二次なりきり掲示板

Re: 『 龍桜戦記 』〈 長文以上中文未満 〉 ( No.71 )
日時: 2016/05/04 21:18
名前: 珠季 (ID: zflF3NFd)
参照: http://珠季でございやす



<鬼ノ宮襲/城内自室>


 例えば意図的に耳を澄まそうとしなくても、棚の上に置かれた砂時計のさらさらとした小さな音を聞き取ることができる。それほどまでに襲の“鳥籠”は静寂を極めていた。健常な神経の持ち主ならば、此処では長く生活することができないであろうほど、息が詰まりそうな空間だ。外界とこの場所を繋ぐ場所と言えば部屋の内側にたった一対の襖があるだけ。此処に太陽の恩恵がもたらされたことなど、一度としてない。だからこそ襲はこの場所を何処よりも住みよい世界だと信じ、一日の大半をこの部屋で過ごすことをあたり前としている。現代人の言葉を借りて彼を表すのであれば“引き籠り”が妥当だろう。自分を愛さず他人を愛さず、外の世界を愛せない。最近ではずっと部屋に籠り切りになっているわけにもいかなくなっているが、それでも襲は隙あらば、ずっと独りでここにいる。
 此処はまるで、襲のために造られた“鳥籠”——あるいは独房だった。

 曖昧模糊な思考を頭の中に抱えながら、襲はぐしゃりと崩れ落ちたように床に寝転がり、物思いにふけっていた。兄様と姉様が自分に向けてくれた羽毛の様に柔らかい笑顔のことを、昨日見た小鳥の死体のことを、悶えるほどに愛しいと思う女のことを、今、鬼ノ国の民が魔物に襲われ、もう何人も死んでいっていることを、その、元凶のことを、幼き日を幸せに過ごすことのできたことへの恩人のことを、一つ一つの物事は最初はそれぞれが大きな塊の様である。しかしそれが徐々に徐々に毛細血管の様に細かく考察されてゆく、それもどんどんどんどん悪い方向に。それはいつの間にか彼が背負っていた呪いが所以。
 死んだ魚の眼の様にどんよりとして虚ろな目をして、非力な唇をぽかんとして、ありとあらゆることを朦朧と考えながら、襲はぼんやりと自身の首から下げた首飾りの宝玉を細い指さきで弄ぶ。だらりと寝返りを打てばそれに応じて細い鎖が首元に垂れて締め付けられそうだった。
嗚呼、その時になれば別段構わないのに、そうでない時、自分の使命を重苦しく感じて仕方がない。

「……兄様」

 今も心からあなたに忠誠を誓えずにいる。そんな弟だと知った時、貴方はどうするのだろうか。



>>ALL様




( 初投下でございます。執筆不足につき拙い個所も御座いますが、徐々に直していきたく存じます。城内自室とか烏滸がましい程場所指定してしまったので特定の方々しか絡めないとも思われますが;; よろしければ、どなたかお相手願いたく思います )