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「雨、ですの？」

少し歩くスピードを遅めれば、グウェンからの質問に首をかしげた。雨は好きではない。けれど嫌いというわけでもない。普通、と答えればよかったのだが、違うことも考えていたディアーナは思わず余計なことを付け加えてしまった。

「六年前のあの日も雨が降っていましたから…あまり好きではありませんわ」

思い出すように目を細め、そう口にしたディアーナは、どの雨を言っているのかまでは言わなかった。あの日、悪魔に身を委ねた日。その日は大雨が降っていて、右手から生まれる黒い炎を消すように一日中降り続いていた。

思い出したからかなんなのか、痛むはずのない右手を軽く振って、切り替えるようにふふっと笑う。今のことは忘れてくださいまし、そう言ってグウェンを見るディアーナの瞳には、様々な感情が渦めいては消えていった。目の前の彼女が盲目で良かった。失礼なことを思いながらも、こんな自分を見られていないことにディアーナは安堵していた。