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【帝狩筝鍵】

　あーだのうーだのと唸っている筝鍵の狐の形の耳が、ふと聞きなれた声を捕まえる。顔を上げた先にいたのは紛れもなく彼がこの場所で待っていた彼女であり、その手の中には重そうな荷物が抱えられていた。
　その荷物は見た目通りに重いらしく、遠くながらも手を貸せとの要求が聞こえる。手を貸すのはいいのだがなとよいせと体を起こすと、付け加えるように筝鍵の願い望んだ文言が聞こえて無意識に尻尾たちが上を向いた。
「薬……マジか。でかしたアルファ！」
　カカッと高下駄を鳴らせて彼女のもとまで駆け寄り、尻尾をうねらせて彼女の荷物をすべて奪い取る。ついでに機嫌を良くしたらしく、尻尾の一つに彼女を座らせてかははと笑った。
「助かった！　最悪団長でも使おうかとも思ったんだが、あの野郎どっかで油売ってるみてえだしな。危うく耳と尻尾畳んで自分で買い物に出されるところだったぜ」
　最悪の場合上司を顎で使い、自分が外出する可能性を最終手段として放置するあたりは外出嫌いな筝鍵らしい。彼は耳をせわしなく動かし、機嫌よく笑った。