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>>258
【何処かの暗い道/ヴィラー・ド・ノア】

向こう側から歩いてきたのは、一人の男性だった。メガネを掛けていて、表情は読み取りづらい。
しかもどうやら、クロのようだ。相手の片方のポケット、そこから嫌な感じがする。
おそらく、銀かにんにく辺りだろう。……つまり、相手はその手の人間らしい。

歩みを止め、相手の様子を観察する。
おそらくポケットの中のナイフか釘か、それが銀でできているのだろう。それ以外には嫌な感じはしない。つまり、相手はほぼ丸腰か。
だが、こう油断させておいてこちらが吸血鬼なのを確定してから、隠し持った武器か、あるいは今は隠れている仲間で殺しに来るかもしれない。
なにより自分の瞳を見て驚いたり何かしらの反応を起こさない時点で、一般人ではないだろう。……と、今はそのくらいしか分からなかった。

どうしたものか、と思っていたが、このまま睨み(あるいは見)あっているわけにもいかないので、とりあえず挨拶をすることにした。

「あー、こんばんは。」
そう言って、軽く会釈し、また歩くのを再開した。
もちろん、そのまま通り過ぎる。内心での警戒は怠らないまま。