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【時計台の上にて/霜乃】

「そんな場所があるのなら行ってみたいですね。どちらも私には欠けてるものですし」

そういう彼女の声を聞きながら、霜乃は目を細めて背を向ける。頭は回る方だと自負しており、こういう時は本当に自分の脳内スピードに感謝をしていた。何をいえばどう返してくるか、どうすればうまいことこちらが有利にことを進めれるか。そんなことを考えながら月を見上げれば、続く萌の言葉に小さく頷いた。

「霜乃は、これでもある組織みたいなとこの副リーダーしてる、の。だから...君の寝床と知識、与えてあげられるよ」

ほんの少し抑揚をつければ、だからどうかな？という風に振り向いて首をかしげる。月明かりに照らされた霜乃の姿は、ローブを羽織っているからかどこか作り物じみていて。すぐに消えてしまいそうな儚さがあった。