを教えていただけないでしょうか。
元々二次板にあったと言うことなので正直難しいとは思いますが、一応お願いします。

>>四季様

一応冒頭部分が出来ました。
ハロウィンの話ということで、本編との時間軸はあまり関係ないものとして、完全なる番外編という形で執筆した形です。

冒頭は、ノアが悪魔の気配を感じ取ったことを仄めかすような部分を入れるために、今回お見せする分はノアがよく出ておりますが、全体のうちの一部ですのでお許しください。
齟齬もなのですが、誤字脱字、キャラクター性など気になるところがありましたら、ぜひお声がけください。



 秋の涼しい風が肌を撫で、夕陽のほのかな暖かさがそっと包み込むなか、城下町はそわそわとした期待と、活気で賑わっていた。路頭にはかぼちゃを彫って作ったキャンドルがいくつも並び、花道のようになっている。もうすぐ夜の闇に包まれそうな世界は、幻想的なキャンドルの明かりに包まれた。

「うわー、綺麗だねー」

 買い出しのために街に降りていたノアは久しぶりに見る天界のお祭りに目を輝かせた。ここしばらく人間界へ降りていたため、天界の行事を目にするのは久しぶりなのである。日本の、親しい友人と小規模にパーティーをするだけのものも楽しそうではあったが、やはりハロウィンはこうでなくては。
 本日の日付は十月の三十日。明日、国王が主催で行う一大行事の準備のため、一護衛隊員に過ぎないノアまでも城下への買い出しにかり出されていた。両腕にはたくさんの買い物袋の紐が絡み付き、腕の筋肉はとっくにぱんぱんになるほど疲れきっていた。

「それにしても、盛り上がってるなぁ」

 明日開催されるイベント、それはハロウィンの締めくくりをかざる、エンジェリカ全体を舞台としたオリエンテーリングだ。チェック箇所を巡り、そこで出される課題をクリアしてスタンプを集める。見事一位となったら、王様が可能な範囲で願いを聞いてくれるというものだ。
 このイベントはそれほど年季のあるものではなく、今の王女であるアンナが幼い頃、人間界の遊びを調べていた時に見つけたものを自分も見てみたいと言い出したことから始まったらしい。
 季節の行事を王族がわざわざ行うのはこのような理由あってのことだ。今となっては国中を盛り上げるために無くてはならないイベントの一つではなかろうかとノアは考えた。
 そしてその期待と盛り上がりは、今年特に大きなものとなっていた。今年は何と、王女のアンナがオリエンテーリングに参加することになっているからだ。
 きっかけは勿論、王女自身がやりたいと言ったからである。その時の会話をノアは思いだし、少し身震いした。

「あの時のヴァネッサさん、怖かったなー……」

 ヴァネッサはアンナにとって厳しいお母さんのような人であり、いつも奔放にふるまうアンナに釘を刺したり、時にはきつく雷を落としたりしている。確かに王女はもっと王族らしく振る舞う必要があるのだろうと、第三者のノアも納得はできるが、少しぐらい自由に遊ばせてもいいじゃないかとも思ってしまう。
 初めは彼の上司であるエリアスがヴァネッサを諫めようとしたのだが、いつもの通り大喧嘩になりそうになった。見るに見かねたジェシカがヴァネッサを丸め込み、アンナを持ち上げて『王族として相応しい態度で振る舞う』と条件をつけた上で、ようやくアンナのオリエンテーリング参加を認めさせることができた。天真爛漫に、アンナには難しい条件を、ヴァネッサに対してはアンナの要求を認めさせたあたり、ジェシカは本当は交渉術に長けているのではないかと疑うくらいに鮮やかであった。
 ヴァネッサを認めさせてからの話は簡単だった。ヴァネッサさえ認めさせてしまえば彼女がそのまま国王に認めさせることができる。とんとん拍子で進んでいき、国民たちは王女の参加をいたく喜んでいるので、今さらヴァネッサ達がもし考え直してしまったとしても退けなくなってしまったのである。

「さてと……帰りますか」

 日もすっかり隠れてしまいそうになっているため、ノアも城へと向かう足取りを早める。城ではアンナがヴァネッサと明日何を着るのか考えているはずだし、エリアスはそんな王女の警備をしている。ノアに買い出しを頼んだジェシカも準備にてんやわんや、きっと忙しくしているだろう。自分だけのんびりしていたら後で何と言われることか。
 楽しい一日になりそうだ。そんな予感はするけれども、彼の中に一抹の不安がよぎりつつあった。彼の持つ類い稀なる感度のセンサーが、危険をうっすらと告げていた。明日は楽しくなるだろう、けれどもそれと同時に忙しくなるかもしれない。
 彼は、エリアスと迅速に話をする必要性を感じ、羽ばたいた。折角の祭りを、王女の楽しみを邪魔してなるものか。それこそが、自分達の使命だろう? と自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。




「ねぇ、ヴァネッサ。そろそろ大丈夫じゃない?」
「そうですね……これなら大丈夫かと思いますが……。王女、そこで何度か跳ねてみてください」

 一方城では、多くの国民の前に立つということで、ヴァネッサとアンナはわざわざ服職人やデザイナーに相談しながら、明日切る服装を考えていた。ハロウィンの催しはオリエンテーリング、城下町を広く歩く必要が出るうえ、ヴァネッサもいくつかのチェックポイントでは体を使うようなゲームがあることも知っている。
 そのため、いつものようにドレスを安直に着せる訳にもいかず試行錯誤を繰り返し、何とか激しく動いてもはしたなくならないよう工夫をしていた。何度かその場でジャンプしたアンナだったが、スカートが翻るようなことも、衣服がどこかはだけるようなことも無かった。

「いつもと違ってこういうところも気にかけないといけないのね。ありがとうヴァネッサ」
「いえ、お気になさらず。くれぐれも明日は相応しい振る舞いを忘れないでくださいね」
「分かってるって」

 鏡に映った新しい衣装を見ながら、アンナは上機嫌に笑っている。早く脱いで皺にならないようにしまっておきなさいと、ヴァネッサが諌める。もうちょっとだけ、そう言って、新しいおもちゃを手に入れた子供のような態度で彼女は鏡の奥の自分を見つめる。
 先が思いやられると、ヴァネッサはため息を一つ吐き出して、彼女が飽きるのを待つ。そうしているとふと、アンナは何か気がかりなことができたように、ヴァネッサの方に向き直った。

「そういえば、オリエンテーリングって二人一組なのよね?」
「ええ、そうですね」
「私のペアは? お目付け役にヴァネッサ?」
「そうとも考えましたが、この行事は男女のペアで参加します。それに、私だと警備をする目的が達成しづらいです。そのため、私としては少々不本意ですが今回はエリアスに頼みました。護衛隊長ですし、適任といえば適任ですかね」
「エリアスと!? ありがとう、ヴァネッサ。楽しみだなぁ」
「楽しむのは私としても構いませんが、浮かれすぎた態度をとるのはやめてくださいね。国王様もお怒りになられますよ?」
「確かにそれは不味いわね……。約束はちゃんと守るわ」

 ここまでアンナ好みに整えたのだから、それくらい守るのは当たり前だとヴァネッサは淡々と述べる。はーいと棒読みでアンナも返事をしたが、その言葉はきちんと理解していた。今回のアンナのわがままを叶えるためにどれだけ周りが苦労していたか、自分もちゃんと知っているつもりだ。だからこそ、今回はちゃんとヴァネッサの言いつけを忘れないでいようと思う。
 そろそろ着替えなさいと告げて、他の仕事があるヴァネッサはその場を後にした。確かに、明日着るべきものを今日ずっと着てしまっていては意味がないため、彼女もすぐに普段のドレスに着替えた。

「エリアスと二人っきりかぁ!」

 何だかデートみたいだなと彼女は感じた。着替えも済み、誰もいなくなった後の部屋で一人、彼女は林檎のように顔を赤らめた。普段はそういう風に意識はしていないのだが、シチュエーションが整っているのだと思えば、容姿端麗なエリアスを思い出すと赤面せざるを得ない。
 彼自身忠誠心がとても厚く、いつも味方になってくれてとても優しいことも、その恥ずかしさや照れを増長させていた。きっと、私の相棒が自分だとわかるとエリアスは喜ぶだろうと、彼女は考えた。

「早く明日になって欲しいなぁ」

 呟きながら見上げた空に浮かぶ満月は真ん丸に見えたけれど、ほんの少しだけ、欠けていた。