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>>89

【羽根晴】

「そう、要らないのね。此方の勘違いだったって訳ね。御免なさい気が利かなくて。」

相手の瞳から嫌悪されていることは分かっていた。唯、其に負けじと劣らず此方も口を開く。同情が要らぬというならする必要はない。そもそも口に出しては言ったが相手に同情するつもりは最初からなかった。だか、少し思いが揺れたのも事実、こんなことあってはならないのにそう思い唇を噛み締めた。

「……っ。そっか、そんなことが有ったのね。その時の辛さは私には分からない。どんなに辛く悲しいのかは。今貴女が言ったことに突っ込むつもりはないし、これ以上聞いたりもしない」

「だけど、此が嘘だったら笑えるね」なんて言って最後は不適な笑みを洩らした。先程からコロコロと表情が変わる彼女に少しは不信感を覚えたが其は多分気のせいであろう。仮にそうだったとしても捕まえる上ではその事実は関係ない。所詮どうでも良いのだ、他人のことなんて。利己的な考え方ではあるが其を人に押し付けているわけではないので別に問題にはならないだろう。

「此方こそ御免なさい。証拠もなく勝手に疑ったりして。団員が疑われて怒ったりするのも当然よね。私が軽率だったわ。恐いのはサーカス団の人だって同じなのにね」

相手につられて此方も笑みを洩らす。正し偽りの笑顔であるが。「頑張って下さい」そう相手の返答に返事を返し時計に視線を落とした

「嗚呼、もうこんな時間。一旦帰らなきゃ」

「其では、此れで」そう呟き相手にペコリとお辞儀をし向きを変えた。もう相手をみることはなく淡々と道を進んでいったのだった。

「(団長にこの事伝えたほうがいいかな)」
そう思いながら。


【御免なさい、一旦切らせて頂きますね。また晴が絡むときがあると思いますのでそとのときはこんな奴ですが宜しくお願いします。】