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>>358【赤月本部/ヴェノーレ=ファルファッラ】

（あんまり、怯えさせないでくれないかな...）

小幅のことなんてこれっぽっちも気にしていないヴェノは、ヒッというような声を出して去っていく同僚の後ろ姿を見てため息をつく。
自分が言うのもなんだが、後ろにいる男は高身長で目つきも悪い。そしていい性格をしているためにこうやって先ほどから怯えては逃げられていくのだ、自身もよくあることなどで注意することなんて出来ないけれど。
そしてそれを面白いと思っているのであろうこの男と若干似ているために、何かを言えばブーメランのように帰ってきそうで面倒くさかった。無駄な勝負はしない主義だ。

ヴェノの質問とは言えない口調の言葉に嘲笑混じりの返答を返した上脇、それに突っかかっていくほどヴェノも幼くはなかったが、続いて言われた言葉と表情にまた手を握りしめることとなる。

「ならテキトーに行かせてもらいますね。ていうか、別に怒ってませんケド？バカなこと言わないでクダサーイ」

ケラケラと笑うが声は冷たい。この男は何を考えているのだろうか、愛想がいいのか悪いのかわからないし、礼儀があるのかないのかもわからない。先ほど自分と似てると評した、それに間違いはないがこうも思ったのだ、「中途半端な性格」だと。自分にだけかもしれない、それはなんだか面白くない。

以前ちらりと見かけた時の上脇の表情は、今とは違って柔らかかったと思う。その時の記憶が美化されただけかもしれないし、単なる先入観だったのかもしれないけれど。それでもあの時、上脇に僅かながらの興味を惹かれたのは認めなければならない。自分と同じぐらいの身長、その立場、醸し出す雰囲気になんだか心を惹かれた。今とは違う意味で、だけど。

「で、上脇さんは僕を怒らせたいんですか？あんたがそれで暇が潰れるっていうなら、考えもいいですけどね」

【こちらこそ、よろしくお願いいたします。】