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>>254

【夜中のある道中/松里千草】


　元来千草は幽霊だとか吸血鬼だとか、得体の知れない怪物の話が苦手だったし、嫌いだった。しかし、千草が取り乱す理由はそこにあるわけではなかった。

　新しいクラスが始ればだんだん女の子は大抵何人ずつかのグループを作って行動をするようになる。趣味や話が合う者同士、部活が一緒なもの同士、それらでつるむのは楽しいし気が楽だから。千草も右に倣った。——ただ、千草の場合には真に話の合う友人が出来なかったため、妥協で属したグループだけど。それでも独りぼっちで孤独に一年間を過ごすよりは遥にましだから、彼女たちに嫌われて仲間外れにならない様に千草は必死につとめていた。
　同じグループの友人は皆あまり好きではないけれど、『サオリ』だけは隙とは言わずとも、嫌いではなかった。一人で居た千草に声を掛けてくれたのはサオリだったから。
　一か月か二カ月ほど前のことだ。彼女が姿を消したのは。

　サオリのことを考えるたびに、千草には嫌な予感が付きまとう。微かながらに噂されている人ならざる者の存在がちらつく。

　もしかしてサオリは、『吸血鬼』とやらに誘拐されたんじゃないのか。

『……僕はそうは思わないよ。だって現にいそうじゃないか』

　クローリクは静かに乾いた声でそう言った。それをきっかけに拳を震わせて懸命に吸血鬼の存在を否定する自分に気付いてハッと我に返る。それと同時にかぁっと頬が内側から熱くなるのを感じた。自分は何を言っているんだろう。反応しすぎだよ、馬鹿。

「あ……えっと……」

　慄いて一歩後退する。クローリクの顔付は、目つきが何処か冷たいものへと変わっていることに違った。先程の厚かましいほどの親しげな感じが何処かへ急に旅立ってしまっていて、千草は思わずたじろいでどもった。しかしそれもつかの間、千草が困惑しているうちにクローリクは元に戻った。
　コロコロと表情や態度を変えるクローリクは、まさしくつかみどころがない。まあ、偶然にも出会った初対面の人間なのだから、すぐにその人間性を掴もうなんてのは無理な話ではある。

ともかく、サオリのことを思い出すのが嫌で、考えないようにしていた吸血鬼の話をされるのは嫌だった。その存在を否定して、それが正しいのだと思うことが出来なければ、自分を保っていられる自信が無い。其れだと言うのにクローリクまだ、吸血鬼について語るから、耐えられなくて千草はまた悲痛の入り混じった声をはしたなく荒げる。

「だからもうやめて！　お願いだから、吸血鬼の話しないでってば！　……そういうののこと、考えたくないのよ」

気が立ったせいで敬語を放す余裕も無くなった千草はそう言い切ると、己の疲れをあからさまに示すように「はあっ……」と大きくため息をついた。
いつの間にかクローリクは最初に出会ったような印象の少し頼り無さ気な道化にもどって、何かを千草に見せた。

十字架にニンニク、それから杭だ。

「……なんでそんなもん、持ってるんですか」

コロコロと変貌するクローリクについていけないでいる千草は、少し疲れた様にそう聞いた。

>>263

『Dietrichさんの萌ツボを押さえられたようで2828している主です。新キャラ有難うございます!!
　質問有難うございます。回答させていただきますｂ

　まず、名字ですがこの蟒蛇座は統一しない方向性で行こうと思っていますので変更しなくても問題ナシですｂ
　それから、隈取ですがお客様の御前では素顔を晒さないと言う様なイメージでありまして、その二つで言えば『仕事をする時だけ』という認識でお願いいたします！
　いえいえ、こちらが説明不足なのに原因がありますのでとんでもないです；　わざわざご質問有難うございましたｂｂ』