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Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【募集開始】 ( No.42 )
日時: 2017/10/25 23:58
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

【絡ませていただきます!】

>>41
【図書館→緑の草原/アズライト】

 長い時を生きていた。長い時間の中をたゆたっていた。
 たくさんの死を見た、たくさんの悲しみの味を知った。
 忘れられないというのは果たして、本当に良いことだろうか? 生きるのに疲れた彼は思う。
 しかし死ぬ勇気もなくて。今日も彼は、無気力に生きるだけなのか。
 通い慣れた図書館を出て、することもなしにあちこちを歩く。誰も話しかけてくる者などいない。彼の纏う氷の雰囲気が、人の近づきをためらわせていた。
 だが、それでいいと彼は思う。

「……関わったら、それだけ傷つく」

 だから無駄に他人と関係を作ろうとはしない。それが彼、アズライトの生き方だった。
 裏切られて傷つくならば、先に死なれて傷つくならば。そもそも人と関わらなければいいだけの話。そうすればきっと、傷つかずに済む。
 彼の長い経験は彼から人と関わるすべを奪った。人と関わることは危険であると、凍りついた思想を植えつけた。纏う孤独も悲しみも、結局は彼自身が望んで得たもの。彼自身が傷つかないために、他人を遠ざけて得たもの。そこには彼の意思がある。

「どうでもいいね、そんなこと」

 自分の思いを振り捨てるかのように彼は大きく首を振り、ただ何となく各地を歩く。片手には先ほど借りてきた本。何かの暇つぶしにでも読もうかと持ってきた。

 そうして気が付いたら、彼は明るい草原に来ていた。彼は明るさに思わず目を細めた。
 こんなに明るくて優しいところなんかに、普段の彼は出向かない。
 しかし偶然にせよ、何にせよ。

「……たまには、いいか」

 心に張った氷を溶かして。たまには穏やかな草原を散策するのもありかもしれない。
 彼は少し力を抜くと、広い広い草原を目的もなく歩きだした。

 しばらくして、彼は木で編まれた籠を持った大きな三つ編みの少女を見つけた。明るい色合いの長いワンピース、風に揺れるイヤリング。彼の優れた記憶力は、即座に彼女の名を頭の中にはじき出す。
 草原は広い。このまま無視するのも何なので、彼は彼にしては珍しく、自ら進んで声をかけようと考えた。
 何かを探すのに夢中な少女の名を、軽く呼ぶ。

「確かヴェールニルといったかな? 青の塔のアズライトだ。何か探しているようなら手伝っても構わないけれど?」

 気まぐれに起こした親切だ。この草原の穏やかな空気の成した業だ。
 優しい空気は、彼の心にも伝播して。
 彼は柔らかに微笑んだのだった。