二次なりきり掲示板

【中文 / 再建】Seize the day【募集中】 ( No.238 )
日時: 2015/08/05 10:50
名前: JESSICA (ID: 3L0NyJ0C)

 可愛い、とそんな単語が聞こえた気がした。もはや普段通りに物事を理解する事が出来なくなっている頭でもその言葉は聞こえており、普段の彼を思い出しながら、まぁ普通どおりだなとさえ一瞬思ってしまった。間をおいてふと思い出したのは、今の言葉は恐らく自分に掛けられたものだろうという言うことだった。

「……っ何を言ってるんですか」

 自分でも信じられないような強い声が口から洩れたが、言い終わらないうちに自分の体はロイに軽々と抱きあげられてしまっていた。抱っこにしろおんぶにしろ、あの選択肢はどちらとも最悪の状態を作り出すものだったが、この状態ではまともに自分の顔が見られるという点を失念してしまっていた。熱と羞恥が相まってどんどん熱くなる顔を何とか腕で隠すが、いっそこのまま意識を失ってしまいたいとも心の底で思っていた。
 もちろんこの夜中でも、数は少ないだろうが活動している研究者はいるだろう。その一人でもここを通れば自分は終わりである。誰も通らないように、通ったとしてもこれが自分であると誰も悟らないようにと必死で息をころしていたが、誰かがこの光景を見ていればすぐに自分であると分かる自信も、同じように思えていた。

 しかし、抱きあげられて気分が幾分かよくなったのは明白だった。こんなことに慣れていないため、普段と同じほどの高さ、もしかしたらそれ以上かもしれない周りの景色に思わずロイの服を握りしめる。顔を見られたくない一心で体を丸め、目をきつく閉じていたため、自分の服に染み付いた煙草のにおいとロイの酒のにおいが頭の中を充満していた。そんな中で発せられたロイの言葉をキリルが聞けるはずもなく、何か聞こえたぐらいの勢いと、多分自分に何かを聞いているとの推測だけで、小さく頷いていた。

 自分の部屋につき、ベッドに下ろされて初めて深々と息を吐いた。此処までよく来れたな、と羞恥に悶えそうになりながらも、何とか上半身を起こしてありがとうございます、と呟きながらコップを受け取り、薬を何とか飲み込んだ。水が異様においしく感じて最後まで飲み干すと、小さく息を吐いて改めてロイにお礼を述べ、頭を下げた。

「……もう大丈夫だと思うので、ロイさんも早く休んで下さい」

 薬を飲んだからとはいえすぐに熱は下がらないだろうが、これ以上相手をつき合わせる事も出来なかった。最大限の声と作り笑いで相手を安心させるようにそう言った。