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那緒「そ、そうしてください」

頬から離れた手を少し名残惜しく思いながら、向けられた真剣な眼差しをじっと見つめ返す。色々と起こりすぎてまだよく頭の整理が追いついていないが、彼は私を食べに来たという認識で間違いないのだろう。

それならそれでいいと、何処か他人事のようにそう思う。生まれてずっと、他人のために使ってきた命のようなものだ。彼のためになるのなら、それもそれで私の人生の締めくくりとしては良いのかもしれない。

「へっ？そ、そんなつもりじゃなかったんですけど...。あくまでも、「夜人」さんだからいいかなって、思ってるんですし...。姿が同時だったらいいってわけじゃないですよ？」

再び触れた手に少し驚けば、恐る恐る擦り寄るように顔を動かす。
別に彼の姿だったら誰でもいいわけじゃなくて、彼だからいいのだとそう伝える私の顔は多分赤い。なんだかまるで告白のようじゃないかと、頭の済でそう考えながらも視線は逸らさなかった。