二次なりきり掲示板

【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.134 )
日時: 2015/06/06 21:22
名前: JESSICA (ID: qJIEpq4P)

 幸せだった、そうやって笑ったフィロメーナの表情はあまりにも悲しそうで愛おしい何かを思っているようなものだった。テオドールは何もできず——しかし、先程の様な戸惑いもなく、彼女の様子を眺めていた。

 クレメルヒェンがいること、この空文堂があること、彼女が今此処で生きていること、自分が此処にいること。全てが幸せだと彼女は言ってくれた。そう言って笑ってくれただけでテオドールは満足だった。そしてフィロメーナの呟いた言葉に小さく首をかしげる。

「……そんな言い伝えがあるんですね」

 はじめて聞いたそれを不思議そうにかみしめたテオドールだったが、ふと彼女の腕が一本ないことを思い出した。……前は彼女はその両手を打ち鳴らして、自らの幸せを感じられていたのかもしれない。

 フィロメーナはまるで泣いてしまうのを我慢しているようだった。恐らくこの場に自分がいるせいなのだろうと、テオドールはそう思っていたが、此処でそっと彼女を置いて出ていく気もなかった。

「……では、俺とあなたは、手を叩かないといけませんね——」

 不意にテオドールはそう呟いて、ゆっくりと両手を合わせ、二回、打ち鳴らし、あどけない笑みを口元に浮かべた。

「……俺と、あなたの分です」