リクエスト依頼・相談掲示板
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- 第二回*小説大会!!【閉会】
- 日時: 2016/02/27 15:59
- 名前: リィナ ◆/73ORiYgDY (ID: VfitXk9z)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/lndex.cgi?mode=view&no=430
小説大会を開催したいと思います!
【開催期間】
2016年2月 1 日〜2016年2月10日〈小説大会〉
2016年2月11日〜2016年2月17日〈投票期間〉
2016年2月19日〈結果発表〉
【ルール】
参加したい方だけお読みください。
一週間の間、このスレに“短編の小説”を投稿してください。
一週間経ちましたら、“小説を書いていない方、または参加していなかった方”が、
その小説のどれか一作に投票してください。
コメントをするだけでいいです。
【追伸】
わからないことは質問してくれたらよろしいです。
小説(短編)は二次でもコメディでもシリアスでも、なんでもいいですよ!
【参加者・作品】
ネクロフィリアの少年少女 稲波零都-藍沢奏音…紫音 様
作品はこちら>>5
月色の手紙……………………………………………雪 様
作品はこちら>>6
紙ヒコーキ……………………………………………玻璃 様
作品はこちら>>10-11
【小説大会優勝者 一覧】
*第一回小説大会優勝者*
作品『カニバリズム』紫音 様
- Re: 第二回*小説大会!! ( No.3 )
- 日時: 2016/01/31 21:08
- 名前: 雪 ◆jYj5cLSwSw (ID: dP9cSz6y)
いえいえ、どういたしまして(〃д〃)
文字は、前回と同じで3000字程でいいのでしょうか。
- Re: 第二回*小説大会!! ( No.4 )
- 日時: 2016/02/01 17:48
- 名前: リィナ ◆/73ORiYgDY (ID: w6TIyM.w)
お返事遅くなりすみませんっ!
はい、3000文字程度でOKです!
ご参加して下さるんですか!!?
>>2のコメ、トリップ付け忘れてしまいました。
- Re: 第二回*小説大会!! ( No.5 )
- 日時: 2016/02/01 19:34
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
ネクロフィリアの少年少女 稲波零都-藍沢奏音
「零都!これスッゴイ綺麗に出来たよ!」
「あー、綺麗綺麗」
「棒読みするなーッ、そもそも全然見てないじゃん!」
ムーと子供の様に頬を膨らませる少女___藍沢奏音。
奏音の言う【綺麗なモノ】はホルマリンに漬かった一人の男の【死体】
こいつも俺も、同じ性癖。ネクロフィリア【死体性愛】と言う性癖。
といっても俺は先天性…つまり生まれつき。奏音は後天性と言う違いがある。
たまに俺の部屋に来ては自慢の死体を見せてくる。
最初の時は何とも思わなかったけど今じゃただ鬱陶しいだけ。
「お前本当に性格変わったよな。あの引き籠り時代に比べて」
「あー、あの人生最大病み期引き籠り時代ね。確かに大分変ったなぁ…。あの頃は全然人とも話せなかったし」
久々に昔の話でもしよっか。なんてニコッと笑って言ってくる。
自分の傷を自分で抉る行為をよく出来るもんだ。なんて思いながらも昔の話を始めた。
奏音と和音と俺は幼馴染。
和音と言うのは奏音の双子の妹。5歳の頃に親を食べた【食人性愛者】。
親が喰われたショックなのか奏音は人には見えない【壁】のようなものを作り出した。
無邪気でよくしゃべる奏音がいきなり口数が少なくなり一気に冷たい性格になった。
小学校までは何ともなかった。 奏音だってちょっとクラスの中で浮いてるかな、程度。
でも、中学校に上がってからある噂が流れ出した。
【カンニングをしている藍沢奏音】
テストで常に満点近くをとっているという理由で『カンニングだ』といわれてそれが噂となって学校中に流れた。
その噂のせいで奏音は孤立した。 そんなことを和音から聞いた。
「ノンちゃんはカンニングするような子じゃないッ」
涙を目に溜めながらそう、俺に言って来た。何度も、何度も泣きながら繰り返してた。
結局中学時代は奏音は学校中の嫌われ者のまま卒業をした。
元々成績の良い奏音は推薦で頭のよい高校へ進学した。
和音も成績は下の下だがスポーツ推薦で陸上の強豪校へ。
成績の中の中の俺は地元の高校へ。
小学校から中学までずっと同じ学校だった俺たちは高校でバラバラになった。
「あ、零都。久しぶりだな」
「んー?あ、リー」
高校2年の冬。奏音と和音の兄、梨音と久々に会った。
現在社会人のリー。仕事が大変で疲れているのかどこかやつれているように見える。
「あれ、奏音と和音は?一緒じゃないのか?」
スーパーのレジ袋を持っているのを見る限り買い物に行っていたのは一目瞭然。
昔はよく奏音と和音もついていたけど今はいない。
「あぁ、和音は部活の合宿なんだよ。1週間前から」
へぇ…と相槌を打ち質問を重ねる。
「じゃあ奏音は?」
一瞬にしてリーの表情が変わった……気がした。
「奏音は……【 ずっと 】部屋にいる」
どこか心配した雰囲気を漂わせるリー。
「ちょっと前からずっと部屋から出て来てないんだよ」
「奏音が…?」
そう。1ヶ月くらいずっと。その言葉が衝撃的すぎた。
数分間、俺とリーの間に重い空気が流れた。 とっても重い、静かな時間。
それが耐えられなくなり先に口を開いたのは俺。
「なぁ、リー。一回奏音に会ってみてもいいか?」
何でこんな事を言ったのか自分でもわからない。
でも、奏音の事が心配になって、気づいたら言葉か零れ落ちていた。
「いいけど…、彼奴が出るかどうか」
それでもいい。そう言って藍沢家へ行った。
結論から言えば結局出てこなかった。
中から物音すらしない。もしかしたら居ないんじゃないのか。死んでいるかもしれない。
そんな事すら思ってしまった。
結局出てきたのは俺が高校3年になった頃。
本当はもっと前から出て来ていたらしいけど俺に会いに来たのは高3の春。
「どうしよう、零都。死体腐りそう」
それが第一声。 しかも、真顔で。
よく話を聞いたら奏音が引き籠りになった原因と言っても良い男が家まで押しかけてきて恐怖のあまり殺してしまったらしい。
どんどん冷えて血の気も失せていく死体を見て【綺麗】だと思って保存したかったが保存の仕方が分からなくって俺の元まで来たとか言っていた。
「あの時奏音が玄関先で言った第一声は一生忘れない」
「忘れろ、マジで忘れろ」
思い出して恥ずかしくなったのか両手で顔を覆い隠す奏音。
「なら尚更忘れないようにしなきゃな」
ケラケラ笑う俺とそれを睨みつける奏音。
いつまでも、こんな日々が続けばいいと願う…。
【ネクロフィリアの少年少女 稲波零都-藍沢奏音 fin】
- Re: 第二回*小説大会!! ( No.6 )
- 日時: 2016/02/01 20:44
- 名前: 雪 ◆jYj5cLSwSw (ID: dP9cSz6y)
はい!駄作ですが投稿させて頂きます!
さっき、小説投稿しようとしたら壊れたので、遅くなってしまいました。
「月色の手紙」
私はずっと一人だった。今までもこれからも。
ディズニーランド?何それ。ご飯はお惣菜ばっかり。ケーキ?食べたことない。
ジュースも飲んだことない。ベッドも持ってない。ランドセルはぼろぼろで、本は三冊しか持ってない。
お小遣い?貰ったことない。お年玉も一回ももらってない。いとこもいない。
妹もいなければ弟もいない。姉もいなければ兄もいないーーーーーー。
映画なんて見たことない。ゲーム機なんて持ってない。えんぴつけずりもないし、ノートはあと五ページ...。
お父さんには会ったことない。生きてるのかな?死んでるのかな?お母さんだって一番新しく見たのは一週間前。
親友が殺された。そう聞いた時は失神した。ようやく起き上がったものの、ナイフで背中を刺され、出血多量で死んだ。そう聞いた時、また失神した。
みかちゃんーーーーー私の親友だった子は、たしかこんな名前だったよね?
私の名前はなんだったっけ...?
血だらけで、死後、すぐに発見されなかったため白骨化した死体を見せられた時は目を見開いた。
でも、また失神しないように足を踏ん張って、少女の骨だけ...がいこつ、死体を凝視していた。
...警察の方は、
「美香ちゃんを殺害した後、ナイフを放り捨て逃走した」という単純な事件と見ている
らしいです。
ただ、逃走をしたような怪しい人物を誰も見なかったということで、公園に行っていた
という美香ちゃんの父親が怪しいと見ているらしいです。私もそうだとは思いますが、
美香ちゃんは虐待をされていた訳では無いと思いますし、優しそうな方でしたし、違うと思います。
きっと、残虐な真犯人がどこかにいるのだと思います。
その後、カウンセリングルームにいそうな人に聞かれました。本当に、カウンセリングを
受けているようなかんじでした。
「心当たりは?」
と問われ、
「あるはずないでしょう!あの...子が...」
と叫んで泣いてしまい、その後はわかりません。
ただ、起きたらこの家にいて、その後わんわん泣きました。
そして、今手紙を書いているということです。
美香を殺した犯人は、誰なの!
*
さっき、電話が鳴りました。
美香のお兄ちゃんでした。
電話に出て、言われた言葉はーーーーーー
「美香を殺したーーーーー真犯人は、優月、お前だ」
この手紙が、見つかりますように。
*
「速報です。山形美香さん(14)を殺した真犯人が、今まで美香さんの父親と疑われていましたが、
なんと、美香さんの親友であった優月さん(同じく14)が自首してきたとのことです。」
- Re: 第二回*小説大会!! ( No.7 )
- 日時: 2016/02/02 10:21
- 名前: はずみ (ID: /x8osLDz)
参加してもいいですか?
- Re: 第二回*小説大会!! ( No.8 )
- 日時: 2016/02/06 15:31
- 名前: リィナ ◆/73ORiYgDY (ID: w6TIyM.w)
しばらく留守にしてすいませんっ!
はずみさん、初めまして。ご参加していいですよ!
というか参加してください!
- Re: 第二回*小説大会!!【開催中】 ( No.9 )
- 日時: 2016/02/08 21:11
- 名前: 玻璃 (ID: t5qrQfWq)
初めまして、玻璃と申します。
不束者ながら、ぜひ参加させていただきたいのですが…
文字数は3000文字程度…というとは必須でしょうか…?短編に慣れてない者でして…
合わせる努力は致しますが、もし越えていいならそうさせて頂きたく…
いえ、3000で!というのならそうします。わがまま言ってるのはこちらですし、気兼ねなく教えてくださいませ
加えて、締切期限は10日でよろしいのでしょうか?理解力が乏しくて不甲斐ないです
- Re: 「紙ヒコーキさん」 ( No.10 )
- 日時: 2016/02/10 19:43
- 名前: 玻璃 (ID: t5qrQfWq)
不束者ながら参加させていただきます。
短編の基準が分からず、2スレッド使う形になると思います…
もし、参加条件などを満たしていない場合は、削除いたしますので申しつけください。
「紙ヒコーキさん」
どんなに頑張っても、届かないものがある。
でも欲しい。
あなたは、どうする?
*
「ごめん、先行くね!バイバイ!」
友達にそう叫びながら、身長148cmの橘ちあきは教室を飛び出した。
自分より大きい荷物にふらつくのも、髪がぼさぼさになるのもお構いなしで、全力で廊下を駆ける。
梅雨入り間近のこの頃。湿った空気が鬱陶しい。
ばたばたとちあきの足音が響く。転びそうになったり、階段から落ちそうになったり忙しないが、小柄な体は人の間を器用にすりぬけ、一番で昇降口を突破する。
そのまま外へ出て、校舎を回り込んで自転車置き場を抜けると、一際目を引く桜の気が見えてくる。然程大きくはないが、その姿は堂々たるものだ。
疲れたちあきはその桜の下でしゃがりこむ。荷物がずり落ち、一気に肩が軽くなった。
この学校に入学して早2ヶ月。ピンクだった花はすっかり緑の葉へ衣替えした。
息が落ち着いたちあきは、その桜ではなく校舎の一番上、屋上に目を向けた。
高さと逆光のせいで、よく見えない。
が、誰かいるのは分かる。こちらを見ている。
いつもの影だ、と心の中で呟いたちあきは、その影に向かって大きく手を振った。
それに気づいた影は、手に持っていた何かを投げる。
否。
飛ばす。
落ちてくる。降ってくる。飛んでくる。風に煽られながらも。
ちあきへと、一直線に。
真っ白な、紙ヒコーキ、が。
すぐそばに落ちた紙ヒコーキを即座に拾う。相変わらず綺麗な折り目より先に目がいくのは、羽に書かれた言葉。
『お疲れ様。いつも頑張ってるね。たまには休んでもいいと思うよ』
何のことだ、と見た人全員が首を傾げるだろう。
でもちあきは違う。その慰労の言葉に胸がジーンとしているくらいだ。
それは今朝、ちあきが屋上の壁に書いた落書きへの返答だった。
『どうしていつも失敗しちゃうのかな。私のバカ…』
入学した日から、ちあきは屋上の真っ白な壁にいたずら心で落書きをしている。
そして放課後になると、その落書きへの返事が書かれた紙ヒコーキが屋上から、桜の下にいるちあきへ投げ飛ばされる。
初めは驚いたし疑いもしたが、だんだんこの繋がりが楽しくなってしまって今も尚続けている。
一日にお互い一言ずつ。そんな進度の遅い会話でも、十分楽しい。
紙ヒコーキさんの言葉は、真っ直ぐで優しい。いつもちあきを励ましてくれている。
今までに何度も励ましてもらった。元気づけてもらったし、時には叱ってくれもした。でも最後はやっぱり優しくされた。いつの間にか、大切な繋がりになっていた。
いつも影しか見せてくれない相手のことは気になるが、一度知ることを躊躇ってしまってからそのままだ。勝手に「紙ヒコーキさん」と呼んで、慣れ親しんでいる。
この言葉は誰のものなんだろう。この紙ヒコーキは誰に折られたんだろう。
紙ヒコーキの送り主を、ついつい想像してしまう。
ちあきは紙ヒコーキを見つめた。
(君は、誰に飛ばされてきたの?)
そんな問いに意味がないことは百も承知だ。
高すぎる屋上を見つめ、顔も知らない紙ヒコーキさんを思いあぐねる。
実際、紙ヒコーキさんを突き止めるのなんて簡単だ。屋上で待っていればいいだけだし、直接聞いたっていいのだ。『あなたは誰ですか?』と。
でもそうできない。
怖いのだ。
相手を知ったことで、この不思議な繋がりが途切れてしまうのではないかと。
そう思うと、いくら明るいちあきでも黙ってしまう。
何もできない自分に嫌気が指しながら、ちあきは紙ヒコーキを大事にカバンにしまった。
*
『模試の結果が……追試と補講……』
そう落書きした日の昼休み。教室内は朝は降っていなかった雨に、なんとなく空気がどんよりしていた。
「ちあー、いるー?」
友達とお弁当を食べていたちあきは、突然聞き慣れた声が聞こえて手を止めた。
目を向け、声の主と目が合うと手を振られる。
「ちな兄!どうしたの?」
勢いよく立ち上がりながら、自分の1つ年上の兄、ちなつに問いかける。
廊下へ行くまでにクラスメイトの荷物につまずき転びそうになったのを、近くにいたちなつが受け止めてくれた。
「本当ちあは落ち着きないな。少しおとなしいほうがモテるぞ?」
ふざける兄の腹部をぺちぺち、と叩き続けながら、ちあきは頬を膨らます。本当は頭を叩きたかったが、生憎ちなつは背が高い。
ごめんごめん、と軽く謝られ、然程怒ってもないちあきはすぐに許してやった。
「それで、どうしたの?」
「あぁ、えーっと、これ」
ちなつは無造作にポケットに手を突っ込んだ。
くしゃ、という音ともに取り出したのは、
見慣れた真っ白な紙ヒコーキ。
……、え?
パッ、と即座に紙ヒコーキを受け取りながら、ちあきは状況について行けないまま紙ヒコーキを見つめる。
どうして?ちな兄が?これを?何で?まだ昼休みだし、え?何で?
色々な疑問が生まれる中、紙ヒコーキがいつもと同じ折り方ということだけ理解する。
でもいつも書いてある文字がない。真っ白だ。
そう思っていると、ちなつが心を読んだように
「中に書いてあるってさ。俺に見られたくないらしい」
と、教えてくれる。
言われた通りに紙ヒコーキを開くと、いつもの字で『ちゃんと勉強しないとね』と書いてあった。
驚きと、戸惑いと、不安と、少しの恐怖。そんなものに苛まれて、さすがのちあきでも笑顔を浮かべられないでいる。
「な、んで……?」
口から零れた言葉は、ちあきの心の声。
「さぁ、どうしてでしょう?」
面白そうに笑うちなつに、苛々と動揺を隠せない。
あのやり取りに、第三者が介入してくるなんて、思っていなかった。
……胸がチクリと痛む。
「まぁ、急な雨で飛ばせないから渡してくれって言われたんだけどな。中見んなってうるさかったんだぜ?」
ちなつのその言葉に、ちあきの思考が静止した。
でも鼓動は早く変な汗が出た。息はしてるのに何故か苦しい。
混乱する頭の中で、再度ちなつの言葉を繰り返す。
つまり。
「……ちな兄、紙ヒコーキさんのこと知ってるの?」
ちあきが知りたくても知れなかった相手。それを、ちなつは知っているということだろうか。
呼び名に戸惑いながらも、兄はすぐに理解して答える。
「あぁ」
机に頭をぶつけたような、そんな衝撃だった。
小さく肯定したちなつの表情は、とても嘘をついているようには見えない。
そして何よりちあきは自分に驚いた。
紙ヒコーキさんの存在を実感している自分に、驚いたのだ。
- Re: 「紙ヒコーキさん」 ( No.11 )
- 日時: 2016/02/11 18:04
- 名前: 玻璃 (ID: t5qrQfWq)
心のどこかで、紙ヒコーキさんのことを遠くに、非現実的に考えてしまっていたらしい。文字で話したことしかないのだから、仕方のないことかもしれない。
でもいるんだ。本当に。この校舎のどこかに。
いつも想像の中でしか会えなかった、いつも空に消えてしまうようにいなくなってしまう紙ヒコーキさんが。
こんなに、近くに。
いるんだ。
(……誰?)
「っ……」
思ったことをそのまま聞こうとして口を開けたが、声が出なかった。
寸前のところで、ちあきは無意識に自分に問いかけた。
……聞いてしまって、いいの?
その質問に、自信を持って答えることができなかった。
ちあきにとって、紙ヒコーキさんを知れる最高のチャンスだ。
だけど、今この場で、本人がいないところで、屋上でも桜の下でもない場所で、しかも第三者の口から、聞いてしまっていいのだろうか。
それでは、今までの2人だけで繋がりを、否定してしまっているような気がして。
紙ヒコーキさんはちなつに中を見るなと言った。紙ヒコーキに書かれた言葉はちあきだけに向けられていた。
でもちあきは、想像するだけで満足して、その曖昧な存在にちゃんと向き合えていなかった。
そんなのだめだ。
ちあきもきちんと向き合うべきだ。
現実に生きる、紙ヒコーキさんに。
今まで、向き合えていなかったぶんも。
「聞かないのか?」
「うん、聞かない」
意外だな、というちなつの呟きに少し苛つきつつ、ちあきは深呼吸で気持ちを落ち着かせる。
はやる気持ちを抑えて、紙ヒコーキさんのことを考える
たくさん励ましてくれた。笑わせてくれた。元気付けてくれた。優しくしてくれた。応援してくれた。楽しませてくれた。
いつの間にか、大切になっていた。
まずはお礼を言おう。今までの分全部。その後は、できれば、もっともっと、仲良くなりたい。
そのために、まずは。
「ねぇ、ちな兄」
「ん?」
「その人は、私に気付いて欲しいって、思ってくれてるかな?」
ちあきの質問に、一瞬呆気に取られたけど、ちなつはすぐに笑いながら答えた。
「そう思ってなかったら、自分で渡しに来たと思うけど?」
意地悪な答え方に苦笑しつつ、ちあきはちなつにありがとう、と言った。
*
『俺もグリンピース嫌い』
『そんなに気に病む必要はないよ。お友達なんでしょ?すぐ仲直りできるって』
『社会の先生は寝ないほうがいいよ。チョーク飛んでくる』
『風邪って聞いたけど、大丈夫?』
ちあきは屋上の自分の落書きの前で紙飛行機に書かれた内容を思い出していた。
見やすい字で丁寧に書かれていたメッセージ。そう思うと、自分の字はどんなに読みづらかっただろうと少し笑えた。
昨日の雨とは正反対で、今日は綺麗な青空だ。
校庭から生徒たちの元気な声が聞こえてくる。その声は遠くに感じられ、この場だけが時間が止まったかのように思えた。
それほど、緊張していた。
慌てているようで、どこか落ち着いている自分がいた。嬉しいけど切ない、そんな何とも言いがたい気分だった。
音が、何も聞こえなかった。風だけが、ちあきの髪を撫でているだけだった。
このまま時が止まってしまうのではないかと本気で思った。
そして、屋上の扉が開く。
歩く音がして、だんだんこちらに近づいてきていることが聞き取れる。
心臓が早く動いているかさえ、分からなくなった。
ぴた、と足音が止まった。
それを合図に、ちあきは目を開いて足音がしていた方向へ目を向ける。
停止する世界の中で、ちあきは声を出した。
「ごめんなさい、今から下に行くんです」
手に白い紙を持つ彼に、話しかけた。
かなり驚いた様子の彼は、すぐに俯いて、でもすぐに顔を上げて困ったように、でも嬉しそうに笑っていた。
そんな紙ヒコーキさんに笑いかけながら、ちあきは荷物を持って走り抜ける。
『あなたに会えて、嬉しいです。名前、教えてくれませんか?』
走った。いつものように。
紙ヒコーキを受け取るために、いつもこうやって走っていた。
自分より大きい荷物にふらつくのも、髪がぼさぼさになるのもお構いなしで、全力で。ただ一心不乱に桜を目指した。
いつもより息は切れたし、眩暈までするほどだったが、ちあきは休むことなく屋上を見上げる。
誰かの影があった。いつもと同じ。
そしてちあきは手を振った。
それを見た彼は桜の木の下にちあきに向かって、
紙ヒコーキを
飛ばす。
ちあきに向かって一直線に。
何の迷いも躊躇いもなく。
飛んでくる。
初めてちあきは飛んでくる紙ヒコーキを、その小さな体で受け止めた。
いつもより落ち着いて、ちあきはその羽の文字を読む。
『凪、碓井凪。ちょっと待ってて』
碓井、凪、さん。
ちあきはその名前を頭の中で何度もリピートした。
想像じゃない。本当に存在する、紙ヒコーキさんの名前。
ふと見上げれば、屋上に先ほどの影はなかった。
あぁ、また、いなくなってしまった……
と思ったけれど。
「君は?」
息を切らせたさっき屋上にいた彼が、目の前にいて。
「君の名前も教えてよ」
文字越しではない会話。
初めて聞く声。
触れた手の温度。
見つめ合う目線。
それら全てが、暖かくて。
つい笑ってしまう。
「橘、ちあきです」
知ってるくせに、と嫌味を言おうかと悩んだけれど、それは今度にしようと思う。
話したいことがたくさんある。
「お話、しませんか」
「俺もそう思ってた」
嬉しそうに笑う彼と、
さて、何から話そうかな……迷うちあきは、紙ヒコーキを大切そうにカバンにしまった。
*
どんなに頑張っても、届かないものがある。
でも欲しい。
そのときは
自分から動くしかないのだ。
−−−−−−−−−
終わりです。
もし長すぎる場合は申しつけください。
下手なのに出しゃばってごめんなさい
よろしくお願い致します。
- Re: 第二回*小説大会!!【開催中】 ( No.12 )
- 日時: 2016/02/11 15:18
- 名前: リィナ ◆/73ORiYgDY (ID: w6TIyM.w)
玻璃さん、ご参加ありがとうございます!
前編、後編を作るのは構いませんよ!
それに、短編に下手も上手もありません!(あるかもしれませんが……)
本当に、ご作品を投稿していただき、ありがとうございますッ!
今日から一週間、作品のご投票を受け付けます。
【ネクロフィリアの少年少女 稲波零都-藍沢奏音】
【月色の手紙】
【紙ヒコーキさん】
………のどれかにご投票ください!
よろしくお願いしますッ!
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