二次なりきり掲示板

【じわじわと】『 トロイメライの隠し場所 』【イベントの】 ( No.370 )
日時: 2015/09/26 20:08
名前: Dietrich (ID: xOYpbzCU)

【橘花小路/香坂 誉丸】

「嫌いではないか……。まぁ雲に隠れて霞む月を風流と詠むひとも昔はいらっしゃったが、私にはそのようなたしなみは合わないようだ」

 空を女性につられて仰ぎ見ると、そういい苦笑する。明るい方が自分はやはり好きだった、暗い夜道は不安だ。彼女はそうではないのだろうか、黒い髪を夜風に遊ばせている目の前の女性を眺める。この明かりの中で彼女の顔を詳しく観察することもできなかった。穏やかな声に微かな戸惑いを覚える。

「意外、と言えば失礼になるだろうが、上品な人だ、あなたは。あなた達の中にも様々な人格があると言うことは承知の上だったが」

 やはり普段からの生活の中で人間を食料にするため、性格はどんどん野蛮になっていくのだと思っていた。自分自身対峙した吸血鬼の中にはもちろん彼女のような穏やかなものもいたのかもしれない。己が身の危険を感じた瞬間に彼らは変わるのだろうか。人間も変わることには変わるのだから何も言えはしないのだが。

 目の前の、恐らく吸血鬼と思われる女性の仕草に香坂は驚いていた。確かにこちらに動揺を気取られることは命取りになるのだろうが、それでも彼女の行動は穏やかで品があった。もしかしたら自分は警戒されていないのかもしれない、彼女の見えない目は自分をどう見ているのだろうか。苦笑して頭を掻いた。

「いや、何もそこまでとは言っていないよ。確かに此処は人通りも少ないだろうから、あなた達にとっては良い食事場所だろう。しかし、人間がここを通らないと言う訳でもない」

 少し刺激的すぎるからね、と声色から反省しているらしい彼女を怯えさせないように言葉を抑える。そして彼女の質問に嗚呼、と苦笑した。

「私はただの人間だよ。ただあなた達のことについての知識が少しだけあるだけだ」