二次なりきり掲示板
- Re: 『 龍桜戦記 』〈 長文以上中文未満 〉 ( No.73 )
- 日時: 2016/05/04 23:57
- 名前: 六巴 (ID: laYt1Tl.)
>>58
【 雨笠 稚菜 / 国境 】
目の前を美しい銀色が通り過ぎて行くのが見える。そう認識すると同時に司会は紫色に染まった。その鮮やかな紫は放射線状に広がり、危うく体に掛かりそうになったのを咄嗟に避ける。
何が起こったのかと目を横に向けると、そこには長い茶髪がひらりと舞っていた。その髪には見覚えがあり、同時に心臓が高鳴りぎくりと冷汗が出る。
(烈旋隊の先輩……。見られてた……な、きっと。ああ、まずいかな。あんな失態……。)
魔物のトドメを刺すか刺すまいか迷っていたなど、呆れられるに違いない。烈旋隊として自覚が足りない証拠だった。今更になって気付くだなんてどうかしてる。そう、本当にどうかしてる。あの魔物はまだ生きていた。もしかすると命を落とす事だって、可能性としては皆無じゃなかったかもしれないのに。憎しみから判断を誤った。恥ずべきことだ。
ちらっと横目で女性の様子を伺うも、顔は魔物の死体に向けられており感情を読み取る事は出来なかった。黒の着物も風に揺れるだけでぴくりとも動かない。困ったな、と視線を戻す。
(怒ってるだろうか。呆れてるだろうか。もしかしたら除隊なんてことも……いや、こんな事でそれは厳し過ぎやしないだろうか……でも、ここは戦場。自分の中の甘いも厳しいも通用しない世界であって、ありえないなんてことはない、かも……。)
ぐるぐると目まぐるしく働く思考。しかしそんな事を考えたって仕方なかった。取り敢えず謝ろうと女性に体を向け、ぐんっと頭を下げる。
「すみませんでした!」
ここはお礼を言うべきだっただろうか。
頭を下げて数秒後にその考えが過ったが、ここで頭を上げるのも気が引ける。とにかく、女性の声が耳に届くまでこのまま頭は下げておこうと密かに思った。
——
>>65
【 龍ノ宮 東雲 / 国境→龍ノ国へ 】
愕然とした。
経緯はともあれ目の前の状況は理解出来ている。ただ納得は出来やしない。何故、と問い詰めたかった。しかし、その問いかけをしたところで自分の望む答えが返ってこないことも理解出来ていた。
嬉々として、今までと何ら変わりがない態度の来都に、ただ曖昧な顔を向けるしかなかった。顰めっ面とも泣きっ面ともつかない、傍から見れば滑稽であろう顔を浮かべる。
「何を……。忘れるなんて、そんな事あるはず無いだろう。」
歌うような来都の言葉に衝撃を覚えた。
友人を忘れるだなんてそんな酷い事はない。もちろん、言葉の通り一度たりとも忘れた事などなかった。友人として、第一皇子同士として、かけがえのない大切な存在であった。来都が居てくれたからこそ今まで挫けずに過ごすことが出来たと言っても過言ではない。もし居なかったら、と想像する事でさえ苦であるほど東雲にとって来都の存在は大きかった。
それなのに、忘れられたと感じさせてしまったのかと、深く後悔する。認めたくないがために、大切な友を傷付けてしまったのだと。
本気で言っているかどうかは定かではないが、来都の口からその言葉が出たこと自体がショックであった。
そんな東雲の様子を知ってか知らずか、来都は後ろに控えている撫子へと視線を移した。無意識に詰まっていた息を吐く。
再度赤い瞳と目が合い、今度は強く見据える。
龍鬼大戦、鬼神。
まるでお伽噺のような信じられない言葉の数々が飛び出るが、ただ信じられないだけできっと真実であるのだろう。今この瞬間ですらあまりにも奇異なのだから。わざわざここでそんな偽りを話す必要性は見当たらなかった。
不意に来都が神器である刀を鞘から引き抜く。刀の妖気は肌で感じられるほど禍々しく、刃を撫でるただそれだけの動作にゾッと寒気を覚えた。その口元に浮かぶ笑みに複雑な思いを抱く。
ああ、本当に自分は何をしていたのだろう。繰り返される日々を当たり前のように過ごし、何に疑問を持つわけでもなくただただ時間を見送っていた。友が苦しんでいるとも知らずに。
自分を覗き込むその顔は実に愉快そうであり、目を瞑りたくなるような痛々しさを感じる。伸ばされた手は東雲に届くことなく来都の白い髪に収まった。
「……そうか。俺は君を助けられなかったな。」
絞り出したその一言には悲しさ、不甲斐なさ、後悔等様々な、本当に多くの感情が込められていた。今この状況を諦めるといった意味も込められていたが、それはあくまでこの場だけだ。
きっとまだ、声は届く。いつか必ず、何の隔たりもなく再び友と呼べるように。
自分でも気付かぬ内に、東雲は口元に笑みを浮かべ小さく呟く。
「ああ。ありがとう、言葉を交わす機会をくれて。」
今度会う時は、もっと違う話をしよう。だからそれまでは君達に切っ先を向けてしまう事を許して欲しい。
そう誓い、背を向ける来都と彗理を見送った。
「さあ、俺達も帰ろう。」
後ろで控えていてくれた弟妹と最前線を守り切ってくれた烈旋隊に微笑みかけながら、その場から踵を返した。
————
同時投稿で申し訳ありません……!;;
以上で東雲も離脱とさせて頂きます。お相手をして下さった皆々様、ありがとうございました!
>>71
初めまして珠季様。文を読ませて頂きましたがとても素敵で御座いました……! 未熟者ですがどうぞこれからよろしくお願いします。
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