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>>26


【ルカ=リリィ】


「アーロン、ね。」

何度か覚えるように名前を呟けば、抱き抱えていたぬいぐるみの手を持って「よろしく」と手を振る。もしかしたら兄の友人かもしれないから下手なことは出来ない、あの人の友好関係を狭めてしまうのは申し訳なさすぎるのだ。

「キミに指図される覚えはないけど。暇つぶしなら、ここじゃなくてもできるでしょ？ルカといるのが嫌なら、そっちが消えれば良い。」

クスクスと笑いながら、「間違ったこと言ってる？」と付け加えて首を傾げる。ルカといるのが嫌ならそっちがここからいなくなればいい、自分が目の前の男の指示に従うなんて有り得なかった。指図してもいいのは主のみ、そして主以外の言う事を聞くつもりもない。

少しだけ離れたところに座れば、月を見上げて息を吐く。やはり綺麗だと、そう思う心は自分の中にもまだ残っていたらしい。
吸血鬼にとっては夜が朝だ、だから月が太陽のようなものであった。