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Re: 【中文推奨】かみさまのラルム【募集開始】 ( No.46 )
日時: 2017/10/28 10:29
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

>>45
【緑の草原にて/アズライト】

 小さな提案なのに彼女はとても大きな動作で喜んだ。
 狼が怖いんですと小さな声で言う彼女を見ると、アズライトは彼女が穢れなき魂を持っているのだなと思い知らされる。
 ヴェールニルの色、淡く優しい黄緑色した彼女の瞳には、どこまでも真っ直ぐで素直な心が宿っていた。
 長い歳月に捻じ曲げられたアズライトの淀んだ瞳とは大違いで、そこにはどこか尊さのようなものすらあった。
 アズライトが、とうの昔に失ってしまったものが。
 もうすぐ冬が来るんです、というその言葉も一途で、アズライトは思わず微笑んでしまう。
 空を見上げ、その言葉に答えた。

「……僕の心はずっと冬だったんだ。ああ、色々とあった。君は何年生きたんだ? 僕は15000年……。長いよ、ああ、あまりにも長い。そして僕は喜びも悲しみも、みんな忘れられないんだ。昔、様々な悲劇で僕の心は凍りついていた。けれど」

 冬が近づくというのに、季節はもうすぐで冬だというのに、なんて温かいのだろう。暖かい、のだろう。

 その温かさをくれたのはこの穏やかな草原だけではない。ひたむきな彼女もまたその一助となっていた。
 彼が他者を信じないのはいつか訪れる裏切りを恐れて臆病になっていてのこと。だが彼女のような少女さえ疑ってしまったら、一体だれを信じるというのだ。アズライトは、時に自分すら信じられなくなることもあるのに。
 だから気づかせてくれた彼女の助けに、少しでもなれればいいと思った。

「薪割りくらいなら手伝ってもいいが? 僕だって体力があるとは言えないがな、少しは助けになれるだろうさ」

 彼は内にこもる方を好む人間だから正直力がある方とは言えないけれど。彼女みたいな少女よりは力がある自分を自覚していたし、彼女の細腕ではどれだけ時間がかかるかもわからない。
 他者をこうやって心配したのは本当に何年振りだろうか。それは忘れたい記憶に直結するから、彼はあえて記憶をたどるのをやめて何かをこらえるように唇を噛んだ。

 春はお好きなのですか、という言葉。無垢で無邪気でどこまでも真っすぐな言葉に、そうだよと彼は答えた。

「春は嫌いじゃない。春には悲しみの記憶が存在しない。これまでは『自分には似合わぬものだ』として意図的に春を遠ざけていたが、本当は」

 春、彼は今は亡き一番の友人と出会い、秋、何かの手違いでその友人を殺した。
 結末は悲劇にしか行きつかないが、春のあの日、彼とその友人とは切れることなき絆を結んだのだ。

「本当は、好きだよ」

 春は美しき出会いの季節。一番好きな季節なのに、彼は秋と冬に閉じこもった。そうして臆病な自分を守った。
 季節は今、冬に向かっているけれど。冬を越えた先にはまた春がある。春が、来る。
 ヴェールニルはどうなのだろうと彼は思い、彼女にそっと問うてみた。

「そう言えば、君はどの季節が好きなんだ?」