二次なりきり掲示板

Re: 『 龍桜戦記 』〈 長文以上中文未満 〉 ( No.82 )
日時: 2016/06/16 17:00
名前: ワルハル (ID: v/CxltbU)

>>73
<龍ノ国・神羅香織side>


(は?)

 普段冷静沈着な彼女にしては珍しく、パニックになっていた。
 ありとあらゆる可能性とその分岐点、その因果全てを頭の中で計算し、最善の行動をとる、そんな彼女が。

 余談だが、だからこそ、自分を極限まで高める必要があった。頭の中で最善がはじき出されていたとしても、自分にそれだけの実力がなければ、それはただの<理想>であり<不可能>——要するに、邪魔でしかないものなのだ。

 さて、今の香織の混乱の原因は、すなわち今目の前にいるこの少女なのだが。

(謝った?なぜ?)

 理解できない。今まで理解できない人間は多くいた。だが、ここまで予想がつかないのも珍しい。

 動きやすさを優先したのだろうか、肩のあたりで切りそろえられた灰髪。さらさらと風に靡くそれは、なかなかに美しい。
 自分の着物よりも大胆なデザインの紺色の着物から除く足はすらりとしており、とても荒事を生業とする者のものとは思えなかった。

(だからか?)

 荒事は得意ではないのにここにいて、何かヘマをしたから謝っていると、そういうことか?

 ふと慣れた重みが無いことに気づき、やはり慌てて、魔物に突き刺さったままの愛刀を抜いた。
 ありえない。戦場において武器を捨てるなど、自殺行為。にも、関わらず——

(私の実力が足りないから)

 男たちに侮られない程には成長したつもりだが、陰で彼らが私のことを何と言っているのか……良く思われていないことは、自覚している。
 人間とは、絶対に勝てない相手には抵抗する気も失せるものなのだ。例えそれが陰口であったとしても、完敗だったと、相手が認めたならば。認めさせられるだけの実力が、力があれば。

 ——私がもっと、強ければ。

「君は何も悪くない」

 私よりおそらく年下であろうその少女から目を逸らしながら、自嘲気味に言う。

「悪いのは全て私だ。君は——君たちは何も、悪くない」

 全ての悪夢は、私のせい。

 そう思い込む方が、楽だったのかもしれない。他人を責めるのは、間違っている。だから、責めるのは自分自身だけ。なら、全部私のせいの方が——

 結局逃げているだけなのかと、そう思わないこともないが、他に何も思いつかない。それに、勝手に罪を被ってくれる、歩く十字架に文句を言う輩などいないだろう。

「私の監督不行き届き、及び、不適切な教育指導」

 最後ははっきりと、後ろに気配を感じる少女に向かって。
 戦場に慣れていないのだろう。なら、少しでも安心させてやろう——そんな思いで、普段は滅多に浮かべない笑みを向けた。最も、それが上手くいっていたかどうかなど、確認のしようもないのだが。

「危うく一つの命を失うかもしれなかったこの状況で、まだ君の命の花は散っていない。まずは、そのことを神に感謝しようではないか」

 この辺りはある程度片付いた。私は次の場所へ行くとしよう。

「健闘を祈る。生きて帰ってこい」

 最後の一言を、なぜ言ったのかはわからない。ただ——自分と同じ空気を感じたから。

 必死であるが故に輝いていて。
 だが、どこか危なっかしい。

 あの目は。
 あの光は。
 彼女の見た感じの年齢よりも深く——そう、深かった。

 そんな彼女の姿が、かつての——いや、今の自分の姿にさえ重なる気がする。私は周りから、あんな風に見られているのだろうか。

(だが、そんなことはどうでも良い)

 私はただ、今を精一杯生きるだけだ。

 一度目を閉じ、集中力を高める。そして再び、歩き出した。


【時間がなかったせいで過去ログが読めていません……時間があるときに読みますw】