二次なりきり掲示板

Re: 【じわじわと】『 トロイメライの隠し場所 』【イベントの】 ( No.343 )
日時: 2015/09/21 18:38
名前: 鯨 (ID: oXddV8rJ)



>>284

【どこかへ向かう道の途中/落花 裏葉】

失望、という言葉に裏葉の肩が小さく跳ねた。どろりとした冷たいものが胸の中に流れてきて、寒くもないのに裏葉はその背中を小さく震わせる。無理やり口角を釣り上げてぎこちない笑みを作る。

「失望、なんてしない…。しないよ」

失望だとか、がっかりしただとかそういう言葉が裏葉はとても苦手だ。他人からの冷たい評価は裏葉の心の柔らかい所に深く付き刺さって血を零す。そっと胸に添えた手には血なんてかけらもついていないけれど、どうしてかズキズキと痛むような気がした。それを振り払うように才蔵の話に耳を傾ける。
どうして人を褒めるのか。そんなもの理由は一つに決まっている。

「誰だって褒められると嬉しいものじゃないかなと思って。大人になるにつれて人に褒められる機会ってどんどん減るでしょう?だから、誰も褒めないなら私が褒めようって」

それに当たり前の事だが口に出す言葉も貶す言葉よりも褒める言葉の方が気分がいい。そうして意識して人を褒めようとしている裏葉からしてみれば、優しくて親しみやすい彼は褒めどころが多くてついつい随所で褒めてしまうのもしようがないことだ。

「でもおれは、好きな子が言って欲しいって言うなら言えるかも。……ってかさ、裏葉ちゃんは? もしかして言って欲しい相手っていたりするの?」

「おぉ、才蔵くん男前だねぇ」

月の話の返答は意外にも男らしい。好きな子が言ってほしいと言えばこの優しい人は甘い言葉を吐くことも厭わないのだという。何となく、彼はそういう言葉を口にするのを恥ずかしがりそうなイメージがあって裏葉は意外そうに目を見開いてしまう。そして続く質問にげほっと勢いよくむせる。

屈託ない笑顔には何の悪意もないけれど、裏葉にはその質問は鋭い凶器に思えた。二十歳を超えた女になんてドリーマーな事を聞くのだろう。もしこれで裏葉がYESなどと答えようものなら脳内お花畑女だと思われてしまう。

「う、うーん。昔はそういうお洒落な告白とかして欲しいと思ってたけど、今はもう年が年だしね…。夢見るころはすぎたかな、あはは。
あ、でも勿論言われて嫌な気はしないよ?」

言われたい相手と言われて裏葉は肩を落とす。そんな相手がいれば嬉しいものだけれど、あいにくと裏葉は愛を囁いて欲しい相手などいない。そんな相手がいれば通常の恋愛観念を持つ裏葉は相手に告白していると思う。

「そんな相手いないよー。でも周りもそろそろ結婚結婚うるさいしなぁ…嫌だなぁ…」

以前国のお偉方に輪廻の指導係を務める見返りとして大量のお見合いばなしを持って来られた時はだいぶ面倒な思いをさせられた。結婚なんてまだ先と思っていたのに自分ももう適齢期に入ったのだと思い知らされ、その日の夜は多少酒を煽ったりした。

大事な子なんだね、と反芻されて、自分の口にした言葉がかなり恥ずかしいことに気づいた裏葉の頬に血が登った。

「や、なんか恥ずかしいね。そんな深い意味じゃないから気にしないでね、ほんと」

暑くなる頬を冷まそうと顔の前でパタパタ手を振りながら裏葉は笑う。そして続いた才蔵の言葉に少しばかりの寂しさの色を覚えて、動かしていた手をとめると才蔵の瞳を覗き込んだ。

「…じゃあ才蔵くんも幼馴染になる?
私ね、百歳くらいまで長生きするつもりなの。百歳から見れば十歳も二十歳も幼く見えるでしょ、だから今から私と仲良くなっても十分幼馴染になれるよ!」