二次なりきり掲示板
- Re: 【中文/再建】Seize the day【募集中】 ( No.280 )
- 日時: 2015/10/17 16:10
- 名前: 寝退 ◆HyWhrnhVWU (ID: GeNBR54o)
- 参照: 素敵すぎるヒースくんに対して何かと雑で申し訳ry
>>270
勘違いかもしれない、とそう前置きを述べてから自分の名を呼んだその人の声は、何度も夢に見たあの日、あの時に出会ったその人の声と確かに一致していた。
自分の中に煩く響く鼓動の音を落ち着かせようとゆっくり息を吐き出しながら目の前の相手の存在を確かめるようにそっとその頬に手を伸ばす。しかし触れる前に咄嗟にその手を引っ込めたアンネリーゼは、酷く弱り切った様子のヒースコートを見てかつて見た光景を思い出していた。
アンネリーゼが街の研究所に住み込みで勉強を始めてまだ間も無い頃、研究所に一人の少年が訪ねて来た事があった。彼は藁にも縋る思いで研究所まで辿り着いたのだろう。呼吸をするのもやっと、といった状態で酷く疲弊し切っており、扉を開くと同時にずるずると地面に崩れ落ちた。その彼は自分が脱走した能力者を追跡する為に作られた存在である事、定期的に脱走者の血液に触れなければ命を失うのだという事を研究員達に伝え、勿論当時の自分達ではその少年に何を与えることも出来ず、間も無く彼は命を引き取った。
先程、城からの知らせが届くと同時に自分達の『協力者』となってくれた脱走者の青年の血液が少量ながら研究サンプルとして届けられていた事を思い出したアンネリーゼは、言葉を発する事も忘れて立ち上がりその場に背を向ける。しかし彼に何か伝えておかなければ、とそうヒースコートを振り返ったのは、何か希望を与えておかないと自分がサンプルを探している間に彼が息絶えてしまうとでも思ったからだろうか。事実、そう思わせる程に目の前の彼は衰弱していた。
「あ、あの……もしかしたら、ですけど!私、貴方を助けられるかも……しれません」
慌てて言葉を選びながらもヒースコートにそう伝えたアンネリーゼはその顔に情けない笑みを浮かべ、そしてまたハッとした様子で体の向きを変えると、地面に散らばった書類と共に置き去りにされていた小さな鞄の中身を漁り始める。ぽいぽいと地面に放り出されるその中には、一年程前に彼女がヒースコートから受け取ったハンカチや、また、彼女が普段から愛用している眼鏡もあり、思わず雑に投げ捨ててしまったそれが割れる音がした瞬間アンネリーゼは一瞬だけ動きを止めたが、首を振って再び鞄に手を突っ込むと漸く目的の物を見つけ出し慌てて立ち上がった。
「ええと……!どうすれば良いんでしょう!ああ、もう!」
小瓶の蓋を開けたものの、彼等はこの血液をどう摂取するのか、その方法を曖昧にしか認識していないアンネリーゼが判断を誤ってしまえば、助けられるかもしれないこの命を目の前で失う事になってしまうかもしれない。そう、あの時のように。
困り果てたアンネリーゼは再びヒースコートの直ぐ隣にしゃがみ込むと、困り果てた顔であらゆる可能性を思案し、答えを問うように彼の顔を覗き込んだ。
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