二次なりきり掲示板

Re: 『 トロイメライの隠し場所 』 -お知らせ3- ( No.198 )
日時: 2015/08/11 23:24
名前: 緋織 ◆S2QRgg5fs2 (ID: rBo/LDwv)
参照: http://いつか戦闘シーン夢見る


>>188

【寂れた公園/真谷 立花】

二つの性質を持つことは素晴らしいと言った色人に立花は一瞬あっけにとられたような顔をするがすぐにいつもの微笑に戻り色人を見つめていた。
可愛くて格好いいと褒められ、そんな楽観的な考え方があったのかと内心苦笑する。吸血鬼になってこの体を手に入れてからは獲物を仕留めるための餌としか考えていなかった。人間が、あまりにも幼い容姿に釣られるものだから、さらにそんなように思うことはなくなっていたのだ。

「色人も素敵よ。強さと優しさを持ってる」

その言葉の意味はまさに言葉の通りだった。
世間一般的に彼が浮いてしまっていることに立花は当たり前だが気付いている。それでも立花が気にしないのは、自分とどこか似ている存在だったからかもしれない。直接的に見ても似ている点はないのだが、二人はその周りと少しだけ違う成長を送ってしまい心に孤独を持っていたのかもしれない。
愛し愛される人生を。と、愛がなければ見えないものもある、と言いながら月を見上げた色人に立花はそうねと力なさげに相槌をうつ。
孤独だけが似ていた色人と自分がそれでもこうも違っているのは色人には大切な人がいるからだ。真谷家でもよく目立つ彼を見かけるたびにその顔は幸せそうに友人に笑顔を向けていたのだ。人を信じることと孤独でいること、別にその二つに違いはないと思っていた立花だったがその笑顔を見るたびに疑問を抱くようになっていた。
思い返せば立花は愛されたことがなかったかもしれない。前世はともかく、もちろん当主や家族のことは大好きだし愛している。でも直接、当主様や家族に認められたという覚えはない。もしかしたら自分が気付いていないだけかもしれない。しかしここまで考えると立花は頭が痛くなって顔を歪ませた。

「……私にはいないわ」

人間の頃にただ一人いた気がするが、その人は自分を吸血鬼という仲間にしたらすぐにどこかに消えてしまった。ノーカウントだろう。
いつも愛す側だったかもしれない。
ブランコを降りて目の前に立つ色人を見上げながらそういうと「ほんとは色人がちょっと羨ましい」と立花はにっこりと笑った。月はくすんで見えるし、空気は冷たい。吹く風はどこか痛みだけを残していく。それでも平気に生きるような女性に成長することができた。成長してしまった。それでもよかった。

急にふわりとした暖かさに包まれ立花は息を詰まらせたように息を止めると色人の言葉が耳に入ってくる。優しく頭に入ってくるその言葉に立花はじわりと涙をにじませるが、ここで泣いたら本当にただの子どもになってしまう、と思い目を閉じると自分を落ち着かせるように深呼吸をした。
暖かい、と感じてはじめて自分がとても冷たかったことに気づく。

「色人ったら、話が上手いからなんだか私弱気になっちゃいそうだわ」

色人抱きしめられながら余裕そうに明るい口調でいう立花。それでも立花の小さな手は色人のベストをぎゅっと掴んでいた。

「うん…。私真谷家に所属できて後悔したことなんて一度もないわ」

本当よ、なんて笑う。いい弟を持った気分になったが、これじゃあ自分が妹みたいじゃないか、とすぐに思い複雑な気持ちになる。
でも、いろんな気持ちが溢れ出しそうな立花は今日だけは…、と自分の心と葛藤しながら立花は控えめに一度だけぐすりと鼻をすすった。