二次なりきり掲示板

【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.163 )
日時: 2015/06/09 18:51
名前: JESSICA (ID: qJIEpq4P)

 テオ、とそう呼ばれ、予想以上にこそばゆい感覚に襲われたテオドールは自分で呼ばせておきながら少し恥ずかしそうに苦笑した。また、フィーロと彼女を呼んでいても、何処か落ち着かない様子ではあったが、心から嬉しそうでもあった。

「……俺も、凄くうれしい」

 あなたと友達になれて嬉しい。かつて言われたこともないような台詞だった。それに、目の前の彼女はそれを心から言ってくれた。その柔らかな紫色の瞳にテオドールは嘘はないと確信していた。だからこそ、彼女の前で素直に笑っていられたのだ。友だちにもなれた。

 しかし、だからと言ってこの本をただでもらう訳にはいかなった。此処はあくまでも書店であり、自分は客としてここに来たのだ。いくら断られてもお金だけは払おう。そう思っていた矢先、やはりフィロメーナはお代はいらないといった。慌てて首を振り、今自分が持っている所持金すべて——といってもこの本をなんとか買うことができるだろうと思える少ないものだったが——を渡そうとしたが、腕を後ろに回され、それも困難となってしまう。

 そしてもう一度ここにきて、とそう言われ、思わず戸惑ってしまう。街をぶらぶらするような自分であるが、一応騎士団に所属し、まだ反乱軍との戦いは終わっていない今、自分がいつあの戦場で息絶えるか分からないのだ。安易に約束をしてしまっては、逆に彼女を失望させてしまうかもしれない。

「……でも、俺は」

 いついなくなってしまってもおかしくないような存在で、此処にまた来ることができるかどうか、ここに来ることができたとしても、彼女が期待するような答えを持っているかどうか、分からないのだと、そう言おうとしたが、すがるような目に見つめられ、駄目かと聞かれたら、ただ苦笑して頷くしかなかった。

「……分かった、また来るよ」

 喉元まで出かかっていた弱気な言葉を飲み込んで、苦笑しながらも笑ってそう頷いて見せた。自分が忘れることはないだろう、彼女のことを。自分の数少ない友人のことを。テオドールはそう呟き、丁寧にそっと、銀糸で刺繍されたその本の題名を指でなぞった。

「……大切にする」