二次なりきり掲示板

【じわじわと】『 トロイメライの隠し場所 』【イベントの】 ( No.314 )
日時: 2015/09/13 19:03
名前: Dietrich (ID: 3YwmDpNV)

【夜中のとある道中/ラヴレンチ=ヴォスコボエワ】

「あ、今すごく適当じゃなかった?」

 彼女の反応に、ラヴレンチは嬉しそうに振り返った。口では不満を言いながらも、その表情は至極嬉しそうだった。彼女はようやく、自分のこのお気楽な話しに付き合ってくれるような気分になったのだ。これはいいことである。

「スーパーヒーローって憧れないかい? 小さな女の子がプリンセスにあこがれることと同じ事さ。海外の超人的な力を持ってマントで空を飛ぶあの姿とか、身近で言えば、自分の命さえ投げ出しながら火の中に他人を助けに行く勇者とか。それがお仕事なんだから仕方がないけど、僕はそんな気にはなれないな」

 実際、自分はヒーローに興味はなかった。神には少しだけ興味があった、ヒーローよりも大分現実味がある気がする。でも神様は結局自分の中にはいなかった。いたとしても、彼はもうこのちっぽけな兎の事を忘れているのだろう。

 彼女が諦めも含められてはいるが笑っていた。それだけで嬉しかった、ラヴレンチも自然に笑っていた。これがもしかすると恋と言う奴だろうか。よく言うじゃないか、相手が笑っていたら自分も笑いたくなる。相手を笑わせたくなる。

「もしかしたら僕は君に惚れちゃったのかもね」

 絶対に違うんだろうと確信しながらそんなことを言って見せる。惚れると言っても、色々な意味がある。恋愛的な感情である時も、神様として認めると言うことにも。

 彼女が自分の神様になっていたらどうなっていたのだろう。きっと——きっと自分は、彼女を守るために何でもしていただろう。何となくそう思う、今でもそうなのだから。自分は神様を助けるためには何でもやるつもりだ。勿論、あのスーパーヒーローたちのように、自分の命を投げ出すようなことさえも。

「なんて、気持ち悪いね」

 あははと能天気に笑いながら首をかしげて見せる。

 彼女は何と葛藤しているのだろう。友だちの居所を心配しているのだろうか、それともこの世界にいるかどうか? どちらにせよ最悪の心配事だろう。大切な人を失うなんて、とても辛いだろうから。

「……待ってあげていて」

 君は強いね。待てるんだから。

 強い人じゃないと待てないんだよ。

 ラヴレンチ自身がそうだった気がする。自分は待てなかった、自分は待つべきだった。神様を。愛を。でも待てなかった、彼女のように、今の彼女のように悩み苦しんだ挙句、待つこともできなかった自分は逃げたのだ。他の場所に。

「……でも、苦しかったら逃げても良いんじゃないかなぁ」

 弱気な声だった。自分でも驚くほど弱々しい声にラヴレンチは苦笑で誤魔化した。もう何も言わない、彼女に何も言わないで、彼女の心を動かさない。彼女のありがとうの言葉、口許にかすかに浮かべられた笑みに少しだけ、息が止まる。

 勇気が出る。初めて聞いた言葉だ、ラヴレンチはしばらくその意味を考えなければいけなかった。自分に対し、そんな言葉が投げかけられるなんて思ってもみなかった。ありがとう、そんな間抜けた言葉しか出てこない。

「こんな僕が役に立てて良かった」

 君は本当にかわいい子だね。そんなことを言いたかったがそれこそ相手は気分のいいものではないだろうし。言葉を飲み込む。その代わりにふわりと笑って見せた。相手に自分が好意的であることを示したかった。

 軽やかに自分の前に進み出た彼女の言葉に納得し、頷いた。彼女の表情を見て安心する。もうすでに自分の役目は終わったのだ。

「それじゃあ僕もこのあたりで。僕が変態じゃないことを証明しないとね」

 笑みを浮かべてそういうと、踵を返して歩きだす。家は流石に見られたくないだろうし、後を追っているとも思われたくないだろうから。しかしふと思い出したこともあり、もう一度彼女へと振り返った。

「僕の故郷はロシアなんだ、もう何年も帰ってないし、言葉も忘れてしまったけどね。クローリクは僕の故郷で兎って意味、今度僕に会った時にはまたこうやってお話しよう、そうしないと孤独でしんでしまうから。映画のパンフレットはきみにあげるよ、またどこかで君と僕をつなげてくれるかも知れないからね」

 唯一心残りなのは自分が彼女の事を何も知らないこと。しかしだから今度彼女に会った時の楽しみがある。彼女に一つだけ、自分の事をも紹介しておけば、彼女は自分を忘れないでいてくれるかもしれない。恐らく、優しい彼女は玩具の十字架も捨てないはずだから。

 ラヴレンチは再び彼女の家と反対方向の道へと歩み出し、闇夜に消えて行った。



 流れで解散させてしましましたが大丈夫だったでしょうか?