二次なりきり掲示板

Re: 『 龍桜戦記 』〈 長文以上中文未満 〉 ( No.65 )
日時: 2016/05/01 09:47
名前: 林銭 (ID: eGpZq2Kf)
参照: http:// 名前と現在地の記載を忘れていた…


>>57

〈 鬼ノ宮 来都 / 国境→鬼ノ国へ 〉


「危害…か。俺が直接何か仕掛けた訳ではないのに、ねえ、彗理。」

 東雲の言葉を受けて尚もとぼけて見せ、まるで心外だとでも言いたげにそう返してからクスリと笑い「まぁ……心当たりが無い訳では、ないのだけれど。」と、狂気を帯びた小さな声を地面へ落とした。

「忘れてしまったのかと思ったよ、東雲。……君は俺の唯一の友だったのに、俺のことを…忘れてしまっていたのかと。」

 まさか、と明らかに動揺した様子の東雲を見上げて嬉しそうに赤い瞳を輝かせる来都は、純粋に友人としての数年振りの会話を楽しんでいるようだった。しかしその奥に在る曇り顔を視界の隅に捉え、そちらへと視線を移す。
 冷静な表情で此方の様子を窺ってはいるものの、なにか考えるような素振りを見せる撫子に困ったように微笑みかける。撫子と彼女の父である龍ノ国の皇帝、その二人の間で交わされたやり取りを来都が知るはずはない。しかし、互いの立場上そんな話が出てもおかしくはないということは分かっていた。そんな相手を今まで全く意識せずにいた訳ではなく、彼女がどんな人間か、何に笑顔を見せ何に対して怒りを顕にするのかと、来都も彼女に対して気に掛けていた部分はあった。

「貴女のそんな顔を見たのは初めてだ。」

 実際に言葉を交わしたのは数回、しかしその中で来都は出来るだけ多くの情報を得ようと心掛けて撫子と接していた。だからこそ彼女の微々たる表情の変化に気付くことが出来たのだろうが、来都としては普通に思ったことを口にしただけだった。
 そして明確に驚きを口にした東雲と再び目を合わせると、来都は後方の彗理に笑い掛けながら何を話そうかと思案し始める。

「俺は、そうだなぁ…鬼退治をしただけだよ。」

 そうだろう?と問い掛けるように首を傾げ、素直に疑念をぶつけてきた丹へと目を向けて彼が刀を納めたことを確認すると、今までの出来事を振り返り少し考えながらも語り始めた。

「あの龍鬼大戦は実話だったのさ。鬼神が遺したこの神器を手にした者達が鬼ノ国を築き、我が国の皇族は城の地下に眠る鬼神の言葉に従い国を繁栄させてきた。鬼神は民の生気を吸い上げて力を蓄え、復活寸前となっていた。その影響で古の魔物が再びこの地に出現して……その事実を隠そうと考えた父が国境を閉鎖したんだよ。」

 こんな話を突然聞かされても誰も信じる訳がない。国境の閉鎖や魔物の出現、そして鬼神の力を取り込み変貌を遂げた鬼ノ国の皇族である二人の姿。この話を裏付ける証拠が幾つも揃うこんな状況でさえなかったのなら、皆来都の話を笑い飛ばしたのかもしれない。しかし既にその影響は今来都が対峙している三人の国にまで及んでいる。
 来都は神器である刀を抜き、その刀身に纏う妖気を撫でるように優しく触れると再びその刀を鞘に納める。その刀を見る瞳は何処か優しげで、絶対的信頼を寄せる者へ向ける慈愛の笑みを浮かべていた。それはかつて東雲に対して向けていたものと変わらず、しかし今ではもう彼にこんな顔で語り掛けることは無いのだが。

「俺が全てを知った時には、もう取り返しの付かない状況になってしまっていた。…だから、俺は俺なりに考えて鬼ノ国の第一皇子としての責任を果たす為に、全てを終わらせた上で新たな世界を築き上げることを決めたんだ。」

 自分の話に入るとまるで他人事のように淡々と語り、しかし自分の成すべきこと…その歪んだ思想を口にすれば途端に嬉々とした表情を見せ、あまりにも無垢なその笑みの奥には尽きることの無い邪心が渦巻いている。

「俺が思い悩んでいる間、君は何をして過ごしていたんだい?東雲。…大切な存在もこの世界も、全てがある日突然消え去ってしまうかもしれない。そんな恐怖を一人抱えて絶望に苛まれる日々を過ごしたことは?」

 楽しそうに笑いながら東雲の顔を覗きこむように顔を傾けてそう言い切ると、壊れ物に触れるように優しく東雲の方へと手を伸ばす。しかし触れる前に動きを止めたその手は行き場を無くし、来都は苦笑しながら自分の髪に触れて東雲に背を向けた。

「……俺は君を責めている訳ではないよ。君と俺は最初から違う世界を生きていたんだ。だから、友人としての君に別れを告げようと思っただけさ。」

 なんだか一雨来そうだね、と呟き空を仰ぐと、再び妹に向けて手を差し出す。
 妖気の渦巻く自分の国へと帰り行く来都は、自分の中で過去と決別しながらも最後にひとつ、心からの思いを口にした。

「まだ『俺』であるうちに、君達と再び会うことが出来て……嬉しかったよ。」



… … …

これにて来都は離脱とさせていただきます。皇族キャラの皆様方、お相手ありがとうございました!お二人は不在のようなので、東雲さんと撫子さんも離脱文で終わりにしていただければ後は自由に絡み文を投下していただいて構いませんので。お待たせしてしまいましてすみませんでした。