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>>117

【帝狩筝鍵】

　塀のコンクリートに袴の裾が引っかかるのを気にせずに足をぱたぱたと遊ばせていると、不意に後ろから声がかかる。振り返った先にいたのは、フードを目深にかぶった小柄な人影。こんな真夜中に出歩く人間など限られたものだろうが、そんなことを言い始めると一番怪しいのは塀の上で煙管をふかせている異国の服の不審な男なので何も言うまい。自爆するのは目に見えている。
　その人影だが、前述のとおりフードを目深にかぶっているため小柄であるということ以外は対してわからない。声色からして女性であることは分かるが、正直言って自分の事は棚に上げるがそれなりに怪しい。
「んん、先生一人でも強いから大丈夫。お嬢ちゃんこそ、夜中に女の子が一人は危ないんじゃねーの？」
　飄々とした笑顔で、煙管を塀でかんかん鳴らせて遊ぶ。お兄さんと呼んでくれたところ申し訳ないが、ちょっとお兄さんとは言い切れない年数を生きているので自分のことをお兄さんというのはやめておいた。