二次なりきり掲示板
- Re: 【吸血鬼】『 トロイメライの隠し場所 』【研究部】 ( No.297 )
- 日時: 2015/09/08 20:42
- 名前: Dietrich (ID: 3YwmDpNV)
【夜中のとある道中/ラヴレンチ=ヴォスコボエワ】
「あはは、驚いた? でもそういうおもちゃって子供は大好物なんだ。ほら、光りものが好きなカラスと同じ。カラスって子供並みの頭脳を持ってるって言うじゃないか」
話が飛躍する。等々にカラスの事を思い出して口にし、そう言えば話題には何も関係がない事を思い出してごめんごめん、と軽い調子で謝ったが本人に謝罪をした後のふさわしい表情はない。すがすがしいまでに明るい笑みのラヴレンチは、少女が今きっと、おもちゃの十字架に向かって何と言っているのか、ひとりでに妄想していたのだ。
自分はもともと日本で生まれたわけではないし、幼少期はあまり裕福とは言えない家庭で育ったため、あまりおもちゃと言うもので遊んだ記憶はない。十字架は神聖なものだった。軽く扱ってはならなかった。お祈りをしに日曜日には自分の十字架を握り締めて近くの教会に行ったものだ。周りにはたくさんの同年代の子供がいて、誰もかれも自分よりも立派な服を着せてもらっていた。幸せそうに笑っていた。
懐かしいと思うが、もうあそこに帰ろうとも思えない。既に母国の言葉は忘れてしまっている。それに自分がいたあの場所ももうないだろう。少しだけ辛いと思う。所謂故郷がないのだから。でもそれもそのうちどうでもよくなるだろう。今まさにどうでもよくなっている最中でもある。
少女のごめん、の声に思わず口を閉ざす。此処まで自分が取り乱したのも久しぶりだったため、本当に恥ずかしいと感じていた。何とか表情に出ることはなかったようだが、どうやら彼女には感づかれてしまったらしい。照れ笑いを浮かべながら、ラヴレンチもごめん、とそう返した。
「……いや、ね? 自己紹介なんてやったこともないから戸惑っちゃって。あ、でも僕が正義のヒーローだってことは変わらないから安心してね? 決して西洋の怪物でも、極東の妖怪でも、夜中にうろつく変態でもないから!」
明るい調子を取り戻したラヴレンチは、少女が自ら話し始めてくれた、その言葉に耳を傾けていた。やはり、彼女には他の人間は体験していないだろう、この世界に本当に存在しているのか果たして分からない、そんな怪物の影を見たのだ。
それを阻止するのが自分たちの仕事のはずである。息が微かに苦しくなった。
「……そっか。それは辛かったね……その子が家出であることを僕も願うよ。いつか帰ってきてくれた方が心も晴れるしね」
普通に事件に巻き込まれた可能性もあるが、この少女が危惧するように、もしかすると吸血鬼が絡んでいる可能性ものあるのだろうか。悪い予感だけは人は的中させる能力を持つ、虫の知らせと言うやつだ。彼女のように、ピンポイントの不安は当たる可能性も高い。
「……それでも、最後まで希望は持つべきだよ。君はその友達を待っててあげて、もし、帰ってきたら一緒に笑ってあげたらいい。そうしたらきっと君の心も晴れる。もし、帰ってこなくても、君が君の友達のような人を出さないように出来ることがあるかもしれない。あまり下を向いちゃいけないよ、でもだからと言って無理に前を向くこともないからね」
前を見ることができなかった自分が言っても、この言葉は何とも空虚な響きを持ってしまう。少し哀しげにラヴレンチは笑った。
「ほらほら、元気出して! 大丈夫、今の君には僕がついてるんだから、ね?」
急に元気づいたラヴレンチはにこりと笑みを見せて道を歩き始める。今は暗い話より明るい話をしよう。彼女を元気づけたい。良い感情だ、自分も明るくなれるからましだ。苦しい話はまたあとで。
それでも彼女の話は嬉しかった。正直な感想として。
「僕に話してくれてありがとう。きっと君は幸せになれるよ。なんたって寂しがり屋のクローリクの足には魔よけの作用もあるんだ。こんな僕を信じてくれた君にはその力を授けよう」
おどけた様子で笑うラヴレンチはいつものように、仲間の前で見せるような笑みを浮かべていた。
総合掲示板
小説投稿掲示板
イラスト投稿掲示板
過去ログ倉庫
その他掲示板
スポンサード リンク