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>>298
【どこかの暗い道/ヴィラー・ド・ノア】
「……お上手ですね。」
流暢なロシア語を聞き、素直に感嘆する。まさか見透かされていたとは。
だけどこちらも見抜いていたし、お会いこさまかな。

「じゃあ、こっちからも一言……いや、二言かな？」
そう言いながら、闇に溶け込む。既に相手の間合いからは離れ。

「私は『観測者』です。吸血鬼である前に。だから、極力、人は襲わないようにしてますよ。」
声も段々と小さくなる。相手に聞こえているかどうか、少し心配だ。そして、これは相手を動揺させるための、ちょっとしたプレゼント。

「それから……襲わなくて正解でしたよ、『赤月』さん。それでは、今度こそ……『до свидания』。」
そっくりそのまま、相手の言葉を返すように、ロシア語を話す。流暢ではないが、充分に聞き取れるレベルなものを。