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【>>24、エスサイド】

「……なるほど。つまりあなたは……。」

美沙は美沙なりに充実した生活を送っているみたい。だけど、裏の心は隠しきれないのね。彼女のタイプのひとつは『純粋なる親への反抗』……なんだけど、春華とは少し違うような気がする。

春華は父親に反抗して自由を手に入れた。だけど母親のことはしっかり受け入れている。でも美沙は多分、家庭が嫌だったのだろう。途中で話を止めるのもそのことを回避する行動だ。『あなたの悩み、聞かせて』と単刀直入に言ってもいいが、傷付けたくはないので覚悟が決まってから話すことにしよう。

「ふふっ……。そうだ、あなたに特別な本を貸してあげる。レイ・ブラッドベリの『華氏451度』、重松清の『タオル』、山川方夫の『夏の葬列』、どれがいい？あなたの意志が大事になってくるから。」
私は笑ってそう言った。

【春華サイド】

「棗ちゃん、こんにちは♪手伝ってくれるの？ありがとう！うーん、じゃあ、１階の外装をピンクに塗ってくれるかな？」

棗ちゃんが外に出てきたので、手伝いを依頼する。塗装はゆっくりでいいし、3階まで今日はやるつもりだ。1時間半で終わらせることができるけど、さらに短縮できるからね。

まだ食料は少しあるし、肉や野菜の買い物は明日しても問題なさそう。……美沙ちゃんは、エスちゃんとどんなことを話しているんだろう。
私も1度記憶を失っているからわかるけど、記憶を取り戻して過去を乗り越えることはとても大変だからね……。必要のない記憶は忘れちゃおうってこと。