二次なりきり掲示板

Re: 【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.105 )
日時: 2015/06/02 20:26
名前: 鯨 (ID: hNhLtowv)


>>85

愚痴を漏らした矢先に、カロン、カランと涼やかにベルが鳴って来客を知らせた。ベルの音を耳聡く聞き取ったクレメルヒェンはピクリと垂れた耳を動かして顔をドアの方へ向けた。それに釣られてフィロメーナもドアを向く。
人の動く気配がして、本棚の間から大柄な男性が姿を表した。黒髪に鋭い黒目でどこか狼のような雰囲気を持つ人物だ。大柄で威圧感があるのは表情が乏しいせいかもしれない。

「あの…すみません」

もっと威圧的な話し方をするのかと思えば、男性は意外にも丁寧な声かけをしてきた。声を聞いて腰を上げたクレメルヒェンがふんふんと鼻を鳴らしながら、興味津々に男の近くに寄る。犬が嫌いな人のためにもきちんと躾けてあるので自ら擦り寄るような事はしないが、触って!と言いたげに目を輝かせて男を見上げる。フィロメーナはそんな愛犬の姿に毒気を抜かれて、へらりと笑う。

「…空文堂へようこそ。お客さんは初めましての方じゃね」

フィロメーナは酒瓶をカウンターに置くと左手で目の前に広がる棚を指し示した。そこは本好きには宝の山とも言える場所だ。

「ここには色んな本が揃ってますけん、きっとお気に召すのが見つかる思います」

するりとカウンターから抜け出してフィロメーナは左手で胸を叩く。頬は酒気を帯びて赤らみ、右腕はぽっかりと空いているけれど彼女こそが『空文堂』の店主なのだ。しかし酔っ払いのフィロメーナは自分で自分の胸を叩いた勢いで、よろけて棚にぶつかった。棚には綺麗に本が陳列されているため落ちてくる事はないが、ゴホゴホと咳き込む姿はなんとも頼り甲斐がなさそうであった。